俺の息子の息子が凶悪な件

把ナコ

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【閑話】ハロウィン・ナイト

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 女の子三人で決定した、ハロウィン割引をしているお店に連れ立って入ると、メニュー表を見て皆で顔を見合わせた。

 お店の前に置かれていた美味しそうな料理の写真と、仮装3割引という割引率の高さに入ったは良いが、そもそもの値段が高い。
 女の子達も予想以上の値段に青い顔をしていた。

「この後どうするんだ?」

 席に案内されて、皆が店選びに後悔し始めていた頃、珍しく大洲が口火を切った。
 こういう時、率先して言葉を発するイメージはなかったんたが。

「行きたいところがある奴は、──自由だけど、特に用がなければ、もう少しここでうろつくか、誰かの家で騒ぐか、かな?」

 無難なところで返事をしておく。
 大洲が帰る伏線を張りたかったのかもしれないと思って曖昧に返事をした。
 女の子達もなんとなくうなづいてくれた。

「オレ、9時には抜けるからさ。詫びにココ奢る」

「えっ、いや、大洲?」

「昨日バイト代入ったし、今日来てよかったしな」

 女の子達は顔を見合わせて、少し困惑気味だ。

「でも、悪いよ。ここ凄く、その、高いし」

「気にするな。礼だと思って気にせず頼んでくれ」

 女の子達はどうする? と顔を突き合わせて悩んでいたが、自分で払うにしても高額だったためか、甘えることにしたようだ。 
 実際ここの料理を自分で払ったら、財布が寒くなること必至だった。

「ありがとう」

「大洲くん、9時に帰っちゃうの? 早くない?」

「そうだよー。こんなに可愛い子達を置いて?」

「恋人が家で待ってるんだ。早く帰りたい」

 女の子達に大洲に恋人がいることは伝えてあったが、流石にここまではっきり伝えられると思っていなかったのか、ショックな表情を顔に貼り付けていた。

「そのカッコしてりゃ、男なんていくらでも寄ってくるだろ?」

 大洲、それは流石にかわいそうだぞ。

「お、男を誘うためにこのカッコしてるわけじゃ無いもん!」

 いや、それは嘘だろう?

「サツキ、そんな怒んなくても」

「だってっ」

「そうか? 充分男を惑わせるくらい3人とも可愛いと思うが」

 大洲…!!!??

 興奮気味に立ち上がっていたサツキとカナコも、膨れていた空気が一気に抜ける様に、顔を真っ赤にしておずおずと座って俯いてしまった。

「大洲くん、私たち、その、可愛いと思う?」

 小声で聞いたナミの言葉に、大洲がなんてことないことのように返す。

「思うよ?」

 随分とあっけらかんと言い放った大洲に、僕は少し苛立って脛を蹴っ飛ばす。
 笑顔までつけなくていいだろっ!

「いでっ、なんだよ」

「なんでもない」

「ふふっ、大洲くんと藤崎って仲良いね」

「「それはどうだろう?」」

 こんな悲しいハモりってあるか?

──

 運ばれて来た料理は随分と美味しいものだった。
 イタリアンレストランだが、肉バルでもある。メンバーは全員未成年だから酒は無理だが、遠慮して安いものしか頼まない僕達を見かねて、大洲が追加で頼んだ店一番人気のローストビーフは最高にうまかった。
 僕たちは美味い料理に感激しながら平らげていった。

──
 
「尊ちゃん?」

「あれ、アケミさん、こんなとこでどうしたんですか? ってか、すげぇ気合入ってますね」

 大洲に声をかけて来たアケミという女性は、迫力巨乳美女だったが、ゾンビメイクで至るところから血が出て、皮のビスチェの裾が避けて、そこから内臓が飛び出る特殊メイクをほどこしていた。
 こんなこと言っては何だが、臭ってきそうなほど、本物にしか見えない。
 ホットパンツからすらりと伸びた細い足にも痛々しい切り傷と盛り上がった縫い目のメイクがされている。

「肉屋の売り上げを邪魔しに来たのよ~」

 戯けてハラワタを見せつける彼女に、女の子たちは流石に目を逸らした。

 店の邪魔をしに来たのか、大洲の邪魔をしに来たのか、胸を押し当てながら抱きついたアケミさんに微動だにせず、大洲は苦笑いをしていた。

 顔が巨乳に半分埋もれているが、驚かないのか?

 次の一瞬、大洲自ら胸に顔を埋めると、直ぐに身体を離して聞いた。

「アケミさん、また彼氏変わったんですか?」

「まっ、ご挨拶ね。尊ちゃんのそういうとこ嫌いよ! でも可愛いから許しちゃう。んぅー!!」

 あっ!

 キスをしたせいで、口紅が大洲の頬にベッタリとついていた。

「アケミ! フロアには出るなって言ったろ! そのカッコはヤバすぎる」

「あらぁ、彼氏に見つかっちゃった! またねぇ。そっちのお兄さん、お店にいらしてね。ハロウィンまで仮装イベントしてるから!」

 胸の谷間から【Club  Venus】 と書かれた名刺を差し出し、投げキッスを飛ばすと、僕はあまりのことに思考停止してしまい、反射で受け取ってしまった。
 
 女の子達は、見てはいけないものを見てしまった顔で大洲をチラ見していた。

「知り合いなんだ。驚かせて悪かったな」

 一体どういう知り合いなんだ。

「い、いいけど」

 俯き加減で言葉を濁す女子達と同様、僕も何も言えなくなった。

 そのあとは、熱を失ってしまったかのように言葉が上滑りで、食事を終えた。
 美味かった料理も、さっきの女性の存在で全部飛んでしまったな。

 大洲の好意で女子達にデザートが用意されたおかげで、最後には少し雰囲気が柔和になった。

 会計をしようと大洲が店員を呼ぶと、店員から告げられた言葉に驚いていた。
 
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