27 / 32
番外編
柊の裏の顔
しおりを挟む「あれぇ? 君、部長の息子さんじゃないっすか?」
ママに久しぶりに顔を魅せようと思って店を訪れた時、カウンターで飲んでいた客に声をかけられた。
「なぁに? さとちゃん尊くんのお父さんのこと知ってるの?」
「同じ会社の部長さんっすよ。大洲部長。サユリちゃんと俺のキューピッド!」
「あら、そうだったの? 噂の柊さん?」
「ママ、この人は?」
「彼は、山際悟くん。Venusのサユリちゃんとお付き合いしてるの。でも今喧嘩中なんですって。さとちゃんは別かれる度にここでくだ巻いてるのよ」
「別れてねぇっすよ! ちょっと喧嘩しちゃっただけっす」
山際さんって、柊がよく飲みに誘ってくるって言ってた人の一人だよな?
何年か前、転勤して雑用させるやつがいなくなって苦労してるって言ってたな。
「Venus? 山際さん、しゅ……、父さんと行ってたのってClubVenusなんですか?」
「そっすよぉ」
ClubVenusは会員制の高級ホステスがいる店だが、特殊なお店で、ホステスは女装した男性で、ギャルソンは男装した女性だ。戸籍上性転換している人もいるが、そういう人は、このお店でどちらで働くのも本人の自由だ。そこで働いている何人かが、ママのいるこの店の常連客にいる。俺の夜の授業の先生だった人もいる。
「父さん、おねーちゃんのいるクラブって言ってたから、てっきり」
「部長いっつもあの店のママのこと「おっさん」って呼んでましたよぉー? あー、でもいつも怒られて、おっねーちゃんって呼んでたっすけど」
そういえば、おねーちゃんじゃなくて、「お、ねーちゃん」だったかもしれない。
「そうそう。だいぶ前っすけど、部長がVenusのママをおっさんって呼ぶから、部長に嫌がらせでキスしたんすよ。そしたら部長、気持ち悪いぃ! って必死に逃げてたっすけど、そのあと名前で呼べー! って責められながら馬鹿みたいに飲まされてたっすよ。部長、ママにだけ厳しいんっすよねー。あれから部長、ママの前ではちゃんと名前呼ぶようになったっすけど」
「それ、4年くらい前ですか?」
「うーーーーん? ああ、そうっすね。あの時付き合ってたのアケミちゃんっすから」
あの日か?
「ちなみにVenusのママの名前って」
「ミチルちゃんっすか? オレの好みじゃないっすけど、ミチルちゃんも美人なんすよ~。部長がいじめるからいっつも部長がからかわれてるっす」
「つかぬことを聞きますが、山際さんはゲイなんですか?」
「ええっ? どうなんだろうー。多分違うっすよ。俺が好きなのは女の格好をした男っす」
「え?」
「だから。女の子みたいに綺麗にメイクしてきれいな服を着た、男」
「女の子じゃだめなんですか?」
「女の子はいやなの。男の娘がいいのー」
「へぇ。そういう人もいるんですね」
「なんすかっ。そういう君のお父さんだって十分変態じゃないっすかー」
「え」
「部長から毎日のように聞かされるこっちの身にもなってくださいよー」
「と、父さんから何を」
「のろけ話っすよー。もう俺が会社入った時からずーっと毎日っす。溺愛っぷりがマジきもいっす。その上最近なんか顔赤らめてのろけだしたんっすよ。もう。聞かされるだけで俺ら妊娠するっての」
「父さんは一体どんな話をしてるんですかっ」
「ええぇえぇ? だからー。のろけっすよ。尊に目やにがついてて取ってあげたとか、俺が作った飯を美味そうに食ってたーとか、最近は筋肉がついてかっこいいとか、論文が評価されたとか、おはようって笑ってたとか! 毎回マジどうでもいいの入ってて! 付き合いたての恋人かよ! って突っ込みたくなるっす。ほんといい加減にしてほしいっすよ」
「あの、なんか、すみません」
「俺ー、ちょっと前まで海外赴任だったんすけど、その間はさすがに逃げられると思ってたのに、二人でリモートすると必ず息子自慢始めるんすよ。だから部長とリモートするときは家ではやんなかったっす。絶対カフェ。人がいるところ」
「なんか、ほんと、すみません」
「尊くん、あんなきもいお父さんで本当にいいの? ちゃんと本物のお父さん見つけた方がいいんじゃない?」
「え」
「あれ? 言っちゃダメだったでしたっけ? 解決したって聞いたっすけど」
「あの」
「血が繋がってないんすよね?」
「ええ、まぁ」
「だから、あんな変態親父、やめといた方がいいですって。そのうち絶対襲われるっすよ」
もう襲われてるんだけど。いや、襲ったのはオレだけど。
「父さんが、外でオレのことをそんな風に言っていたのは意外でした」
「もーほんと。うんざりするほど毎日っすよ。俺と専務は耳にタコ。専務は君が生まれたときからっすから、もっと長いっすけど」
「ほんと、すみません」
「襲われないよう、気を付けるっすよー!」
ママを見ると声を抑えて笑っていた。
オレって、結構愛されてる?
1
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる