19 / 32
閑話 ①
閑話 ②
しおりを挟む「ママ、ビール!」
「あたしはモヒート!」
「あ、い、いらっしゃい! 空いてるところに座ってちょうだい」
いつもの常連客2人組が来たところで会話が終わってしまったけど、今彼は何を言ったのかしら?
その後、彼とは話す機会がなく、彼は所在なさげに帰りますって言って来たわ。
だから、お釣りを渡すときに伝えたの。
「またゆっくりいらしてね。次は優しい飲み物をお出しするわ。お話はその時」
「あ、ありがとうございます。ごちそうさまでした」
その笑顔、全人類を殺しにかかってるのかと、疑いたくなるほどイケメンね。背も高いし。いい体してるし。
でも、やっぱりどこかで見たことがあるのよねぇ。
こんなイケメン、一度見たら忘れないと思うんだけど。
「ママぁ、今の彼かわいかったわね」
「そうね。これから常連さんになってくれるかもしれない子よ」
「ええ? もうツバ付けちゃったの?」
「違うわよ。それに多分彼には思い人がいるわ」
「なんだぁ。残念。それより聞いてよ! 今日同伴するお客さん、予約して連絡してきたの、2年ぐらい予約待ちのお店よ? すごくない?」
「まあ、それはすごい。いいの? こんなところで油売ってて」
「さすがにあんなすごいところ素面ではいけないわぁ」
「あらまぁ、少し軽めのお酒にしときましょうね」
「ママありがとうー」
彼女たちはClubVenusホステスで性別は男だけど、どこからどう見ても女の子にしか見えない男の娘。お店が始まる前や終わった後にたまに顔を出してくれるのよね。
◆
今日、お店に来てくれた男の子の顔がどうしても思い出せずに、学生時代のアルバムを引っ張り出して探してみたけど、やっぱりわからなかった。
でもきっと彼がもっと若いときの顔を知ってるはずなのよ。ココ(喉)まで出かかってるのに出てこない。ああ。すっきりしないわ。
『Prrrrrrrrrrr』
『どうしたの? こんな時間に』
『あ、起きてた。兄ちゃんあのさ、買ってほしいゲームがあんだけど』
『あんた、そういうときだけ電話してこないでよ』
『だって母さん買ってくんねぇんだもん』
『高校生になったんだからバイトしなさい。バイト』
『ええー、めんどくさい』
『そんな奴に買うゲームなんかないわ』
『ほーしーいー』
『なら、あんたのカメラロールにあるイケメンの写真を寄越しなさい』
『えええ? またかよ。またあいつら兄ちゃんのおかずにされんのか』
『それに使うとは言ってないだろ』
『あ、口調もどってる。図星だな? 1枚1000円な! 5枚送るから5000円くれよ』
『はぁ、あんた随分とボロい商売してるわね』
画像は直ぐに送られてきた。
それを見ていてふと昔の記憶に引っかかりを感じた。
もしかして。
『ねぇ、中学の時行ってたサッカークラブの子の写真とかないの?』
『ええ? 兄ちゃんついに中学生まで範囲広げたのか?』
『いいから寄越しなさい! いい写真があったら5000円上乗せしてあげるから』
『マジか! ちょっと待ってな、直ぐ探して送っから! 兄ちゃん愛してる~』
切れた電話を眺めて待っていると、30分ほどして10枚ほどの写真が送られてきた。弟と一緒に撮っているものがほとんどだが、集合で取ったものが1枚。
『集合写真で好みの奴がいたら言ってくれよ』
弟はそうメッセージを付けていたけど、あたしの目的はそっちじゃないのよ。
集合写真であの子を見つける。
少し画像は荒いけど、目鼻立ちがはっきりした子だからわかりやすい。それに身長が中学生にしては随分高いこともあって目立っていた。ツーショットで弟と肩を組んでる写真は頭半分身長差がある。間違いないわ。
この子、昔、弟がゲイ雑誌渡してた子よね?
あの時は違ったって言ってたけど、やっぱり、目覚めたってことかしら。
◆
3日ほど経って、また彼が店に顔を出した。間違いない。あのデカマラ君だわ。
「いらっしゃい。貴方にお酒は出せないから、ジュースでいいかしら?」
「すみません、お願いします。やっぱりわかりますか?」
「そうね、20歳で押し切るには少し肌が若いわね」
「今まで見破られたことなかったんすけど」
「おねぇさんを甘く見ないで」
「すみません、オレンジジュースお願いします」
「はぁい」
今日は、開店直後を狙って来てくれたみたい。多分あの話をしたいのでしょうね。
「どうぞ。何か話したいことがあって来たんでしょ?」
「あ、はい。アナルセックスの仕方を知りたくて」
「ずいぶんとあっけらかんと話すわね。お姉さん悲しいわ」
「なんというか、ちゃんとした知識を手に入れたくて。経験のありそうな人から話を聞こうかと」
遊び半分、って感じじゃないわね。こんなにまっすぐ目を見つめられるとどぎまぎしちゃう。
「うーん、そうねぇ。誰か想定している人がいるの?」
「はい」
「どっちで?」
「できれば、どちらもで」
「っっ。そ、そうね。じゃあ、とりあえず、どちらからにする?」
「そうだな、される方、が先かな?」
「それならネットでの情報とそんなに変わらないと思うし、あなた自身の事だからネット情報で充分できる気がするけど」
「あー、相手の人、普通のサイズじゃなくて」
「え」
「多分、かなり拡張しないと無理なんです。それで、できれば身体を壊さずちゃんと拡張したくて」
「ちなみにどれくらい……?」
「これくらいっすかね」
絶句よ。何そのサイズ。日本人なの?
うちの店のトールグラス指さしたのよ。意味が分からないわ。
そんなデカマラ聞いたことも見たこともない。
いえ、そうよ。それ、やっぱりする方の話よね? あなたがそのデカマラの持ち主でしょ? じゃないと話がおかしいわ。
「ず、随分と大きいわね」
「そうっすね。特にカリの部分が硬くて、このコップより長いっす」
ぐふっ。この子ほんと衒いなく言うわね。
相手の人を自分のサイズにしたいってことなのかしら。
「ちなみに今はどれくらい拡張したの?」
「普通サイズのディルドは飲み込めるようになったんですけど、それ以上にするのが怖くて」
「そうねぇ。そうなると実際にそこまでやってる人紹介した方がよさそうね?」
「可能ならお願いしたいです」
「わかったわ。ちょっと連絡してみる」
「すみません、あ、オレ大洲尊っていいます。お姉さんはなんて呼んだらいいですか」
お姉さんだなんて。本当この子、わきまえてるわ。
「ママよ。Barナイトメアのママ、それで十分」
0
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる