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第一章 尊編 ①
童貞卒業
しおりを挟むついさっきまで嫉妬で気が狂いそうだったのに、今の父さんの言葉を聞いて更に頭の中がぐちゃぐちゃになった。
しばらく呆然と父さんの寝顔を眺めていたけど、しばらくして思いついたように、父さんの言葉の意味がわかるかもしれないと、家探しした。
どこにも証拠はなかった。
父さんの手帳やスマホ、財布、パソコンにも……。
母子手帳。
そうだ、小学生の頃、予防接種の説明してもらったとき一度見せてもらったことがある。あれはどこにしまったか。
僕は思い当たるところを片っ端から探して、最後に父さんが日頃触らせてくれない引き出しを開けた。
その引き出しは通帳と印鑑、登記簿や権利書など、重要なものが纏めて保管されている、引き出し型の金庫だ。鍵とパスコードと指紋認証がいる。父さんはパスコードは教えてくれなかっけど、僕の指紋は登録してくれている。
パスコードの8桁は、僕の誕生日と父さんの誕生日を試しに打ったら一発で当たってしまった。
金庫の中に、茶色く何も書かれていない封筒を見つけた。
中を取り出すと水色の薄い封筒が出てきた。宛名の下を見ると「東宿DNA検査センター」と書いてある。
恐る恐る中身を取り出す。
そこは父さんと僕の親子関係の検査結果が書かれていた。
『解析の結果、大洲柊が大洲尊の生物学上の父親であることは否定されました。親子である可能性は全くありません(0%です)』
書類は2枚あった。
再鑑定の結果らしい。結果は全く同じだった。
検査の日付は5年前。
僕は、ないまぜになった感情を持て余し、その場で涙を流しながら乾いた笑い声を上げた。
父さんと血が繋がらないことがショックだったことよりも、親子でなかったことが嬉しかった。
僕は父さんと恋人になれる。好きでいていいんだと、背中を押された気がした。
今までずっと子供として父さんに甘えて来た。僕は色々知識が増えたころ、家族は恋人になれないと知って悲しかった。でも血は繋がってなかった。親子じゃないとわかって嬉しくなった。
それと同時に父さんは僕と血が繋がっていないから、無理して俺に付き合ってくれていたんだとわかった。
いろんなことがクリアになって行って、僕は引き出しに書類をしまうと、いつものように父さんの腕の中に入った。
僕は父さんの心が欲しい。子供としてじゃなく、男として愛されたい。
僕は、父さんと恋人になりたいんだ。
子供のフリをするのは、もう止めだ。
────
父さんとの抜き合いが無くなって、満たされない性愛に苦しむ日が続いたが、いつか父さんに男として見てもらえるよう、オレは努力した。
やっぱりアナルの拡張は必要だと思ってバイトで貯めた金で道具も揃えた。
風呂もベッドも別れたことで、いくらでも時間はある。
ネット情報だけじゃなく実際の話も聞きたくて、2丁目にも出向くようになった。年齢は直ぐにバレてしまったが、相談に乗ってくれるママやゲイの人にも出会えた。酒は出してくれないが、ちゃんとした知識を教えてくれた。
オレの息子がデカいのは同級生達との話で知っていたが、サイズを伝えたらママにモンスター級だと言われた。父さんとそんなに変わらないし、そこまでじゃないと思うんだが。
筆下ろしにそういう男を紹介しようかと言われたが、「男を抱く趣味はない」と告げると、納得しない表情で女もいると言われ、興味本位で承諾した。
デカマラ好きの女らしい。このサイズは外国人でも多くないと聞いていたが、その女は喜んで話に乗って来た。
キスもなし、クンニもフェラチオも無しだ。
フィストができるな女だったから問題なく行為はできたが、出すまでにやたらと時間がかかった。女のほうは何度か潮を吹いていた。
やっと終わったと思ったらドッと疲労感が襲ってきて、虚しさを覚えた。
これが世に言う賢者タイムってやつか?
父さんとした時には、一度も感じたことのない虚無感だった。
その後もその女は、事あるごとにオレを誘って来たが、ママに相談したら言って来なくなった。
世話してもらった上に、尻拭いまでしてもらって、頭が上がらない。
オレは女にも男にもモテていたと思う。昔から声をかけられることは多かった。
だが告白されたところで、オレには好きな人がいたし、たまに無理矢理俺と行為に及ぼうとするやつが現れても、オレの股間を触ると、それに挑もうとする奴は現れなかった。誰だって壊れるのは怖いだろう。
女より、男に尻を狙われる方が怖かった。でもオレは父さん以外、受け入れるつもりはない。
その父さんとの関係は、全く進展しなかった。
進展どころかスキンシップが減った分、距離ができた。
その頃、ママや常連客の何人かに父さんとのことを相談したら、思春期に家族に性欲を覚える人もいるって聞いた。
その性欲を愛と勘違いして関係を持ってしまうこともあるって。
どの時はもしかしたら、オレもそうなのかと悩んだ。
だから、セックスができる女を何人か紹介してもらって、付き合ってみようと努力もした。
だけど、誰とやっても、何回やっても父さんとする時ほど気持ちよくないし、何より高揚しなかった。そのせいでやたら疲れるし虚しさだけが募った。
いろいろ経験するうち、オレは、思春期の一時的な感情で父さんが欲しかったわけじゃないって気付いた。だって、今でも父さんを見るだけでドキドキするし、押し倒したくなる。
こんなに欲情するのは父さんにだけだ。血なんて関係ない。
────
大学も無事合格した。
高校3年間、一度くらい父さんから誘いがないかと淡い期待を持って、たまに半裸でうろついてみたが、一度も手を出してはくれなかった。
何なら風邪ひくぞって服を着せられた。オレって魅力無いのか。
よく考えたら、父さんがどんな姿に興奮するのか全然知らない。オレは父さんの姿を見るだけで、こんなにも胸が苦しくなるのに。
それはまだ恋心を知らなかった頃からずっと変わらない。
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