俺の息子の息子が凶悪な件

把ナコ

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第一章 柊編

告白 ※

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 家に帰りたくないという理由だけで、俺はホテルで寝泊まりを続けた。
 スマホと財布があれば意外となんとかなるものだな。

 尊は今どうしているだろうか。もともと何でもできる子だったが。
 もう大学も始まっているだろうし、新しい友達も出来ただろうか。
 少しは気にかけてくれるかと期待したが、スマホにも連絡がない。いや、自分から出ていったんだ。俺から連絡するのが筋だろう。しかし家に帰って、そこが、も抜けの空だったら。

 妄想に取り憑かれる頭をブンブンと振って、膨れ上がった不安を振るい飛ばそうとしたが、結局脳が揺れて気持ち悪くなっただけだった。

  はは、何してんだ、俺。

 2か月ほどホテル住まいでやり過ごしていたが、どうしても必要な仕事のデータが自宅の仕事用PCにしか無く、仕方なく一度家に帰ることにした。
 日中時間帯なら大学に行ってるだろうし鉢合わせすることもないだろう。

 家に帰ると、屋内は酷く荒れていた。
 尊は綺麗好きだったと思ったが。タバコと酒の匂いが充満している。まだ尊は未成年だったはずなんだがな。
 この空気は元妻を思い出す。嫌なことを思い出してガラにもなくいらだってしまった。

 念のため、と思って尊の部屋を開けると、俺が出ていった時とほとんど変わらない空間がそこにあった。だが随分と埃っぽい。もしかしてこの部屋を使っていないのか?

 
 窓を開け、掃除を始めた。2時間程かけて掃除を済ませると、自分の部屋に入った。
 するとそこは、他の部屋と違って掃除が行き届いた、綺麗な状態で維持されていた。デスクに塵一つない。何故この部屋だけ? 
 尊の行動が全くわからない。この状況は何を意味するんだろう。

『山際くんお待たせ。データ取れたから、作業始めよう』
『待ちくたびれましたよ! こっちは準備できてるんで、データ擦り合わせしますね。送ってください』
『もう送ったよ。古いデータだから日付の階層気をつけろよ?』
『今更そんな初心者みたいなミスしねぇですよ』
『どれくらいかかる』
『そうっすね、1時間くらいで終わると思います』
『結構かかるな』
『全部で200万件分なんでね。スパコンなら2秒で終わるでしょうけど』
『こんな業務処理にスパコンなんか使うわけないだろ』
『終わったらまた連絡します。しばらくそこにいるっすか?』
『作業が終わるまではいるよ』
『承知したっす』

 山際くんは、部下の1人でPCに明るい子だ。俺がホテル住まいで仕事を続けていることを知っている数少ない同僚でもある。
 家を出たことを知っているのは直属の上司と専務、山際くんと総務部長だけだ。専務には尊がまだ小さかった時から育児の相談に随分と世話になった。俺と尊に血のつながりがないことを知っているのも専務と山際くんだけだ。

 俺の仕事はスマホとPC一台あればなんとかなる。内勤を希望していたお陰で在宅勤務が可能だ。スーツは一から揃えなければいけなかったが。

 連絡を待っている時間、久しぶりにキッチンに立った。コーヒーがぽとりぽとりと落ちてくるのを眺めていたら、尊に何か作ってやりたくなった。
 どうせ碌《ろく》な物食べてないだろう。
 だが、冷蔵庫は酒で埋めつくされて、大したものは入っていなかった。

『ちょっと買い物に行ってくるよ。処理が終わるまでには戻る』
『承知したっす』

 山際くんにメッセージを送って、靴を履いた。
 玄関のドアノブを掴もうと手を伸ばしたら、ノブが動いてすぅっと手から遠ざかっていった。

「父さん?」
「お、おかえり」

 そこには驚いた表情の尊が立っていた。
 まだ俺のことを父さんと呼んでくれるんだな。



「今までどこにいたんだ」

 コーヒーを差し出すと、尊が責める目つきで俺を問いただした。

「流石にここには帰りづらくてな。ホテルにいた」
「また出ていくのか? オレを置いて。そうやってあんたもオレを捨てるのか!?」
「違う、違う、違うんだ。それに捨てられるのは俺だろ」
「なんだよそれ」
「俺はお前の本当の父親じゃないんだぞ」
「だからオレはその方がいいって」
「まだ、言うのか」

 尊からその言葉を聞くのは辛い。この18年間、俺はずっと尊から父親じゃない方がいいと思われてたなんて辛すぎる。あんなに可愛らしく笑顔を見せてくれていたのは、全部嘘だったと言うのか。

「だからっ、血は繋がってなくても俺はあんたと一緒にいたいんだ。もうどこにも行かないでくれ」
「一緒にいても良いのか?」
「嫌だなんて一度も言ったことないだろ」
「だが……ずっと俺から離れようとしてただろ?」
「それはっ、」
「さすがにわかるよ。あの頃だろ? 俺と血の繋がりがないことを知ったのは」
「そうだけど、あんたは勘違いしてる。オレがあんたと親子じゃなくて嬉しかったって言ったのはっ」
「くっっ。まだ言うのか。そんなに嫌なら、何故一緒にいたいなんて嘘をつく」
「ちゃんと最後まで話を聞けよっ」
「っっ」
「言えば、あんたはオレを嫌いになるかもしれねぇけど」
「尊?」
「オレは……オレは、あんたのことが好きなんだよ!」
「? まぁ、親だと思ってたくらいだから、そう、かもしれないが」
「そう言う事じゃなくて、……くそっ」

 尊は立ち上がって俺の肩に手を置くと顔を寄せて来た。
 その行動から口付けが来るとわかったのに、何故かその瞳から逃れられず、そのまま受け止めた。
 すぐに離れて目が合ったと思ったら、もう一度押し付け、あろうことか舌を捻じ込んできた。

 驚いて引き剥がそうと肩を押すが、びくともしない。その上強く抱きしめられ簡単にソファに縫い付けられてしまった。
 やめろ、と声に出そうとして開いてしまった唇に、侵入してきた熱い舌が上顎をなぞり、脚に膝を割り入らせてきたところで「ツキン」と独特の痛みが走った。

 やばい。
 そういえばもうずっと、抜いてない。

 体積を増した息子に気づいた尊は、膝で擦り上げ、さらに刺激を加えてきた。布越しに伝わるもどかしい愛撫に、妙な興奮を覚えて数年前まで常態化していた抜き合いがフラッシュバックする。

 どう抜け出すかで頭がいっぱいだったのに、激しく口を貪る尊から暖かい水が頬を伝って零《こぼ》れ落ちてくると、冷静を取り戻した。
 両手で尊の顔を包みこんでゆっくりと引き剥がす。

「どうした」
「あんたが好きなんだ。ずっとずっと、あんたのことが好きだった」
「尊」

 ぐずる赤ん坊みたいだ。

「父親だと思ってたから、子供のフリをしてあんたが許してくれるところまでずっと甘えてた。でも親子じゃないってわかって、俺はあんたのことが、全部欲しくなった」
「尊」

 飾らない言葉だった。

「こんなオレ、気持ち悪《わり》ぃだろ」
「どうして」
「嫌がってたじゃないか。あの時だって」
「あの時?」
「あんたが記憶を無くすほど酔って帰ってきた時」
「俺はお前に何を言った?」
「気持ち悪いって」
「そんなこと言ったのか。悪かった」

 頭を引き寄せてぎゅっと抱きしめると、ぐずっていた声が収まった。優しく頭を撫でる。
 俺と尊は、ずっとすれ違っていたんだな。
 尊はいつから俺を父親と思わなくなっていたんだろう。

 俺はずっと尊の父親になりたかった。父だと思っていたのにある日突然その権利を奪われたのだ。ただ血の繋がりが無いというだけで。
 だから俺は、より一層父親になろうと努力した。

 結局父親にはなれなかった。それでも尊から好きだと言われれば、その感情がどんな形であっても、やはり嬉しかった。

「今も気持ち悪いか? 反応してるけど」

 俺の股の間で更にボリュームを増した息子を下から撫で上げると、俺の胸から抜け出した。
 涙目なのに、無理やり笑顔を作って、もう一度俺を見下ろした。

「尊としてきたことで悩んだことはあるが、気持ち悪いと思ったことはないよ」

 涙で濡れた頬をなぞった。

「嘘だ」

 俺に触れる手が震えてる。
 尊が必死に感情を殺していることが、その振動から伝わってくる。

「本当だ。現にこうして尊にキスされただけで勃ってるじゃないか」
「そんなのは生理現象で」
「本当に嫌なら反応しないよ」
「じゃあ、あんたも俺のこと」
「それは、すまん。まだ混乱してる。時間をくれないか」
「……なぁ、嫌じゃないならこれ処理してもいいか? オレ、もう抑えらんねぇ」
「尊っ!?」

 いつのまにか涙はすっかり引いて、俺にのしかかってきた尊は、もう一度俺の口を容赦なく犯し始めた。必死に食んでくる尊がかわいらしい。ほだされるように俺も尊の口づけに応えた。

 キスなんていつぶりだろうか。こんなに気持ち良いものだっただろうか。
 整理がつかない頭で応えていた口付けだったが、口内を熱い舌が暴れまわるたびに腰に電流が流れ、声が漏れた。
 そして、それに呼応するように俺の息子は服の中で行き場を失っていった。
 尊が開放して顔を出したそれは、今までで1番成長した息子だった。

「相変わらずデカいな」
「はぁ……勃たせた責任は取ってくれるんだろうな」
「喜んで」

 尊が俺の息子に口を寄せた時、無情にも電話が鳴った。



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