上 下
183 / 188
第5章 六凶編 VS ブラッディマリア・ブルードラグーン

第182話 東京奇譚

しおりを挟む
 東京へ向かう新幹線の道中、風香とこのはは旅行気分で過ごしていた。専門学校を卒業し、就職までの間の最後の春休み、と言うこととして、雅文と美夜子は寛容に見ている。
この2人、服装が奇抜なだけで喋ると、礼儀正しい。
「お2人は、今までの調査で、他の地域に行かれてたんですか?」
このはからの質問に、雅文が答える。
「良い質問やな。探偵という仕事柄、依頼があれば他の地域へ飛んでいきます。印象に残っているのは、福岡と沖縄での案件やね。」
美夜子もそれに続く。
「沖縄では、人魚に出会う摩訶不思議な体験をしたわ。依頼人の依頼には、真摯に向き合い、全力を注ぐ。その前に、違法性が無いか見極めることよ。」
沖縄でのエピソードを語ると、2人は目を輝かせて耳を傾ける。
「マーメイドとか、ロマンチック~!!」
「人魚姫が中国王朝と繋がってたとか、ラストエンペラー並みの壮大な話…。」

 そうこうしていると、新幹線は東京駅に到着。改札を出て、東京駅へ出ると、その規模に驚かされた。日本の首都の駅と言うだけあり、全国の新幹線の路線とリンクし、プラットフォームの数は日本一多い。赤レンガ造りの丸の内口駅舎は、国の重要文化財に指定されている。
「うわー!!!!スゴい!!!!」
「壮大やな。」
初めての東京に、2人は大はしゃぎ。滞在期間は3日間。1日目は始まっている。動画に映っているエリアは、渋谷・新宿・秋葉原。このエリアに絞って調査する。
「しかし、広いな。東京は。」
「貴女達。はしゃいでる場合やないわ。急ぎましょう。」
美夜子に促され、3人は急ぐ。その近くに、謎の白服の男女…。
「いました、あの神田雅文とかいう探偵。」
「はるばる東京まで来てくれたか。聖女ひかりの敵討ちだ…。」
「とはいえ、奴らは百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸を潰してますから。油断は禁物。」
「確かにな、雅文の相棒の、美夜子って女も厄介だ。討ち取るというよりも、軽く腕試しという感じで行こうか。」

 宿泊先は、新宿区のカプセルホテル。時刻は午前10時。最初は秋葉原へ行く。山手線で移動。秋葉原は、千代田区にあるエリアで電気街。オタク文化の聖地でもあり、サブカルチャーが栄えている。
「ゴチャゴチャしとるな…。」
オタク文化の凄さに、雅文は圧倒されている。風香とこのはは大阪の日本橋のオタロードに足しげく通っており、サブカルチャーの聖地 秋葉原にテンションが上がる。
「うわー!!!オタクの街やー!!」
「変態紳士さん、返事してー!!!」
「いや、聞こえるかい!!!」
変態紳士軍団の動画の中に、秋葉原のメイド喫茶で撮影されたものがあり、店内の内装も見えている。動画を注意深く観察する雅文と美夜子。秋葉原にあるメイド喫茶一覧をスマホで調べ、内装と店舗の写真を照らし合わせる。
「ここのようやね。」
「そこ、人気のお店です!!」
「店員からも話を聞こう。」

 秋葉原のメイド喫茶に赴いた一同。ここは、「めいどりーみん」と呼ばれる秋葉原発のメイドカフェ・メイド喫茶で、国内は東京(秋葉原・渋谷・新宿)・名古屋・大阪(難波・日本橋)・福岡(小倉・天神)・札幌と17店舗、海外ではタイに3店舗と、計20店舗展開している。秋葉原だけで7店舗。名の知れたメイド喫茶である。雅文と美夜子は、メイド喫茶は初めてである。
「可愛らしい所やな。」
「そうね。」
メイド喫茶に慣れている風香とこのはから、簡単な説明が入る。

・店に入ると、メイドさんがお出迎え。
男性「おかえりなさいませ、ご主人様」
女性「おかえりなさいませ、お嬢様」
・フードメニューは可愛らしいもの。食べる前にメイドさんが魔法をかけてくれる。
「美味しくな~れ、萌え萌えキュン🖤」
・店を出る時は、さよならとは言わない。

変態紳士軍団の動画の中には、彼らが名の知れたYouTuberとして承認されているのか、ライブにスペシャルゲストとして呼ばれているものがある。時刻は正午。もう腹が減っているので、昼食がてら行くことにした。
「おかえりなさいませ、ご主人様、お嬢様!」
可愛いメイドさんがお出迎え。4人なのでテーブル席に案内。メニューを見ると、可愛らしいものがいっぱい。フードメニューは、オムライス・ハンバーグ・カレーライス・パスタとあり、デザートはパフェ・パンケーキがある。どれも1000円以上する。メイド喫茶でテンションが上がる風香とこのは、ニコニコしながらメニューを見る。
「この「「ふたごのくまたんオムライス」」可愛い~。くまたん寝てるで。」
「私、「「ひよこたんカレー」」がええな。」
ウキウキモードの2人に、美夜子は少しピキッとなる。美夜子はこういうチャラチャラした所が嫌いである。
「貴女達。自分の食事代は自分で出しなさい。」
「はーい。」
雅文と美夜子は、プレーンオムライスを注文。注文が来て、メイドさんが魔法をかけてくれる。
「美味しくな~れ、萌え萌えキュン🖤」
その後、風香とこのははニコニコしながら、お互いの料理をシェアして食べる。腹を満たした後、ライブがあるので、ライブ前にメイドに聞き込み調査。
「このYouTuber、ここに来ましたか?」
「あぁ!!ちょうど昨日も来てくれました!」
変態紳士軍団のメンバーの名前まで教えてくれた。1日目で上々の収穫だ。

変態紳士軍団
リーダー フェチズム男爵
メンバー ロンドン・ロックス伯爵
     中田くん
撮影スタッフ ジョニー
          福田くん

ライブでは、ヘビメタ調で童謡を熱唱した。ライブ後、渋谷へ行った。
「ありがとうございます。」
秋葉原で情報を得た一同。新宿のカプセルホテルにチェックイン。夜の新宿を廻る。疲れた2人はカプセルホテルに戻り、雅文と美夜子は歌舞伎町やトー横で聞き込み調査。トー横は新宿区歌舞伎町新宿東宝ビルの横の略で、たむろする若者の溜まり場になっている。治安も悪く、違法薬物・暴力などの犯罪の温床となり、東京の社会問題である。トー横キッズに絡まれないようにしながら、ホテルへ戻ろうとする雅文と美夜子の前に、白装束の男女2人が現れた。
「神田雅文と桐島美夜子だな?」
「我らの聖女 ひかりを殺した不届き者め!!」
ただならぬ雰囲気に、2人は臨戦態勢になる。
「丸腰だから、簡単に勝てるとは限らへんよ。」
「ひかり、まさかお前ら、世界T教会のモンやな?」
しおりを挟む

処理中です...