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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第166話 怨念成仏

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 怨念を持ち、成仏出来ないまま、首だけの怨霊となった沙羅。豊臣家が滅び、戦国時代は終わり、世の中は徳川家が主導権を握り、江戸幕府が成立。260年余り続く天下泰平の江戸時代を迎え、戦国時代のような下剋上と戦乱は否定され、武士達も平和な世を謳歌した。だが、沙羅の徳川家への怨みは、凄まじいものだった。
「ハァハァ…。徳川家め!なぜわらわは、あんな家康とかいうクソムシに敗れなければならなかったのじゃ!!」
怨霊となった沙羅は、妖力で肉体を再生させ、身体も30代まで若返らせることが出来た。政権は江戸に移り、京都へ身を潜めた沙羅は、羅暴鬼・姦姦蛇螺・沙羅魔と出会い、低級な妖怪達を仲間にし、百鬼夜行として恐れられた。妖力を駆使して、世間の情勢を知り、江戸幕府の情報を得ていた。
「綱吉は何じゃ、「「生類憐みの令」」など出しおって、お犬様じゃと?イカレておるわ。」
「家継が死んだ?7歳の小童に将軍が務まる訳なかろう。」
天下泰平の世も、飢饉・開国・攘夷と倒幕運動と動乱を経て、1867年の大政奉還で江戸幕府は終わった。急ピッチで近代化し、大日本帝国にまで成長した日本。明治・大正・昭和に日本は、欧米列強の一員として世界に君臨した。戦後、曼珠沙華は裏社会に堕した人間や半妖怪を仲間に引き入れ、百鬼夜行之衆を結成。裏社会の列強として恐れられた。
 
 だが、百鬼夜行之衆も六道魔と三妖魔達が探偵連合軍の前に敗北を喫し、残るは大将だけとなってしまっていた。
「そうか、そう言う過去があったとね。」
「左様。わらわは怨念の下に蘇った。じゃが、お主達の友情や勇気と言うものに、わらわの怨念は太刀打ち出来なかった。わらわは、怨みのままに人間共を血祭りにあげていた。お主らは違った。」
曼珠沙華は、戦意喪失した様子で語る。孝太郎は彼女の背後に、怨念集合体が浮かび上がっているのが見えた。それはやがて、黒いモヤとなり、無数の人間の顔として出て来た。
「ァァァァァァ!!!!!」
「殺セ!殺スンダ!!!!」
それは大きくなり、鎌を持った死神になって現れた。
「フハハハハハ!!!!」 
「何と!!」
「何じゃ貴様!」
その怨念の正体は、曼珠沙華の生前に殺害した者と百鬼夜行之衆の犠牲者達の幽霊であった。この怨念は死神となり、曼珠沙華を地獄へ連れて行こうとしていた。
「オイ、曼珠沙華!!貴様は地獄へ落としてやる!!」
「わらわの勝負に、首を突っ込むな!!」
曼珠沙華は妖刀で斬りかかるが、死神の鎌の方が強く、逆に妖刀が粉砕された。
「開け!!地獄の穴!!」
死神が手を翳すと、大きなクレーターが出来、下には赤く燃える地獄の光景が広がっている。

 地獄の熱気と死臭は凄まじく、雅文達は思わず酔いそうになった。
「うわっ!!何やコレ?!」
「これが、地獄なんか!?」
孝太郎は、心霊探偵として長年活動しているが、初めて見る光景に戦慄していた。
「焦熱地獄!大火炎!!」
八大地獄の6番目に位置する焦熱地獄からの、凄まじい獄炎が曼珠沙華を襲う。
「あぁ!!熱い!!!」
地獄の炎で焼かれる曼珠沙華。脳裏には、生前の苦い思い出が過る。本能寺の変で、主君の織田信長を失った。信長の死への悲しみと光秀への恨み、それぞれが交錯した感情が蘇る。
(信長様!!わらわは死にたくない!!)
地獄の穴から、無数の亡者の手が伸び、曼珠沙華を掴まえて、地獄へ引きずり込もうとした。
「止めろ!!わらわは死にとうない!!地獄へは行きとうない!!」
「諦メロ!!オマエは1度死んだ!!殺生を繰り返したバケモノめ!!無限地獄へ堕ちろ!!」
地獄へ引きずり込もうとする亡者に、雅文が火炎・電撃・冷凍銃で攻撃する。
「ギャアァァァ!!」
「1度戦えば、もう戦友。戦意のない者を攻撃するなんて野暮やで。」
「何だ貴様は!!」
死神相手にも臆することなく、雅文は啖呵を切る。 
「俺は神田雅文。探偵や!!!」

 死神は怨念を集めて、集合霊はガシャドクロという巨大な骸骨の妖怪になった。
「オォォォォォォォ!!!!!ミナゴロシだぁ!!!!」
「もしかしたら、コイツが黒幕なんちゃうか?」
「わらわの勝負の邪魔をしおって…。」
襲いかかるガシャドクロの攻撃をかわし、曼珠沙華は妖力で攻撃する。
「グォぉぉ…。」
「フフフ、ガシャドクロなどわらわの足元に及ばぬ。」
ガシャドクロが跪いた所を突き、孝太郎が精神統一をし、数珠を取り出して合掌する。
「南無仏、南無阿弥陀仏、阿弥陀如来。」
孝太郎から聖なる光が出て、闇を払う。襲い来る死神とガシャドクロに、渾身の一撃を放つ。
「怨念・悪霊、大・成・仏!!!!!」
両手の掌底で、死神とガシャドクロを供養し、怨霊達を成仏させた。

 怨念を払拭し、曼珠沙華は戦意喪失。
「わらわも限界じゃ…。この戦いは、わらわ達の負けじゃ…。」
曼珠沙華が降伏したことで、戦いは終結。こうして、六凶の一角 百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸は壊滅した。
「雅文君、彼女のことは私が見る。」
「お願いします。孝太郎さん。」
互いに疲労困憊である。探偵連合軍は、百鬼夜行之衆と猛毒獣大陸を撃破し、この戦いに勝利して幕を閉じた。
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