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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第144話 夏 先取り

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   4月が終わり、世界T教会の神戸市部跡地は、何もなくなっていた。神戸市内の病院の霊安室に置かれた2人の遺体を、東京からわざわざ引き取りに来た教祖の白木勤は、2人を見るや否や声を上げて、咽び泣いた。
「おぉぉぉぉぉ!!!!何と言う痛ましい姿だ!!ひかりちゃん!死ぬには早すぎる…。」
引き取った遺体と共に、東京の本部に戻り、盛大な葬儀を行った。 
「せめて、天国では2人仲良く結ばれてくれ…。」
火葬した後、2人を共同墓地に葬った。教祖は、目に涙を浮かべながら、雅文達に復讐を誓った。
(アイツら許さん…。必ずや必ずや葬り去ってくれる!!)

   5月になり、探偵事務所はGWの休暇を迎えた。4月中旬に、雅文は里香と由香里から高校卒業記念の旅行に行くことを、提案された。5/3~5/5の2泊3日で、行き先は沖縄。海に入れるということで、水着を持っていく。途中で宮古島も経由する。
(宮古島ってことは、もしかしたら、またあの子に…。)
昨年の夏、調査で沖縄に赴いた時に、人魚の瑠華と出会った。
(またあんなロマンチックな出会いがあるかも!!)
雅文は、胸が踊った。旅行に際しては、里香と由香里は未成年で、雅文は保護者という役目もある。しかし、自分1人だけでは心細い。そこで美夜子も誘った。
「美夜子も沖縄行く?」
「ええ、いいわよ。里香ちゃんと由香里ちゃんにまた会えるの嬉しいわ。」
手続きを済ませ、当日を迎えた。

   5月3日、午前7時 神戸空港で雅文と美夜子は2人に再会した。
「雅文さん、久しぶりです!!」
「里香ちゃん、由香里ちゃん!色っぽくなったな!!会いたかったで!!」
「久しぶりね。」
胸元を開けたセクシーな格好で、大人っぽいメイクをしている。搭乗手続きを済ませ、8時55分神戸発那覇行きの便で、沖縄に向かった。10時30分頃に、那覇空港に到着した。手続きを済ませ、空港を出ると、南国の空気が漂い、太陽が照りつける。
「暑~い!!」
「沖縄やー!!」
里香と由香里にとって、沖縄は初めてである。初の沖縄で、2人のテンションが上がる。レンタカーを借り、那覇空港から最初の目的地の国際通りへ向かう。

   近くの駐車場に車を停め、国際通りを歩く。南国の陽気な雰囲気の中、ゆったりと進む。
「雅文さんと美夜子さんは、沖縄に行かれたことあるんですか?」 
「あぁ。去年の夏にな。人魚を探すという依頼があったから。」
「人魚、ロマンチック~!」
テンションが上がっている由香里は、サングラスをしてノリノリな様子。今回、2泊3日で沖縄に泊まる。4人の所持金は、1万以上あるが、飲食店は割り勘、ホテル代とレンタカー代は雅文と美夜子が折半して出す。土産は各自の費用。
「明日は、宮古島に行くわ。今日の昼から海に行きましょう。」
「沖縄と来たら、海ですよね~。」
国際通りを後にし、近くのお店で昼食。
「沖縄に来たら、これは食べておきたいものや。」
注文したのは、沖縄名物のソーキそばとゴーヤチャンプルー。里香と由香里にとっては、未知の食べ物である。
「何かデカい塊入っとる…。」
「ゴーヤ、どんな味なの?」
2人は恐る恐る食べてみた。ゴーヤの程好い苦味とチャンプルーの塩味が良く、ソーキそばはホロホロのソーキの旨味が染み出し、出汁も利いていて美味であった。
「美味しい!!」
「せやろ?」
昼食を楽しみ、その後は那覇市を出て、中頭郡のアラハビーチに行った。

   沖縄は亜熱帯気候に位置し、海開きの時期は3~10月で、本土より時期は長い。アラハビーチは透明度が高く、ヤシの木が生えており、どこかアメリカンな雰囲気がある。到着した一同は、荷物を預け、更衣室で水着に着替える。先に着替えた雅文が、砂浜にブルーシートを敷いて、場所を確保。雅文の水着は、迷彩柄のズボン。
「また瑠華ちゃんに、会えたらええな…。」
昨年の夏、宮古島で出会った人魚の瑠華。去り際に、再会を約束した。感傷に浸っていると、水着に着替えた3人が来た。
「お待たせ。」
美夜子は、昨年と同様、白いビキニで胸元に赤いハイビスカスが描かれている。里香は黒ビキニ、由香里はヒョウ柄ビキニと、大人びた色気が漂う。
「由香里ちゃん、めっちゃ攻めてるやん。」
「肉食女子、男の子食べちゃうぞ、ガオー🖤」
海に入る前に、砂浜で準備体操。それから海に入る。エメラルドグリーンな沖縄の海に、里香と由香里は大はしゃぎしていた。
「めっちゃキレイ!!」
「サイコー!!」
雅文は、2人の水着姿に見とれていた。
「ハーレムやな。」

   砂浜で、グラビアのような感じで写真を撮る雅文。
「今度は、雅文が真ん中に入って。」
美夜子のスマホで、雅文は里香と由香里との3ショットを撮ってもらう。密着する2人の胸が、腕に当たる。
「行くわよ。」
撮ってもらい、沖縄の海を楽しんだ。しばらく遊んでいると、白髪混じりの研究者風のオジサンが、砂浜に1人佇んでいた。
「中々の美らかーぎーを、連れてきたさね。」
美夜子は、オジサンに目をやると、昨年の調査で出会った東風平満春教授であった。
「あ、お久しぶりです!教授!」
「おぉ!美夜子君か!久しぶりだ!!雅文君も一緒か?」
雅文が里香と由香里を連れて、教授の元に来た。
「久しぶりです。教授。」
「おぉ!雅文君!元気そうだね!そこの2人は?」
「はじめまして、深山里香です。」
「はじめまして、山本由香里です。」
今回、旅行で来ていることを教授に伝えた。
「そうか、また沖縄に来てくれて嬉しいさ。そうだ!今夜は私のウチに来ないか?」
「えっ、いいんですか!?」
「あぁ。また会えたし、君達の友達も来てくれたんだ。一緒にメシを食おうか。」
今夜は、沖縄市の彼の家で夕食をいただくことになった。

 海を満喫し、那覇市のホテルにチェックイン。4人相部屋で泊まることにした。全員でシャワーを浴びることにし、雅文にとっては、ちょっとしたハーレム状態である。シャワーで濡らしてから、頭を洗い、それから互いの身体を洗うことにした。
「雅文さん、由香里が洗ってあげますよ。」
由香里は、身体に石鹸を塗って、後ろから抱きついて擦る。
「由香里のオッパイどうですか?」
「あぁ…。何か前より大きくなっとるな…。」
目の前で3人の女子が裸になっているので、また一層興奮するものである。シャワーを済ませて、着替えた後はコインランドリーで洗濯した水着を部屋干しし、教授の元へ向かう。

    沖縄市の彼の家に到着。時刻は18時30分。東風平教授が腕を奮って、沖縄料理を振る舞ってくれた。ゴーヤチャンプルー・ポークたまご・ジーマーミ豆腐、真ん中に沖縄風おでんがあった。
「よく来てくれたね。イチャリバチョーデー、出会えば皆兄弟さ。」
乾杯してから、いただいた。食べ盛りな里香と由香里は、テビチ(豚足)やソーセージが入った沖縄風おでんに舌鼓を打つ。
「美味しいです。」
「豚足、めっちゃ美味しい。」
「遠慮せずに、いっぱい食べてね。」
雅文は、里香と由香里に出会った経緯を話した。
「そうか。そんなご縁がね。」
「それで、雅文さん。転校生として来てくれたんですよ。」
「女子校に、転校生として?そんなことあるんだね。」
「女子校生活は、楽しかったよ。」
楽しい時間は、あっという間に過ぎた。食後、くつろいでいる時に、教授が人魚の話をした。
「去年、2人に会った時は、人魚のことを探しに来ていたんだよ。」
「人魚いるんですか?」
「そうよ。宮古島で会えたわ。」
昨年の夏、人魚の瑠華と出会った話に、里香と由香里はロマンを感じた。
「素敵ですね。」
「由香里も会いたい。」
翌日は、宮古島に行く。ひょっとしたら、また会えるかもしれない。雅文と美夜子はそんな期待を馳せた。 
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