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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第143話 堕天使の最期

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   ひかりの過去を聞き、彼女がなぜ世界T教会に入信したのか、ここまで信仰しているのかは、よく分かった。日本国憲法上では、信仰の自由は保障されているが、オウム真理教や統一教会の問題のような事態も起きており、カルトはそこから外れている。社会の秩序を乱すような思想とも言える世界T教会の理念、バックにいるのは六凶の一角で本物の妖怪達が大勢いる百鬼夜行之衆、ひかりは聖女として崇められているが、信仰のためなら殺人や拷問も厭わない冷酷な少女、と信仰の自由があるとはいえ、許容しがたい存在である。
「アハハハハ!!!!これで分かったかしら?貴女と私の格の違いが!!私は聖女なのよ!!膝をつきなさい!!」
美夜子は動じることなく、静かに切り返した。
「嫌よ。何で私が貴女なんかに膝をつかなきゃいけないのよ。偶像崇拝にも程があるわ…。」
それに麻帆も便乗する。
「カルトにのめり込んだ迷える者よ。釈迦・キリスト・ムハンマドそれぞれの経典 に、人を殺せとは書いてへんよ。宗教の名で、聖戦やの生け贄やの殺人を正当化する。貴女は、聖女やない。ただの血に飢えたテロリストや!!!」
「な?!この私に向かって、テロリスト?!貴女達、ホンマに殺されたいようやね!!!」
激昂するひかりの背後から、京子が浣腸を食らわした。
「人体の弱点攻撃!!」
「はぁぁぁぁぁ!!!」
先程まで啖呵切っていたひかりが、浣腸で悶絶する様に麻帆は思わず吹き出した。
「プフッ!浣腸されて悶絶って…。」
「ちょっ、笑うな貴様!!」
赤面するひかりに、再び浣腸が炸裂した。
「もう1発!!」
「あぁぁぁぁ!!!!!!」
「もう京子、笑かさんといて!!」
笑いが止まらない麻帆、激怒したひかりは京子の首を掴んだ。
「貴様ぁ…。さっきから、この私に浣腸しやがって!!!」
「この世に神なんていないですよ。」
「貴様!!この私こそが聖女や!!」
刀で斬りかかろうとした時、美夜子が助走をつけて、ひかりにドロップキックを食らわした。
「貴女の相手は私よ!!!」
「あぁぁぁぁ!!!!」
吹っ飛んだひかり。サモハン・キンポー並みのドロップキックが決まり、倒れ込んでいる。

 ひかりは美夜子に任せ、雅文と京子は男性の出家信者と百鬼夜行之衆の妖怪達と交戦する。残った信者も、降伏して脱会することにした。
「もう付き合いきれへん!」
「カルトから抜ける!!!」
脱会宣言をし、警官に保護される信者達。憤った出家信者が襲い掛かった。
「この裏切り者がぁ!!!」
そこに、雅文がパワーアップした銃で発砲した。
「うわぁ!冷たい!」
強烈な冷気が出て、鎧の一部が凍った。
「これは一体?」
京子は、理科系の研究しており、応用化学を活かして、雅文のエアガンを改造した。銃は大きくなり、3色の弾薬を使い分ける形で戦う。
「これは、火炎・電撃・冷凍の要素を備えています。」
火炎は黄リンと引火性のあるガスを、電撃はスタンガンの構造を、冷凍は液体窒素をと多種多様な構造を、上手く銃に組み込んだ。
「赤・黄・青に色分けしてます。これで雅文さんも戦闘モードを、使い分けることが出来ますよ。」
「ほうほう。これは使えるな。これは「「冷凍」」。さぁ、来い。氷の世界へ連れて行ってやるよ…。」
そこに、妖怪の一反木綿と腕くれ坊が襲ってきた。
「締め上げるでごわす!!」
「腕くれよ、なぁ!!!!」
攻撃をかわし、冷凍から火炎に切り換えた。
「かかってこい、バケモノが!!地獄の炎で焼いてやるよ!!」
「締め上げるでごわす!!」
一反木綿の攻撃をかわし、火炎銃で上半分を焼いた。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!!!熱い!!!」
一反木綿は紙の妖怪なので、火が弱点である。末端を掴んで、襲ってきた腕くれ坊に巻き付けた。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
焼け焦げた腕くれ坊は倒れ、両者共倒れとなり、小豆磨ぎは、恐れをなして逃げ去った。一方で猛毒獣大陸の手下達は、全員逮捕されたことにより、残る勢力は世界T教会の出家信者達と猛毒獣大陸のエージェント1組となった。

    所長は教祖の鎧に苦戦し、中々決定的な一撃を与えられずにいた。
「ハァハァ…。厄介やな、そのプラチナの鎧!!」
「フフフ、この鎧がある限りは無敵や!!」
雅文は、出家信者達のプラチナの鎧の弱点を見抜き、火炎から冷凍に切り換えた。
「凍結するがいい!!」
冷凍銃で攻撃し、プラチナの鎧は瞬く間に凍結した。
「ぬぉ!!」
「それが何や?!」
「雅文、その手があったか!!」
所長と雅文は、凍結した鎧を攻撃。すると、たちまち砕けた。
「何?!」
「瞬時に凍らせたものは脆いです。」
「流石やな、京子ちゃん!!」
全員の鎧を破壊し、所長は教祖に連続攻撃を食らわし、ノックアウトさせた。
「フンっ、カルトなどただの虚構や…。」
そこに猛毒獣大陸のエージェント ヒョウ・スズランが襲い掛かって来た。
「カルト教団が!皆殺しや、お前ら!」
ヒョウの手には、カキヅメがついており、丸腰の信者達はたちまち切り付けられた。
「痛ぇ!」
事態を重く見た警部は、救急車を呼び、保護した信者と逮捕した猛毒獣大陸の手下達を警察に送らせた。一方、美夜子は激昂したひかりの猛攻を何とかかわしながら、勝機を見出そうとしていた。
「貴様ら、よくも教祖様を!!私から家族を奪うなぁ!!!!」
日本刀の攻撃をしのぎ、美夜子は更に精神的に揺さぶりをかける。
「教祖様と言うけど、所詮はただの家族ごっこよ。貴女の自己満足に過ぎないわ。教祖や信仰のために、貴女がどれ程、人を苦しめたか分かる?罪を重ねるのは、もう止めなさい。」
罪の意識と信仰してきたものを否定され、怒りと葛藤に揺れるひかり。その目からは涙が零れた。
「黙れ黙れ黙れー!!!私は聖女や!教祖様は私を娘として受け入れ、お母様と共に家族にしてくれたのよ。何の権利があって、貴様らが私の家族を奪うの?!これ以上、私の宝物を壊すなぁ!!!!」
すると、ひかりの前に母が立ち塞がった。
「もう、私の娘を傷つけないで!私はひかりと運命を共にするわ。」
この2人の様子を見て、美夜子は大人しく引き下がった。すると、猛毒獣大陸のスズランが襲い掛かった。
「死ねぇ!」
「させるか!」
京子が冷凍銃で動きを封じ、その隙に警官が逮捕した。しかし、ヒョウが襲い掛かる。
「お母様、逃げよう!」
2人は焼け焦げた教会に逃げ込んだ。

 救急車が到着し、負傷した信者達と共に教祖も乗った。
「刑事さん、事が終わったら必ず自首します。」
「あぁ、約束や。」
教祖は救急車で、その場を後にした。これで残る敵はヒョウだけとなった。所長は、雫・京子・麻帆を先に事務所へ帰す。
「後は、私が責任もって雅文と美夜子を帰す。」
「分かりました。」
所長の車で、3人はポートアイランドを後にした。所長と警部も後を追った。焼け焦げた教会の地下に身を隠した2人。不安な様子のひかりを、母親は抱きしめた。
「ひかり、ごめんね。辛い思いさせて…。」
「お母様、私はお母様の子で良かったよ…。」
その時、乾いた破裂音が響き、母親は倒れこんだ。
「お母様!」
「へへへ、俺のコードネームは「「ヒョウ」」。狙った獲物は逃さへん。」
「貴様ぁ!」
ひかりはヒョウに襲い掛かり、両者は一戦交える。教会に入った雅文と美夜子だが、どこに行ったか分からない。
「どこなの?」
「確か地下室があったような…。ん?声が聞こえる!」
急いで階段を駆け下りた。
「うあぁぁぁぁ!!!」
カキヅメで斬られ、腹から血を流して、悶え苦しむ。それでも、ひかりは執念で立ち上がる。
「ハハハハハ!カルトに生きる道はあらへんのや。」
「ハァハァ…。お母様を…。私の家族を!」
最後の力を振り絞り、ヒョウに斬りつけ、首筋を突き刺した。
「お前も死ねぇ!」
ヒョウは拳銃で、ひかりの胸を撃った。銃声を聞きつけ、雅文と美夜子が駆け付けると、ひかりは血を流して横たわっていた。
「ひかりちゃん!!」
血塗れのひかりを抱き上げ、声をかける。ひかりは口から血を流し、涙目で話した。
「ハァハァ…。教祖様の言う聖女になれなかった…。お母様を守れなかった…。私はもう一人ぼっちなの…。」
「死ぬな!まだ生きる道はある!」
教会を出ると救急車が来ており、ひかりと母親を搬送してもらった。
「後は、2人も問題や。我々は引き下がろう…。」
雅文達と警部もこの場を後にし、ヒョウの遺体も回収された。

 神戸市内の病院に、救急搬送された2人は集中治療室で治療を受けた。心拍数は低下し、意識レベルの低下に伴い、意識朦朧としていた。ひかりの脳内に、走馬灯が流れた。
「安心したまえ。私が今日から君の父親だ。」
世界T教会で過ごした日々が蘇る。
「私は聖女になるのね。」
「あん、あぁ!教祖様、気持ちいいです~!」
出血多量で敗血症と多臓器不全に陥り、4月17日 午後1時32分 笹川悠里(42)・笹川ひかり(18)臨終。
聖女になろうとした少女は、堕天使として、この世を去った。
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