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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第137話 邪神教

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   4月になり、交換留学生を迎えて、新年度がスタートした。2人は20代で高学歴と、即戦力として高い期待値であった。桜木真帆は茶髪ロングで長身、すらりとしたモデル体型で、はっきりモノ言うタイプで姉貴分的存在、杉野京子は黒髪ショートで眼鏡っ子、背は小さくシャイな妹分と対照的である。中村探偵事務所の所長 中村景満は元刑事、烏丸雫は元アイドルと異色の経歴を持つ。雅文は文学、美夜子は歴史に精通しているが、この2人も精通している分野がある。
「私は、宗教に詳しく、仏教・キリスト教・イスラム教のことは深く知っております。成人してからは、イスラム教のラマダーン(断食月)を毎年やっております。」
「桜木さん、貴女のことは何と呼んだらよろしいでしょうか?」
「私の名前は、真帆やから、「「マホメッド」」とお呼びください。」
「唯一神ね。」
京子は持参したキャリーバッグを開け、中から実験キットを取り出し、実験用ゴーグルとゴム手袋を着用した。
「一体何をするんかな?」
「私は、探偵になる前は大学で科学者をしておりました。簡単なデモンストレーションをお見せしましょう。」
取り出したのは、小さなビン。中には水が張っており、謎の塊が入っている。
「この物質は、取り扱い注意ですので。」
トングで取り出すと、発火した。これは、黄リンという物質で危険物である。
「黄リンを持ってるなんて、貴女、ただ者やないわね。」
「心配なく。危険物取扱資格は持っていますので。」
黄リンを瓶に戻し、密閉する。その他、コイルの発電や液体窒素などの実験を披露した。

   そんな2人を加え、探偵業務に勤しんだ。ある日のこと、この日は雅文が休みで、所長と京子は朝から調査に出ている。事務所に残った雫・美夜子・真帆は事務作業をしていた。昼休みになり、休憩中は3人でガールズトークをした。
「今までどんな案件があったんですか?」
「去年の夏には、沖縄で人魚を見つけたわ。人魚が本当にいるのか、ってね。」
「人魚ですか、ロマンチックですね。」
美夜子より年上の真帆は、黒いスカートスーツから覗かせる谷間と引き締まった太ももと、中々セクシーなプロポーションである。真帆は人魚に会ったことはないが、そういった不思議な案件を扱ったことはある。
「京都の嵐山方面の川で、河童を見たっていう情報がありまして、それでホンマに河童がおったんですよ。」
「京都は昔から妖怪の話はあるからな、河童ぐらいはおるやろ。」
休憩が終わり、それぞれの業務に取り掛かる。14時頃に、事務所に1人の青年が来た。
「すいません。よろしいでしょうか?」
白いシャツを着た細身の青年で、見た目は20代である。真帆が案内し、席につかせて話を聞く。
「こんにちは。私は中村探偵事務所の交換留学生 桜木真帆と申します。」
「こんにちは。僕は神戸学院大学に通っています荻久保琢磨と申します。」
依頼人の名前は、荻久保琢磨 21歳。神戸学院大学3回生。大阪府出身で、大学進学と同時に神戸に引っ越し、学生寮で暮らしている。平穏な日々を送っていた彼だったが、昨年の夏頃から奇妙な奴らを目にするようになった。
「大学のあるポートアイランドに、謎の白い建物が出来たんですよ。しばらく経ってから、その建物に見知らぬ男女が行き来するようになって、夜な夜な何か変なことやってるんですよ…。」
建物の裏にある大きな庭で、輪になって踊ったり、建物から艶めかしい声が聞こえたりと、明らかに普通ではない様子が見受けられた。今年に入り、彼らは大学周辺で布教活動を行うようになったという。
「勧誘されたんですが、もちろん断りました。ほら、旧統一教会やエホバの証人とかが、社会問題になったから。だから、アイツら何か危険な感じがするんですよ。警察に言おうにも、違法なことをしている証拠は無いし、違法かどうかも分からないから、警察も動きようがない。そこで、探偵に依頼して調査してもらおうと思い、今日ここに来ました。」
真帆は、ここまでの話を真摯に聞き、好物のストレートティーをグイっと飲み干してから、口を開いた。
「なるほど。宗教団体かカルト教団か、確かに見分けはつきにくいわ。日本国憲法第20条 信教の自由には、「「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」」とあるわ。彼らが違法行為をしているかは、内情を見てへん限りは分からないわ。今回の案件は、素行調査ね。」
真帆は、雫と美夜子に相談し、依頼人と交渉した。調査内容は、素行調査。前金として3万円もらい、調査計画を立てる。所長と京子が戻った時に、この案件について報告した。
「何か、そういった奴らが関西に現れたというのは、聞いたことがあるな。」
「所長、何かご存知なんですか?」
何かを話そうとした所長だが、思い留まったように言うのを止めた。
「もし彼らが、ソイツらの傘下だとしたら、六凶との戦いになるだろう。心してかかってくれ。」
日が沈み、夜になる街。暗闇がこれからの戦いを案じているようである…。

 翌日、この日は雫が休み。依頼を受けた真帆と補佐役として雅文が、調査のためポートアイランドを訪れた。しばらく歩くと、謎の白い建物が見えた。周辺を観察すると、この建物の概要が明らかになった。
「世界T教会 神戸支部
世界T教会は、愛・調和・力によって、世界平和をもたらす。」
何とも怪しげである。
「如何にも、胡散臭いな。」
「ですよね。私も怪しいとは思っております。」
前日に練った計画では、この支部に入信者として入信し、潜入調査を行うというもの。旧統一教会やエホバの証人のような、内側の闇をどことなく既に感じていた。
「計画はこうやな。」
計画のメモを、互いに熟読して共有する。
時が来るまで、ポートアイランドで聞き込み調査を行い、情報を収集。得られた情報を綿密に記録し、書類としてまとめた。この機密情報を盗まれないように、ポートアイランドに所長を呼び、書類を渡した。
「ありがとう。気をつけて挑みたまえ。」 「はい!」
車でポートアイランドを後にした所長を見送り、2人は世界T教会神戸支部に乗り込む。中に入ると、真っ白な壁とどこか無機質な雰囲気がある。受付にいる白い服を来た中年男性に、入信希望であることを伝えた。
「神田雅文様と桜木真帆様ですね。分かりました。では、こちらへどうぞ。」 
謎の一室に案内される。彼らは一体何者なのか?
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