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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第135話 卒業

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   年末年始の修業を経て、成長した雅文・美夜子・玲奈は勢いそのままに日々の仕事に励み、案件を解決していった。その頃、六凶の百鬼夜行之衆は、関西にある世界T教会の拠点を廻り、挨拶をした。冬も終わりが近づく頃、雅文は高校の卒業式を控えていた。
「もうすぐ卒業か…。あっという間やったな。」
休憩時間となり、雅文は昼食を食べ終え、ミルクティーを飲んで一息ついていた。
「卒業、もうそんな時期か…。ホンマに色々あったな。」
所長は、レモンティーを飲みながら、雅文の前に座る。遡ること、一昨年の初夏。Golden FruitsのJKビジネスから解放した由香里と学校ぐるみで縁が出来、髑髏城との戦いで敗れ、青春時代の記憶を失ってしまった雅文に手を差し伸べてくれ、雅文は探偵兼学生として神戸山手女子高校で生活することになった。

   女子校という事で、緊張していた雅文はスーツにサングラスという格好で、教室に入った。週刊少年マガジンの「GTO」をイメージした感じで、教壇に上がり、自己紹介をした。
「今日から、この神戸山手女子高等学校に転校してきました神田雅文と申します。」
サングラスを外すと、女子達からの黄色い声援が湧いた。
「カッコいい~!!!」
「イケメンや~!!!」
席では、クラスの委員長の深山里香と隣になった。彼女と由香里と仲良くなり、3人で行動していた。昨年の春には、Golden Tigerと髑髏城との抗争に巻き込まれた由香里を救出するなど、雅文が奮闘。この抗争を制した。そんな日々も、2月で終わりを迎える。2年という期間だけだったが、女子校での日々は充実しており、失われた青春時代の記憶も取り戻せた。

   彼女達と過ごせた日々は、雅文にとってかけがえのないものになった。
「あの子達と過ごせて良かったな。」
「はい。」
「卒業式はいつや?その日は有給休暇にしとくから。」
「ありがとうございます!」
所長からの粋な計らいに、雅文は頭を下げて感謝した。2月末、卒業式の予行で皆が久しぶりに顔を合わせた。
「ここに来るのも、明日で最後か…。」
沁々と感傷に浸っていると、里香と由香里が来た。
「雅文さん!久しぶりです!」
「おぉ!里香、由香里!久しぶりやな!」
募る話はさておき、ホームルームを済ませ、卒業式の予行演習を行う。予行が終わり、この日は午前中で終了。雅文は仕事のため、事務所へ行った。

 それから迎えた卒業式。最後の制服を着た一同に交じり、卒業式に参列する雅文。進路を決め、それぞれの道へと歩んでいく。雅文は探偵としての仕事が引き続きあるが、皆は大学や就職と様々である。卒業証書授与式が終わり、卒業式が終わった。教室に戻り、雅文は里香や由香里達と雑談していた。
「海外で特訓してたんですか!!凄いですね!!」
「まぁ、初めての海外やったけど、美夜子と玲奈ちゃんと一緒やったから大丈夫やったよ。」
「もしかして、美夜子さんとシタんですか~?」
「いや、してへんよ。」
それから最後のホームルームを終え、みんなで集合写真を撮った。こうして、雅文のback to schooldaysは完結した。この日は有給休暇なので、雅文は里香と由香里と行動を共にする。
「雅文さんに会えて良かったです。由香里を助け出してくれましたから。」
「由香里も、雅文さんに一生感謝します。」
「あぁ。ありがとう。私も女子校で、また学校生活を送れるなんて思いもしなかったから。」
学校に別れを告げ、神戸市内の公園でランチ。それぞれ手作りした弁当をいただく。
「いただきます。」
紺色のワンピース調の制服に身を包んだ里香と由香里。2人の胸元には卒業記念の花飾りがついていた。公園のベンチに座っていただく。今日は制服デートも兼ねて、夜まで一緒にいることにし、そのことは2人共両親に連絡済みで、雅文も2人に内緒で、卒業記念のスペシャルディナーの場所をセッティングしてある。
「雅文さん、あーん。」
「あ、あーん。」
おかずを食べさせあい、イイ感じになる。雅文も2人に食べさせてあげた。昼食を済ませ、神戸市営地下鉄から三宮駅に戻り、阪急電鉄 神戸三宮駅に移動した。
「この後の予定やけど、17時には三宮に戻るからね。今が14時やから、弾丸ツアーになるけど、どこか行きたい場所ある?」
「福原行こう!」
「由香里、私ら未成年やから…。」
「福原は無しな。」
「郊外に行きたいです。ポートアイランドとか…。」
「ポーアイか。よし、行こう!」
ポートライナーに乗り換え、ポートアイランドへ向かった。

 ポートアイランドは人口の島で、工業地帯の他、学校や博物館などが建ち並んでいる。3人が向かったのは、UCCコーヒー博物館。上島珈琲のUCCが運営する日本で唯一のコーヒーを専門とした博物館である。
「わー。珈琲の匂いする~。」
「エレガントな所ね。」
コーヒーにまつわる名言やコーヒーの豆が出来るまでなどを見学し、ゆったりとした時間を過ごした。夕方になり、3人はポートライナーで三宮へ戻り、雅文が予約した場所へ向かう。
「着いた。」
「うわー、スゴい!」
「リッチな所。」
ハーバーランドにあるホテルクラウンパレス神戸という高級なホテル。地下1階の中国料理 マンダリンコートに行き、円卓のある個室に案内された。格調高いレストランに2人はたじろぐ。
「何か、お高い所に来たみたい。」
「今夜は、ここで飲茶をしよう。」
「飲茶、めっちゃええやん!」
お茶で乾杯し、アラカルトの前菜盛り合わせ・フカヒレスープ・牛サーロインと季節野菜の炒めものをいただく。
「フカヒレ美味しいな。」
「デカい奴は、もっとするんちゃう?」
アラカルトを食べ終え、飲茶の点心をオーダーする。ここでは1回の注文で3品注文可能。人数分が来る。注文を済ませ、待ち時間は雑談に興じる。
「2人は進路決まったん?」
「私は、神戸大学に進学します。」
「由香里は、神戸学院大学に行くで。」
「ほうほう。無事に決まったんやな。良かった。」
2人から、年末年始の海外での特訓について質問された。
「台湾で逃走中ごっこやったり、香港で地図だけで目的地行ったり、中国で寒中水泳やったりと色々したで。」
「すごいですね。」
「中国で寒中水泳とか…。サブいやん…。」
注文した点心が来て、一同は舌鼓を打つ。小籠包を蓮華に乗せ、箸で皮を破り、熱いスープを啜る。中身を味わい、他には春巻きや海老蒸し餃子などをいただく。
「めっちゃ美味しい~!」
「雅文さん、香港で飲茶してたんですか?」
「まぁ。してたで。エビ餃子食うたしな。」
その後も点心をパクパクと食べ、最後の炒飯とデザートの杏仁豆腐も完食した。

 夜になり、ポートタワーとMOSAICの観覧車はライトアップされた。
「雅文さんと一緒にいれるのも、今日で最後か。」
「そうやな…。せやけど、LINEのグループはあるやん。」
「卒業旅行行きたいな。ゴールデンウィークに行こうや。」
3月は雅文は仕事があり、4月からは2人の大学生活が始まる。なので、ゴールデンウイークがチャンスなのである。
「行き先はどうする?由香里。」
「沖縄にしよ!海入れるし!」
沖縄と聞いて、雅文はあの夏のことが脳裏をよぎった。人魚の瑠華にまた会えるかもしれない、そんな淡い期待を抱いた。
「沖縄か、そうしよう。」
別れ際に、夜景をバックに2人にハグをした。駅まで送り、卒業式と制服デートは無事に終了した。
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