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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第131話 極寒の鍛練

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    1月6日、北京の朝は寒い。一同は公園で体操をし、朝食を済ませ、ホテルのロビーで待機。この日の特訓は、中国東北部のハルビンに移動して行う。李の人民解放軍時代の同僚で、現在ハルビンで探偵事務所を個人経営している遼(リャオ)の元で行う。引率として東北部出身の張水竜がつく。
「私の育ったハルビンは、今ものすごく寒いからな。心しておくように。」
張が雅文達に忠告する。ハルビン(哈爾浜)は、中国東北部の黒龍江省の省都で、冬が長く夏が短い。ロシアと国境を接しており、欧風建築がよく見られる。かつて満州国が置かれた時には、石井四郎率いる関東軍防疫給水部隊(731部隊)が本部を構え、人体実験を行っていた。1月のハルビンはマイナス13℃まで下がり、極寒である。マイクロバスで北京空港に行き、そこから飛行機でハルビンへ向かった。2時間後の午前11時、ハルビン太平国際空港に到着。遼が迎えに来てくれ、彼の事務所まで来た。
「寒い~!!」
「何か、ロシアっぽい建物がめっちゃある~!」
「ここは、昔、伊藤博文が安重根に暗殺されたというハルビンね。」
ハルビンは、黒龍江を隔てて、ロシアと接しており、西には内蒙古(ネイモンクー)自治区がある。東北地方は他に、吉林省・遼寧省があり、そこから南下すると、北朝鮮へ繋がっている。陳は、中国出身だが、温暖な広州なので、極寒の東北部は初めてであった。彼の事務所は、暖房が効いており、外にはサウナがついている。
「你好(こんにちは。)。日本からはるばる来てくださりありがとうございます。私は、遼京(中国語:リャオ・ジン 日本語:りょう・きょう)と申します。」
顎髭を伸ばし、髪を結わえた恰幅のいい男性。遼京は、1978年生まれの48歳。ハルビン出身で、李克と同級生である。中国人民解放軍で活動した後、アジアの様々な国や地域を旅して、識見を深めた。北朝鮮やアフガニスタンにも、足を運び、殺されそうになっても生き延びた強運の持ち主でもある。雅文達も自己紹介をし、遼が特訓内容を説明する。松花江で寒中水泳や、スターリン公園で宝探しを行う。北京から2時間かけて来たので、雅文達は空腹であり、時刻は12時。昼食をとりに行く。

 昼食に訪れたのは、スターリン公園に近い「宏鳴火鍋」(ホンミンフォグォ)という火鍋のお店。火鍋は、中国の鍋料理を指す。ここでは、火鍋の定番、鴛鴦鍋でハーフ&ハーフ、麻辣と白湯でいただく。上質なラム肉や牛肉などに舌鼓を打ち、身体も心も暖まる。腹ごしらえを済ませ、トレーニングを始める。スターリン公園の各所に、イースターエッグを隠してあり、雅文達には、公園のマップを渡し、それぞれ指定されたエリアでイースターエッグを探す。
「開始!!」
遼の号令で、宝探しを始める。マップを見ながら探す3人。スターリン公園は広い上に、1月のハルビンは氷点下まで下がり、寒さとの戦いにもなる。
「寒い~!!」
「早いところ、見つけないと…。」
台湾・香港での特訓で鍛えた成果を発揮して、3人共、制限時間内にイースターエッグを見つけ出した。

    次の特訓の前に、遼から水着を渡された。雅文のは、黒い男子用スクール水着で、美夜子と玲奈にも、同じくスクール水着。
「寒中水泳か。」
「黒龍江は、凍ってるからね。それに、ロシアの国境だから、迂闊に近づいたらいけない。そこで、松花江で寒中水泳をする。」
指定された場所で着替えて、準備体操を行う。
「この時点で寒いわね…。」
「早いところ、泳ぎたい。」
エリアを決め、そこまで泳ぐ。入る前に、遼が3人にお湯をかける。
「おぉー!!!」
「熱ぅ!!!!」
松花江に入る3人。スタートの合図で泳ぎ出す。ガイドとして、遼と陳がゴムボートで並走する。凍結してはいないが、氷点下に入る川はものすごく冷たく、止まると身体が震える。
(頑張ろう!!水が冷たい…。)
(まぁまぁ、距離あるわ。)
(寒い~!雅文さん、めっちゃ速いやん!)
途中、雪が降り出し、猛烈な吹雪に見舞われた。それでも、ゴールが目前だったので、3人は根性で泳ぎきり、猛ダッシュで遼が用意したサウナに入り、暖をとる。
「よし、いくぞ!!」
熱した石に、湯をかけ、強烈な熱気がサウナに充満する。
「あ~、熱いぐらいにあったかーい!!」
「吹雪いた時は、凍死するかと思ったわ。」
「オッパイ冷えすぎて、玲奈、乳首勃ってんねんけど…。」
その後、クールダウンをし、ハルビンでの特訓は終了。
「みんなよく頑張った!!日本での健闘を祈ってるよ。」
遼に感謝を伝え、ハルビンを後にした。飛行機に揺られること2時間。19時に北京に戻ってきた。夕食は、羊肉を香味野菜と共に鉄鍋で焼いたジンギスカンをいただく。寒さと疲労で消耗した身体に、塩分が染み渡る。
「羊、中々美味い。」
「特訓自体は、明日で最後だ。最後まで気を抜くなよ。」
「はい!!」
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