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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第90話 美ら海ハーレム

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    那覇空港に到着し、レンタカーを返却して、航空券を受け取る。荷物を送り、17時30分発の宮古島行きの飛行機に乗る。
「宮古島、人魚伝説がある場所ね。」
「人魚に会いたいな…。」
人魚に思いを馳せ、飛行機は宮古島へ向かう。エメラルドグリーンの海に、夕陽が映え、これからの展開を予想しているかのようである。

    宮古空港に到着し、レンタカーを借りて、宿泊先へ向かう。宮古空港周辺は畑があり、草原が広がる。
「空がめっちゃ広いな。」
「島の風景ね。 」
市街地へ出て、しばらく走ると、謎の人形が立っていた。
「何やアレ?」
「警官の格好してますね。」 
これは、「宮古島守くん」というキャラクターで、交通安全を呼び掛けている。宿泊先に到着。格安ホテルに3人で泊まる。客室に入り、まずは風呂に入ることにした。浴槽はあったが、お湯は溜めず、シャワーだけの使用。
「宮古島も、めっちゃ暑いな…。」
「南国やからね。」
汗ばんだカッターシャツを脱ぎ、ズボンとスカートをハンガーにかけて干す。3人一緒に入浴する。
「美夜子さん、汗でベタベタして脱ぎにくいから、脱がしてください~!」
「もうしょうがないわね。」
3人共、裸になり、シャワーを浴びる。雅文は浴槽に入って、頭と身体を洗う。美夜子と玲奈は、仲睦まじい様子で身体を洗い合う。
「何か、レズみたいになってるな…。」
目の前で裸になっている美夜子と玲奈の色気に、思わずたじろぐ雅文。雅文自身、玲奈の裸を見るのは、初めてである。雅文はドキドキしながら、頭と身体を洗う。
「玲奈ちゃん、オッパイ大きいな…。」
「雅文さん、赤くなってます?」
「玲奈ちゃん、背中流すから座って。」
美夜子と玲奈の城崎での女子旅で、SMごっこをし、レズのような関係が出来た。玲奈は年上だが、少し子どもっぽい所があり、美夜子に甘えている。髑髏城との戦いで負傷し、しばらく入院していたから、尚更、雅文と美夜子にベッタリしている。シャワーを済ませ、身体を拭いて着替え、3人は夕食に向かう。

    日中は、美夜子と玲奈が運転していたということもあり、夜は雅文が運転する。宮古空港周辺は畑が広がり、空も広く感じる。
「玲奈ちゃん、美夜子にめっちゃ甘えてたけど、入院生活が寂しかったん?」
「はい。夜の病院は暗いし、中々1人でトイレ行けへんかった…。後、入院中に知ったんですけど、髑髏城との戦い、雅文さんと美夜子さん大活躍してましたね!」
「まぁ…。私は記憶の断片のパズルを取り戻せたし、友達を救えたからな…。」
「雅文のおかげよ。」
しばらく走ると、風情ある感じのお店が見えた。
「ん?「「島おでん たから」」?どないする?行く?」
「夏場でも、鍋物は食べたいわ。行きましょう。」
「良さそうですね。」
駐車場に駐車し、店内に入る。
「いらっしゃい。」
エプロンをした、大きなお婆さんが出迎えてくれた。
「オジィ?」 
「お婆よ。」

    カウンター席に着き、まずは飲み物を頼む。車で来たのと、明日も調査と言うことで全員ウーロン茶。島おでん盛り合わせと、宮古島名物の宮古そば、沖縄料理のポーク玉子をオーダーした。雅文の左側に玲奈、右側に美夜子が座り、ちょっとしたハーレムのようである。
「両手に花みたいやな…。」
「雅文さん、イケてますね。」
「玲奈ちゃん、雅文の腕掴まないの。」
しばらくしていると、島おでん盛り合わせと宮古そばが来た。島おでんには、一般的なおでんの具の他に、豚足やソーキなどが入っている。宮古そばはあっさりした味わい。
「いただきます。」
おでんをシェアし、宮古そばと一緒にいただく。
「美味いな。あっさりしてて。」
玲奈は、雅文を見つめて、
「雅文さん、アーンってしますよ。」
「ええの?じゃあ、お言葉に甘えて…。」
沖縄名物のソーキを、玲奈に食べさせてもらう。
「美味いよ。」
「玲奈にも、アーンって、して♥」
雅文は、味の染みた煮卵を玲奈に食べさせる。流石に一口では難しく、取り皿に半分嚙み千切ったのを落として、口を押さえた。
「ハフハフっ、熱っ、熱っ…。」
その後、ポーク玉子が来た。ポーク玉子は沖縄発祥の料理で、缶詰のランチョンミート(スパムポーク)と卵を炒めたものである。初めて見た料理に、3人は舌鼓を打つ。
「ポークの塩分が、ちょうどいい。」
「ユニークで美味しいわ。」
3人の仲睦まじい様子を、微笑ましく見ていたお婆が口を開いた。
「そこのお兄ちゃんお姉ちゃん達、随分仲良しだねぇ。恋人かい?」
「私達は、神戸から来ました。探偵です。」
「探偵、カッコいいねぇ…。」
「恐縮です。マダム。」
「マダムって、アンタも好きねぇ…。」
雅文とお婆との会話に、美夜子も入る。
「お話し中、すいません。私も探偵をしております。桐島美夜子という者です。沖縄本島や宮古島に人魚伝説があると聞いたのですが、何かご存じですか?」
「人魚…。あぁ、いたね!確か1ヶ月前かね、人魚の謎を探る、と本島から来た人がいたね。」
有力な情報だと確信した美夜子は、今回の依頼のターゲットである我那覇弘毅の写真を見せた。
「それは、この方ですか?」
「あぁ、そうそう。この人さ。あれから全く音沙汰無しで、どうなったか分からんのよね…。」
「分かりました。ありがとうございます。」
宮古島のグルメを堪能し、情報を得た3人は店を後にし、1日目の調査は終了。

 7月22日(火)、調査2日目、美夜子は昨夜の調査結果を依頼人に電話で報告した。この日は、依頼人が高校時代に人魚を目撃したというパイナガマビーチに向かう。朝食を済ませ、レンタカーを走らせる。美夜子はサングラスをかけ、胸元を露出した服装で、快調に宮古島の道路を走る。
「海が綺麗ね。」
「人魚に出会いたいね。」
青い空、エメラルドグリーンの海と、南国の風景が3人の好奇心を駆り立てる。真夏の冒険の予感がしてくる。パイナガマビーチに到着。青い海、白い砂浜、これぞ南国である。午前中は、雅文は海に入らず、砂浜で人魚を探す。
「お待たせ、雅文。」
水着に着替えた2人に、雅文は思わず見とれた。美夜子は、白いビキニで、右の胸元に赤いハイビスカスが描かれている。玲奈は、白いレオタードで、横に青い線が描いてある。
「純白さが、海に映えるね。」
「雅文さん、照れてます?」
「玲奈ちゃん、海に入る前は準備体操よ。」
美夜子と玲奈は、海に入る前に準備体操をした。白い水着から、溢れんばかりの豊満な乳房と尻、引き締まったウェストと太もも、全てが調和した美しさに、雅文は息を飲んだ。
「モディリアーニの絵画みたいや…。」
その後、雅文は砂浜を歩き回って、人魚を探す。美夜子と玲奈は、南国の海を満喫。
「あ~、気持ちいい~!」
「楽しいわね。」
「玲奈ちゃん、もしかして雅文のこと、好きなん?」
「別に、そういう訳じゃな、きゃあ、冷たい~!」

 その頃、雅文は砂浜を歩いていた。人魚が本当に砂浜にいるのか、と半信半疑であった。暑い日差しが照り付け、頭がボーっとしかける。壊れた方位磁針を拾い集めている人間は、自分なのではないか、雅文はそう思った。
「暑いな。ん?」
目の前に、1人の少女が横たわっているのを見た。少女は裸で右足を怪我しており、鞄を肩にかけていた。
「大丈夫?」
雅文は、少女に駆け寄り、水を飲ませる。
「ん、ん…。」
少女は静かに、目を開けた。
「よかった。気が付いた。」
「お兄さん、誰?」
「私は、神田雅文。探偵さ。それより、足を怪我してるな。ちょっと待ってな。」
雅文はリュックから救急道具を取り出し、応急手当に当たる。右足の傷を止血し、包帯を巻く。
「大丈夫やな。」
「ありがとう。私は瑠華。よろしくね。」
あどけない丸顔、肩まで伸ばした黒い髪、豊満な乳房と尻、褐色に灼けた肌、雅文はひと夏のAngelに出会ったのでは無いのか、この娘が太陽のKomachi Angelか、と思うような色気が漂う。流石に裸では可哀そうなので、おんぶして美夜子達の元まで連れていく。
「誰、この子?」
「砂浜で怪我してたから、救護した。裸やから服着せたいんやけど…。」
「それやったら、玲奈のあるで。」
キャラクターものの下着を履き、半袖半パンを身に着けさせた。
「助けてくれた上に、服までありがとう。」
「いいってことよ。」
「私の名前は、瑠華。よろしくね。」
「ちょっと3人で写真撮らへんか?」
雅文は、海をバックに瑠華をセンターにして写真を撮る。
「ありがとう。」
「ありがとう。もう行かなきゃいけない。」
「瑠華ちゃん、これ持って行きな。」
雅文は、売店で買ったさんぴん茶とポーク玉子おにぎり、スパムおにぎりを渡した。
「ありがとう。」
瑠華は、それを鞄に入れ、そそくさと去っていった。その後、昼食を済ませ、雅文と美夜子が交代。着替えた美夜子は、砂浜でくつろぎつつ、今後の段取りを確認する。雅文と玲奈は海で遊んでいた。
(雅文と玲奈ちゃん、中々お似合いね…。)
「雅文さん、あの岩の裏まで行きます?」
「ああ、行ってみるか。」
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