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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第89話 南国大冒険

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    計画を練り、週明けの月曜日に沖縄へ向かうことが決定した。人魚の目撃情報が確認されたのは、宮古島なので、沖縄と宮古島の往復便のチケットも確保し、神戸から那覇までの航空券を手に入れた。調査に向かうのは、雅文・美夜子・玲奈の3人。

調査概要 行方調査
調査期間 2026年7月21日(月)~7月24日(木)
調査員 神田雅文
             桐島美夜子
             音無玲奈
成功・失敗条件・依頼人の友人の消息(生死問わず)を明らかにする。
                             ・人魚の存在を明らかにする。

調査報告は、依頼人とのスマホでやり取りする。調査費40万円を、移動費・滞在費などに充てる。4日間の調査の間、美夜子をリーダーにする。
「調査計画が決まったわ。」
「よし、これで行こうか。」
所長に調査計画を見せ、了承をもらい、調査開始日を迎えた。

    7月21日(月)、午前7時、3人は阪急電鉄 神戸三宮駅に集合。朝の通勤ラッシュなのか、駅構内は少し込み合っている。クールビズの服装で行き、ポートライナー 三宮駅に乗り換え、神戸空港へ向かう。雅文と美夜子は、半袖のカッターシャツにパンツスーツ、玲奈はスカートスーツ。
「暑いですね…。」
「玲奈ちゃん、沖縄はもっと暑いわよ。」
3人は、今回初めて沖縄に行くことになる。リーダーの美夜子は沖縄の道路地図を持ち、航空券も管理している。キャリーバックには着替えの他、リフレッシュで海に入るための水着も入っている。沖縄は、47都道府県で唯一、JRが走っておらず、地下鉄もないため。唯一存在している鉄道「ゆいレール」は那覇市と浦添市しか繋がっておらず、他の市町村へ行くには、専ら車が必要となる。神戸空港に到着し、搭乗手続きを済ませ、3人はソラシドエアの便で沖縄へ行った。

2026年7月21日(月)
神戸発那覇行 8:25発 10:30着

朝早かったのか、雅文と玲奈は機内で爆睡。美夜子は、この後の計画を入念にチェックしていた。
(到着したら、まずは琉球大学に行って、依頼人の恩師に聞き込み調査。人魚の目撃情報は、宮古島と言ってたわね。那覇から宮古島までの便は、夕方の一本ののみね。17時30分。それまでに情報を集める事ね。)
飛行機で空を旅すること2時間、那覇空港に着陸した。手荷物を受け取り、那覇空港から一歩外に出ると、太陽が照り付け、南国の陽気な雰囲気が漂う。
「来たかー!南国やな。」
「シーサーがいます。」
「さて、まずはレンタカー借りましょう。」
那覇空港近くで、レンタカーを借り、琉球大学のある中頭郡に向かう。那覇からレンタカーで県道を走る。3人全員、運転免許を持っており、この日はリーダーの美夜子が運転する。
「沖縄の眺めはいいわね。」
沖縄県の最大都市 那覇市を駆け抜ける。助手席には、玲奈が乗り、2人共サングラスをかけている。
「海が綺麗ですね~!!」
「エメラルドグリーンとは、よく言ったモンやね。」
運転中に、この日の計画を再確認。琉球大学の教授にアポイントを取っており、12時に会う約束をしている。那覇市・浦添市を通り、中頭郡に入り、琉球大学に到着した。受付を通り、来客として琉球大学に入る。教授は琉球大学人文社会学部琉球アジア文化学科に在籍し、琉球王国と中国王朝、日本との国際関係を研究している。

    研究室のドアをノックし、3人は中に入る。研究室には、数多くの琉球王国・中国王朝などに関する書物が本棚に並び、シーサーや竜の置物が置かれている。白シャツに黒ズボン、白髪雑じりのモジャモジャ頭のオジサンが、依頼人の恩師である。彼はテーブルに3人を着かせ、沖縄名物のさんぴん茶を出した。
「兵庫から、はるばる沖縄まで。めんそーれ。私は、琉球大学人文社会学部琉球アジア文化学科教授の東風平満春(こちんだ みつはる)と申します。」
美夜子と玲奈は、着用していたサングラスを外し、3人全員自己紹介。
「改めまして、中村探偵事務所から来ました桐島美夜子と申します。」
「同じく、神田雅文です。」
「同じく、音無玲奈です。」
教授は、さんぴん茶をグイッと飲み、3人を見つめて、口を開いた。
「ほうほう。随分とお若い方達だ。事情は電話で話してくれたから、理解しているよ。我那覇弘毅君のことだね。」
「はい。依頼人の金城浩二さんから聞きました。人魚を探しに行って、消息を絶ってしまったということです。」
「人魚…。あぁ!確かに、この辺りには人魚伝説があるよ。私も、琉球王国と中国王朝の国際関係を研究している中で、人魚のことも調べている。考古学の調査で、人魚が記したとされる書物が発見されている。」
話によると、人魚は琉球王国時代に発見され、中国王朝・日本などでも確認されていた。
「我那覇君は、大学卒業後に沖縄市立郷土博物館に就職したよ。その傍らで、人魚の研究や、宮古島の遺跡も調べていると言っていた。」
ここまでの話を、3人はしっかりとメモした。手がかりを得て、今日のやり取りはここで終了。
「探偵さん、滞在期間中はいつでもおいで。」
「ありがとうございました。」

    琉球大学を後にし、車で沖縄市へ向かう。美夜子はノートパソコンを立ち上げ、調査報告書を作成する。ここからは、玲奈が運転し、雅文が助手席に乗る。時刻は13時。
「どこか食事出来る場所…。あった!あそこ行く?」
「じゃあ、行きましょう。」
到着したのは、小さな食堂。駐車して、中に入る。お座敷の席に付き、注文を取る。3人にとっては、沖縄初のグルメである。
「沖縄は、南国やね。」
「玲奈ちゃんは、中国に行ったんやね?」
「はい。玲奈は、中国に留学してました。」
この話は、美夜子と玲奈の女子旅の際に出てきたものなので、雅文は知らなかった。
「玲奈ちゃん、中国行ってたんや。北京?上海?」
「厦門って、所です。途中、広州や香港も行きました。」
「香港か、ええな…。いつかは、中国も行ってみたいな…。」
そんな話をしていると、注文の品が来た。注文したのは、沖縄名物のソーキそばとゴーヤチャンプルー。ゴーヤチャンプルーは量が多いので、一皿をシェアする。
「いただきます。」
ソーキそばは、大きな豚肉の塊(ソーキ)が入っており、これは箸で崩せる程、柔らかく煮込まれている。肉の旨味が溶け出したスープは、暑さにやられた身体に染み渡る。
「美味いな。」
「ソーキは、この肉の塊のことね。」
ゴーヤチャンプルーは、ゴーヤの苦味が程よく、塩分も効いているのでパクパク食べられる。腹を満たした後、再び車を走らせる。美夜子を1度、那覇空港に送り、雅文と玲奈は、沖縄市を中心に聞き込み調査を行う。

    沖縄市立郷土博物館にて、聞き込み調査。沖縄には、古くから人魚伝説があり、宮古諸島には「ユナイタマ伝説」という神話がある。
「人魚ね…。」
「だが、人魚か思うたら、ジュゴンだった、ていうのもあったさー。」
沖縄近海には、ジュゴンが生息しており、ひょっとしたら、人魚だと思っていたのも、ジュゴンなのではないか、と言われている。その後も沖縄市で聞き込み調査を続け、情報を得られた。時刻は15時30分。美夜子のいる那覇空港へ向かう。
「情報は得られましたけど、人魚がホンマなのかは微妙でしたね…。」
「ジュゴンと人魚、間違えようないやん。ジュゴンは、哺乳類やん…。で、玲奈ちゃん、サングラスしてんの?」
「イケてる女って、感じを意識してます。」
助手席の雅文が、美夜子からのLINEを確認。17時30分の那覇発宮古島行きの航空券を確保、これから宮古島に向かうとのことだった。
「玲奈ちゃん、17時30分に飛行機出るから。この後、宮古島に行くって。」
「ブルーシールでアイス食べてから行きませんか?」
「持ち帰りやで。」
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