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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第84話 Boss Game

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    大幹部達を撃破し、残すは組長だけとなったGolden Tigerと髑髏城。時刻は21時になり、徐々にセンタープラザの被害状況も明らかになってきた。センタープラザ本館は3階が全焼し、2階も半焼、3階の連絡通路は焼け焦げた。センタープラザ西館も大幹部との戦いで、ゲームセンターが荒らされた。太鼓の達人の太鼓はもぎ取られ、UFOキャッチャーのガラスは割られ、他のゲーム機も破壊されていた。この戦いが終わった後も、本館3階と西館のゲームセンターの復旧作業などで、営業再開には3ヶ月はかかるだろう…。

センタープラザ西館 3階
松本孝一VS鬼塚虎吉
虎吉が雄叫びを挙げて、殴りかかる。孝一も挨拶代わりに拳に拳で返した。お互いの拳の衝撃が、手に伝わる。
「組長とだけあって、中々やるな…。」
「ハッ!お前もレジスタンスのリーダーだけはあるな…。」
挨拶を済ませ、激しい猛攻の応酬。1ヶ所に止まってはいるが、息もつかせぬ拳と蹴りの乱打で、床には血が飛び散る。
「んぁっ!!」
「やるな…。」
鼻血を流しながらも、孝一は余裕の笑みを浮かべる。黒豹の眼光は鋭い。

センタープラザ西館 2階
神田雅文・桐島美夜子
VS
大山田貫爾・菅沼拓郎
プロレススタイルで果敢に仕掛ける貫爾と、日本刀使いの拓郎に、雅文と美夜子は、防戦一方となっていた。
「ハッハッハッ!オラァ!!」
貫爾は、美夜子を担ぎ上げ、ボディスラムでクレーンゲームの台に叩きつけた。
「うぅ!!」
腰を強打した美夜子に、すかさずエルボードロップをかます。
「ハッハッハッ!何や張り合いないのう!!」
すると、クレーンゲームの陰から、雅文が拓郎目掛けてエアガンで狙撃した。
「ぐわぁ!!」
「拓郎!!!」
その隙に、雅文は美夜子をUFOキャッチャーの陰に引っ張った。
「ハァハァ…。容赦ないわね…。」
「美夜子、あの2人を引き離して、1対1の構図に持っていった方がええやろうな…。」
「そしたら、私があの刀を持っている男を、仕留めた方がいいかしら?」
「せやけど、アイツより組長のデカい奴を2人がかりで力合わせへんと、厳しいやろな…。」
そうこうしている間に、組長の貫爾が助走をつけて、UFOキャッチャーのガラスをドロップキックで蹴破り、ガラスの破片が2人を襲った。
「うわぁ!!」
UFOキャッチャーのガラスを突き破った貫爾は、美夜子にラリアットを食らわし、そのまま抱え込み、ガラスの破片目掛けて、パイルドライバーを決めた。
「あぁぁぁ!!!痛い!!!」
ガラスの破片が、美夜子の頭に突き刺さる。そこに拓郎がドロップキックで、雅文を蹴り飛ばす。
「くそっ!!」
エアガンで狙撃するも、軽くかわされ、貫爾に持ち上げられ、ジャイアントスイングで回され、クレーンゲームに投げつけられた。
「ハァハァ…。」
力の差を見せつけられ、苦戦する雅文と美夜子。
「ハッハッハッ!これやったら、ゲームしてる方がオモロイな!」
「組長、「「太鼓の達人」」しますか?」
「それは、ええな!」
2人は、勝った気になり、雅文と美夜子を放置して、太鼓の達人で遊ぶ。その間、雅文と美夜子は2人の目を盗んで、物陰に隠れて、作戦を練る。
「大丈夫か?美夜子…。」
雅文は、ゆっくりと美夜子の頭に刺さったガラス片を抜く。
「あうっ!ハァハァ…。反社会的勢力の組長とだけあって手強いわ…。」
「私から作戦がある。」

作戦
・髑髏城組長 大山田貫爾は大柄で、プロレス経験者。若者1人では太刀打ち出来ない。
・大山田貫爾と菅沼拓郎を引き離す。
・大山田貫爾には、2対1で応戦。タッグバトルの戦術で、交代交代で休みなく攻め立てる。
「成る程ね…。」
「あぁ…。まずはあの2人を引き離す。そうや!雫さんに電話してみるわ。」
雅文は自分のスマホで、雫に電話をかけた。
「はい。もしもし。烏丸雫ですけど。」
「雫さん、雅文です。陳さんに代わっていただきますか?」
「ええよ。」
陳に代わってもらう。
「もしもし。雅文君。何か困り事か?」
「陳さん、ちょっと力を貸して下さい。」
陳は、長年の経験からか、雅文の言いたいことをすぐに察した。
「分かった。場所はどこだ?すぐに向かう。」
場所と作戦を説明し、隠れながら、その時を待つ。そうとは知らず、組長と副組長は太鼓の達人に興じていた。
「ハッハッハッ!フルコンボや!!」 
「あの2人も、フルボッコですね!!」
そこに、陳が現れた。
「戦地でゲームとは、余裕だな…。」
「んっ?誰やお前?」
「ハァ!!」
陳は、拓郎に挨拶代わりの正拳をお見舞いした。
「ぐはぁ!!!」
「拓郎!!」
貫爾が呆気に取られている間に、雅文がエアガンで狙撃した。
「痛ぇ!!」
「さっきのお返しや!!」
上手く作戦通りに、2人を引き離すことに成功した。

センタープラザ西館 3階
松本孝一VS鬼塚虎吉
殴り合いで、互いの顔は腫れ、ふらついていた。
「ハァハァ…。俺はな、ヤクザの家に生まれたんや。この俺様がしくじる訳には行かへんのや!」
「ヤクザの家か…。お前はそれ以外の生き方は出来ひんかったんか?」
「ハァ?お前に何が分かるんやゴラァ!!」
激昂した虎吉は、再び殴りかかったが、ひょいとかわし、鳩尾に蹴りを入れた。
「かはぁ!!」
「そろそろ決着やな…。豹の方が虎より動きは速い。勝負はスピードが大事。」
構えに入り、孝一は精神統一して攻撃の準備をする。
「黒豹拳法!黒豹乱舞!」
目にも止まらぬ速業で、連続パンチと連続キックをお見舞い。
「ぶへっ!うごっ!!」
足元はふらつき、腹や胸を攻撃され、虎吉は弱る。
「おぉ!!」
「Golden Tigerは終わりや!!黒豹回し蹴り!!」
「ブホォ!!」
ジャンプして、虎吉の顔面に回し蹴りを食らわし、ノックアウト。

◯松本孝一VS鬼塚虎吉●

これにて、Golden Tigerは壊滅。里香と由香里、2人の少女の勇気ある行動が、反社会的勢力を壊滅させた。
「2人共、よく頑張ってくれた。」
「はい、私は由香里を救うためにやりました。」
「もう私が狙われることはないんやね?良かったぁ…。」
安堵した由香里は、涙を流して喜んだ。
「うん。もう大丈夫やで。由香里。」
そんな由香里を、里香は優しく抱き締めた。

センタープラザ西館 2階
陳青鴻VS菅沼拓郎
「私の名は、陳青鴻。台湾と香港で探偵をしていた。」
「フン、探偵風情が粋がるなやぁ!」
拓郎は日本刀を振り回して、襲いかかった。陳は軽くかわし、攻撃の軌道を読む。
「日本刀は振り回すだけでは、意味がない!」
蹴りで、日本刀を放させ、正拳をお見舞い。
「おぅ!!」
「フン、武器に頼った小物が…。」
拓郎は、陳に毒づいて、野望を語った。
「お前こそ、探偵のクセに反社会的勢力に喧嘩売りやがって!!いいか、俺達の野望は、関西の裏社会を制圧し、行く行くはアジアの麻薬取引の巨大なシンジゲートを築き上げることや!!オイ、ゴールデントライアングルって、知ってるか?」
「あぁ、東南アジアの麻薬密造地帯だろ。」
ゴールデントライアングルは、東南アジアのタイ・ミャンマー・ラオスが接するメコン川で接する山岳地帯で、かつては世界最大の麻薬密造地帯であった。現在、タイでは麻薬の密造は消滅したが、ミャンマーでは依然として密造が続いている。
「そのゴールデントライアングルを、日本を拠点に作り上げてやるんや。お前が探偵をやっていた香港は、昔イギリスの旧植民地やったやろ?香港が植民地になった発端は、アヘン戦争や!その時、植民地のインドと中国とイギリスの三角貿易があって、インドからのアヘン密輸に抗議した中国が、イギリスに挑んだ訳や、まぁ、近代兵器の前に木っ端微塵やったけどな!!ハッハッハッ!」
「旧態依然とした帝国主義的思想に凝り固まった哀れな者よ…。地獄へ葬ってくれよう!」
陳は素早い動きで、拓郎に中国拳法の乱舞をお見舞いする。
「ハイヤー!ハッ!ハッ!」
「うべっ!ごふっ!」
「重量拳!!」
体重をかけ、力を凝縮した拳を鳩尾に食らわした。
「ぐはぁ!!!」
「歴史の真似事をする者よ…。その当時の人間のイデオロギーを知らずに、表面だけ掬って、真似をして粋がるな!!」

◯陳青鴻VS菅沼拓郎●

髑髏城も残りは組長だけとなった。
「後は頼んだぞ。雅文君、美夜子ちゃん…。」
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