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第3章 back to school 青春の甘い楽園

第57話 崩れゆくドクロ

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    Golden Tigerの襲撃により、髑髏城は損害を被った。だが、すぐには反撃しなかった。6月中旬、髑髏城は第3支部(中央区)の手下が、Loft101の友梨亜にストーカーをしていた。
「へへへ、ボス。三宮のLoft101にこういう女の子がおるんですよ。」
兵庫区のゲームセンターの地下のアジトで、組長の大山田と談笑していた。手下はインスタントカメラで盗撮した写真を見せた。
「ほー…。上玉やな…。」
彼は、写真を手に取り、食い入るように見つめた。童顔・豊満な胸と尻、白いレオタードと三位一体の色気を感じさせる。
「その娘なんですけど、友梨亜って言うんですよ。」
「友梨亜、ハッハッハッ!!洒落た名前やのう。メキシコやコロンビアに住んでた頃は、ラテン系の姉ちゃんとヤリまくったわ。アイツらは胸も尻も、日本の女とは規格外。性欲も旺盛で、尻振って誘って来るからな。せやけど、この友梨亜って娘も悪くないな…。ハッハッハッ!バニーガールをしとるんやな?ええ女見つけたやないか!!」
組長は高笑いして、上機嫌な様子でジョッキに入ったコーラを飲み干した。
「この娘、必ずやGETして組長に差し上げます。」
「楽しみにしてるで。」

    髑髏城第3支部の手下は、友梨亜にストーカーをし、遂にご対面を果たした。梅雨時のジメジメと蒸し暑い夜、三宮の生田ロードの路地裏で帰宅途中の彼女を見つけた。
「ハッハッハッ!友梨亜ちゃ~ん、見っけ!」
ストーカーは2人組で、細身の男が前に出て、小太りの男はすぐ近くに駐車して待機。
「もしかして、貴方がストーカー?!」
「ハッハッハッ!友梨亜ちゃ~ん、力ずくで連れていくで~!!」
男は助走つけて、彼女に襲いかかったが、何者かに飛び蹴りされて吹き飛んだ。
「えっ…。」
「俺は、神田雅文。探偵や。そして、友梨亜ちゃんの騎手(ナイト)や。」
(雅文さん、カッコいい~!!)
ときめく友梨亜を尻目に、男は立ち上がり、ドクロの覆面を被った。
「どうや、お化けや、怖いやろー!!」
ナイフを持って、襲ってきたが、雅文はそれをかわし、みぞおちに蹴りを入れ、顔面にパンチを食らわした。
「あべし!!」
男はノックアウトし、警察に逮捕された。もう1人の小太りの男は、その場から逃げ切った。
「雅文とか言うんやな。探偵風情が喧嘩売ったら、どないなるか、思い知らせたろうやないな。」
後日、第3支部は友梨亜を誘拐し、雅文達を誘き寄せて、彼を仕留めた。
「ヤツは仕留めました。」
「ハッハッハッ!それだけやったんなら、即死やな!!」
髑髏城は、ここで雅文を殺したと思っていた。その間に、長田区にある支部も潰され、残る支部は第3、5、6支部だけとなった。7月の海開きを迎えた頃、組長は須磨区にある第5支部に第6支部のメンバーを集めて、作戦会議をした。
「G-Tiger5はここまで、東灘区・灘区・長田区の支部を潰して制圧した。ただのガキや思うて侮るな。」
話を聞いていた長髪の男性が口を開いた。
「へへへ、あのガキ共、叩っ斬って海に沈めてやりたいすわ。」
「アハハ、海の藻屑ね!」
長髪の男性は、髪を結い、侍のような出で立ち。パートナーの女性は、忍者服を軽装化した和風の服装。

第5支部隊長 河原林太郎丸
               副隊長 青葉凛子

「Hey Hey!Golden Tiger Fuc◯ you!!」
G-Tiger5を口汚く罵り、中指を立てる白髪交じりの金髪の男。右腕に黒い模様のタトゥーが彫られている。
「惨殺しても構へんよね。」
黒髪ショートで、黒いTシャツに黒のミニスカート、黒ブーツと黒ずくめの女性は、ボソッと呟いた。

第6支部隊長 ロバート・フォルチェ
               副隊長 今村奈央

作戦はこうだ。須磨区にて、第5・6支部連合軍を結成し、奴らを迎え撃つというもの。
「ハッハッハッ!今回は俺が指揮を執る。まずは、あのスカしたガキ共に痛い目遭わしたるわ!!」

    その頃、時を同じくして、大阪市の梅田・難波と続く主要エリア 新世界から少し離れた場所にあるGolden Tiger本拠地でも作戦会議が行われていた。
「ここまで東灘区・灘区・長田区を抑えた訳や。上出来やないか。」
組長に称賛されるG-Tiger5。若い男女5人の集団だが、半グレ組織にいたという経歴があり、それを見て、組長がスカウトした。
「髑髏城と大層な名前ですが、支部は枝葉末節に過ぎなかったです。」
礼儀正しい口調で、コーヒーを飲みながら落ち着き払って返答するサングラスをかけた男。彼は5人の中でリーダー格の大山太郎。腕っぷしがあり、喧嘩では1度に10人もなぎ倒したことがある。
「髑髏言うてましたけどー、大したことあらへんかったー!!」
金髪ショートのチャラチャラした感じの彼女は、福嶌つばき。かつて美人局で、裏社会を席巻した。
「ほうほう。まぁ、ここまで手中に抑えられたら、上等や。せやけど、流石にここまで暴れたら、兵庫県警に目をつけられるな。須磨区・垂水区を制圧する今回の作戦は、人数を減らそう。フットワークを軽くするんや。」
警察に目をつけられるのを回避するのと、万が一追われた時にすぐ逃げられるためにフットワークを軽くして、機動力を増す。
G-Tiger5のメンバーのうち、2人を行かせ、兵士も15人に減らし、計17人で乗り込む。
「須磨って言うたら、海水浴場あるとこやな。青い海を血に染めてやれ!!」

     7月下旬、梅雨が終わり、猛暑日が続いていた頃。G-Tiger5の面々は三宮から車で須磨を目指していた。
「ハッハッハッ!夏の海は楽しいやろな!」
金色のオープンカーの前には、G-Tiger5の2人が乗っており、後部座席には兵士2人乗っていた。後続には、大型のワゴン車が2台続いている。
「せやね。つばきはもう水着着てるで。」
助手席の彼女は、ゴールドビキニに身を包み、その上にカッターシャツを羽織っていた。
「気が早いな。」
黒髪をオールバックにし、電子タバコをふかして揚々と運転する男。彼は3番手の樹銀丈。元詐欺師で、一時は詐欺グループのリーダーを務めていた。すると、目の前に髑髏の旗を掲げた黒バイクの集団が現れた。
「んっ?」
彼らはまるで誘導しているかのように進み、それについていくと、須磨海水浴場に辿り着いた。真夏の海水浴場は、多くの若者らで賑わっていた。両者は駐車場に駐車した。彼らはG-Tiger5が到着したことを、組長に報告。
「お、到着したんやな?ハッハッハッ!よし、お前ら行くで。」
組長と隊長らは、先に海水浴場で待機し、海の家でくづろいでいた。不穏な集団が陣取り、酒をあおって、ガツガツと料理を食べていたということで、周囲から奇異な目で見られていた。食べ終えた食器と飲み終えたジョッキ、箸・スプーンなどを1ヶ所にまとめ、テーブルを拭いてから、海の家を後にした。

    腹ごしらえを済ませた彼らは、手下達と合流し、G-Tiger5を待つ。須磨海水浴場のJR須磨駅から少し離れたエリアへ移動し、両者が睨みあった。
「ハッハッハッ!俺は、髑髏城組長の大山田貫爾。俺の野望は、アジアの麻薬王になること。G-Tiger5言うたな?よくも、俺のシマを侵略してくれたなぁ?お前らだけでも潰したるわ!!」
「俺は、G-Tiger5の樹銀丈。元詐欺師や。コイツは相棒の福嶌つばき。幹部は俺ら2人で十分や。ココも手中に入れたるわ。」
「よし、かかれ!!」
両軍が入り乱れ、激しい戦闘が繰り広げられた。序盤は髑髏城が数で圧倒したが、Golden Tigerの兵士も持ちこたえ、前進と後退を繰り返して応戦。後退していき、多くの若者らで賑わうエリアまで下がった。
「よし、ここやったら、人込みに紛れ込める…。」
髑髏城もそれを追いかけ、激しい戦闘となる。若者達も彼らの存在に気づき、逃げ惑う。
「何か武器持ってる?!」
「ヤバい、ヤバい!」
幹部達も前に出る。拳銃による銃撃戦が繰り広げられ、逃げ遅れた若者が巻き込まれた。
「フフフ、私はクレイジー・スナイパーことロバート・フォルチェ。巻き込まれたヤツが悪いデ~ス!!」
「砂浜やから、隠れる場所があらへん…。」
撃たれた若者は、血を流して苦しむ。
「大丈夫か?」
「痛い、痛いよぉ…。」
息つく間もなく、再び襲ってくる。
「へへへ、俺は黒夜叉こと河原林太郎丸!刀相手にトンファーか?敵わへんやろ!」
「おっと!フフフ、ウチ舐めたらアカンで!」
この様子を見た、組長は重い腰上げて、猛ダッシュして敵兵をなぎ倒した。
「ぐわー!!」
「ハッハッハッ!敵兵だけでも皆殺しや!」
幹部らは兵士に狙いを定め、片っ端から襲撃した。刀や拳銃で攻撃され、一般人も巻き込まれ、辺りは血に染まった。襲撃された人達は、血を流して横たわり、騒然とした異様な雰囲気に包まれる。警察と救急が駆けつけ、この戦いも終わりを迎える。
「チッ!警察かいな!」
(警察か、よし、このドサクサに紛れて逃げられるで。)
「待てや、コラァ!!」
幹部は、警官も攻撃し、無差別に殺戮を繰り返した。
「逃げられへんよ!」
発砲した銃弾は、たまたま近くにいた女子高生に直撃した。
「あぁっ!!」
女子高生は血を流して倒れる。痛みで涙を流す。
「痛い、痛い…。」
「オイ、どこ狙ったんや…。」
「くっ、邪魔が入ったんや…。」
苦しみ悶え、白いビキニが血に染まる。友人が救急車を呼ぼうとする。
「させるか!!」
彼は、日本刀で斬りつけ、撃たれた女子高生を見下ろす。
「えっ!何で…。」
「へへへ、楽にしたるわ。」
「イヤァァァ!!!」
女子高生は、日本刀で切り刻まれ、出血多量で死亡した。

    この戦いの被害は甚大だった。

髑髏城
逮捕者 12人
死者 7人

G-Tiger5
逮捕者 3人
死者 12人

一般人
負傷者 38人
死者 20人

警察
負傷者 5人
死者 7人

髑髏城とG-Tiger5はその場から逃げ切った。G-Tiger5の幹部2人と兵士3人は何とか帰って来れた。
「よう帰って来た。悪いな、アイツらみくびってもうた…。」
組長の鬼塚は、戦力を整えたら、必ず髑髏城を叩き潰すことにした。一方、髑髏城はアジトで幹部らを集めて反省会。
「まぁ、あれだけダメージ与えたんや。ハッハッハッ!もう変な気は起こさへんやろ?」
夕方のニュースで、この一件が報道された。殺害した女子高生の母親が涙ながらに会見に応じた。
「一体あの娘が何したって言うんですか!犯人に言いたい、ウチの娘を、ウチの娘を返して~!!!!」
その様子を見て、組長が嘲笑する。
「ウチの娘を、ウチの娘を、か え し て~!!!」
「ダハハハハ!!!!」
「最高~!!」
「もう、どんだけ~!!!」
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