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第3章 back to school 青春の甘い楽園

第52話 凱旋

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    福岡爆徒との犬鳴山トンネルでの戦いも大詰め。警察には通報済みで、あと15分程でここに来る。裏切られたことに気づいた光輝・悠・京子は、幹部の麻帆と城太郎をKOし、残る幹部も謎の黄色いジャンパー男に倒された。福岡爆徒の残り兵力は、総長の金ゴリラと福崎の2人。由梨を人質に取り、心霊探偵 桐原と黄色いジャンパー男と睨み合っていた。

    黄色いジャンパーの男は、由梨を見て、口を開いた。
「由梨、久しぶりやけん!」
「あっ、お兄ちゃん?!助けに来てくれたと?!」
突然の告白に、福崎は戸惑った。
「あぁ?!どういうことやけん?!」
実は、由梨には、6歳年の離れた兄がおり、今回たまたま就職先の沖縄から、有給休暇を取って帰省していたのである。彼の名は、関谷京介。
「探偵さんの話は、聞いているけん。福崎と言ったと、よくも俺の妹にストーカーしてくれたけん。お前は、俺の空手で粉砕してくれよう。」
「くっ…。ハッハッハッ!!由梨を取り返したけりゃあ、まずは金ゴリラを倒してからや!」
そう言って、由梨の肩に手をかけて連れ去った。取り返そうとする京介の前に、金ゴリラが立ちはだかった。
「ここを通りきゃあ、俺を倒してからやけん。」
「くっ、1分で倒してやるけん!」
そこに、桐原が助っ人する。
「大丈夫。私が必ず取り返してくる。」
桐原が、福崎を追いかける。雅文達は撃破した幹部達が逃げないように、しっかりと目を光らせる。金ゴリラは力にモノを言わせたパワーファイトで、京介を追い詰める。
「ハッハッハッ!!どないしたと?逃げてばっかじゃ勝てんよ!」
京介は攻撃を避けて、避けて、避けまくって体力を消耗させる作戦に出た。金ゴリラに比べると、線は細いが、敏捷性と素早さに長けているため、相手を消耗させれば勝機が見えてくる。
「クソォ…。ちょこまかと。」
息切れして膝をつく金ゴリラに、涼しい顔で呟く。
「無駄な動きが、多すぎやけん。それで、金ゴリラ?お前は鈍ゴリラがお似合いやけん。」
その一言に、堪忍袋の尾が切れた金ゴリラは立ち上がって、雄叫びを上げて殴りかかった。
「誰が、鈍ゴリラじゃゴラァァァァ!!!!」
「フン、遅い、遅すぎると。」
京介は余裕でかわして、飛び上がって首筋目掛けて蹴りをお見舞いした。
「ぐわぁぁぁ!!!」
金ゴリラは一発KO。福岡爆徒の勢力は全滅。残りは福崎だけとなった。ちょうどその時、警察が駆けつけ、福岡爆徒の一派を全員逮捕し、光輝・悠・京子の3人は未成年ということで補導されることになった。

    その頃、由梨を人質に取り、逃げようとする福崎は乗ってきた車で逃走を図る。しかし、パトカーのサイレンが暗闇に鳴り響き、彼の顔に焦りが見えた。闇の中にそびえ立つ旧犬鳴トンネルが、まるで鬼が口を開けて待っているかのように見え、絶望と恐怖で背筋が凍り、冷や汗が背中を伝った。
「フフ、あの様子からしたら、福岡爆徒の連中は全員捕まったようやけんね。アンタも悪いことは言わんと。今からでも遅くないから、自首した方が良かと。」
自首を促す由梨に、福崎は最後まで虚勢を張って毒づく。
「ハァ?!お前が大人しく俺のモノにならんから、俺が無理矢理にでもゲットしようとして、こうなったけん。全部、お前のせいじゃゴラァァァァ!!!!!お前こそ、大人しく俺のモノになったら、見逃してやるけん。さぁ、由梨ちゃん、こっちへおいで~…。ハッハッハッ…。こっちへおいで~…。」
「呆れた…。どこまでも救いようのないクズやけんね。アンタは地獄がお似合いやけん。」
「あぁ?俺がクズやとゴラァァァァ!!!!!」
そう言うと、メリケリサックをはめた右手で由梨を殴った。胸ぐらを掴んで、額を何度も殴り付けた。
「ハァハァ…。テメェ、俺をクズ呼ばわりするなよ…。テメェなんかな、俺のオモチャなんだよ…。」
そこに桐原が駆けつけた。
「そこまでや。福崎、お前も大人しく観念すると。」
「ハァ?!お前は心霊探偵 桐原孝太郎やけんね。ハッハッハッ、幽☆遊☆白書やあるまいし、心霊探偵って笑わせてくれると!お前に何が出来んねん!!」
桐原は、怒りに震える由梨を見て、何か閃いた。
「福崎、貴様は彼女を怒らせたようやな。彼女から凄まじい怒りの念を感じる。生き霊として、その念を今ここに召還したら、貴様はもう終わりやけん。」
その言葉に、由梨も反応する。額から血を流していたが、怒りに満ちた目で、福崎を睨み付ける。
「やってくれたと、アンタ…。女の子ぶん殴るわ、自首しないわ、仲間裏切るわ、最低最悪のクズ野郎やけんね…。生き霊でも悪霊でも、何でも良かと。アンタに1発、制裁してやるっちゃん!!!!」
激昂した由梨に、桐原はそっと近づき、額に手を当てる。
「集中して。さぁ、出でよ!怒りの生き霊よ!」
念を送ると、由梨の身体から白装束を来た赤色の生き霊が抜け出た。生き霊は意思を持っており、自ら動いて喋ることが出来る。
「わっ、真っ赤やけん。これが生き霊?」
信じられない光景に、福崎は呆気にとられ、開いた口が塞がらなかった。
(ハァ?!何?幽☆遊☆白書の蔵馬のヤツ?)
生き霊は、福崎を睨み付けて口を開いた。
「さて、アンタだけは許さんと…。地獄よりも恐ろしいお仕置きをするっちゃん!!」
生き霊は、福崎の元に飛んでいき、挨拶代わりに正拳を食らわした。
「ぶへぇ!!」
更に、金的を食らわし、悶絶して蹲った所に背中に跨がり、逆エビ固めを決める。
「おぁぁぁ!!!!」
本体の由梨も駆け寄り、同じく背中に跨がってキャメルクラッチを決める。キャメルクラッチと逆エビ固めを同時に決められ、福崎は悶え苦しむ。
「ぐわぁぁぁ!!!」
「まだまだやけん、アンタのしたことはこんなモンやなか!!!」
(ラーメンマンみたいや…。)
技を解いて、立たせると、生き霊は福崎の身体の中に入り込み、意識を支配する。
「どうなっとると?!」
「フフフ、アンタの身体の中に入ったけん。」
その瞬間、内臓に激痛が走った。
「かはぁ!!!」
生き霊は、体内から直接、心臓や肝臓を強く握りしめ、胃腸に何発も蹴りを入れ、首筋に噛みついた。
「はがぁぁぁぁ!!!!」
青ざめて、唾液を垂れ流して悶絶する福崎に、由梨は毒づく。
「自分のしたことの罪深さが分かったと?女の子達に与えた苦しみが、どれ程のモンか…。アンタみたいなクズにつけられた心の傷は、中々消えんよ。一生反省すると!!!」
「ハァハァ…。分かった!分かったから!生き霊を出して、ハゥアァユゥゥゥゥ!!!!」
気が済んだのか、生き霊は身体から離れて消えた。青息吐息の彼の頭を掴んで、鳩尾を殴った。
「アンタだけは、許さんよ…。一生苦しんで死ね!!!!」
その後、福崎は逮捕され、この戦いは雅文達の勝利で幕を閉じた。

    福岡滞在最終日、この日の朝に雅文達は由梨の自宅に赴き、報酬30万円を貰った。
「本当にありがとうございました。」
「雅文君、ありがとう。会えて良かったけん。これからも探偵として頑張ってね。」
依頼を達成し、旧友を救えた雅文は満足げな笑みを浮かべた。
「あぁ、由梨ちゃんに会えて嬉しかった。また会おうね。」
それから、心霊探偵 桐原孝太郎にも挨拶した。
「昨夜はありがとうございました。」 
「あぁ、こちらこそ。雅文君と言ったね。中々強い男の子やけん。私は霊能力が使え、少し未来も見える。」
「未来予知…。」
「これから、反社会的勢力による裏社会の覇権争いが起こる。十分用心することやけん。」
雅文は、この一言に引っ掛かった。反社会的勢力による裏社会の覇権争い、昨夜、福岡爆徒が言っていた六凶と呼ばれる裏社会の列強、自分の青春の記憶を奪った髑髏城、JKビジネスの件で戦ったGolden Fruit一派、それらをパズルのピースのように繋ぎ合わせると、ある1つの絵が浮かんだ。
(まさか、この覇権争いって…。)
彼は妙な胸騒ぎを覚えた。これが伏線になると感じた。その夜、雅文達はフェリーで福岡を後にし、神戸に向かって帰路に着いた。
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