上 下
51 / 189
第3章 back to school 青春の甘い楽園

第50話 探偵VS暴走族

しおりを挟む
   その頃、時刻は23:00。由梨のバイト先で張り込み中の玲奈は、勤務終了の由梨が戻って来たのを機に、彼女を尾行する形で後を追った。ここまでは何も問題は無い。暫く張り込みを続けていると、彼女の背後にスキンヘッドの男が現れ、しつこく後をつけ始めた。
(もしかして、アイツがストーカー?)
不審に思い、玲奈も気づかれないように男の後をつける。もうすぐ日付が変わる時間。夜も更け、賑やかだった屋台村も今夜の所は店じまい。サラリーマン達も、帰路に着き、街全体が眠りについたような静けさに包まれた。人気のない通りを進んでいき、スキンヘッドの男は段々、由梨との距離を縮めて近づいていく。玲奈はポケットからスマホを取り出し、警察に通報出来るように体勢を整える。その時、男は由梨に駆け寄り、両手を広げて、がばっと抱き着いた。
「きゃっ!何ばしよっと!」
由梨は、護身術をかじっているので、男の脛を踵で攻撃。一瞬、手が緩んだ所で脱出した。
「フフフ、改めて見ると、中々、可愛い娘やね。大人しく、福崎さんのモノになるとね。」
「ハァ?誰があんな変態のモノになると!アンタはアイツの腰巾着やけん。」
威勢よく、啖呵を切る由梨。男は懐からナイフを取り出し、由梨に襲い掛かった。
「誰が、キンタ〇袋じゃ、ゴラァ!」
そこに、玲奈が助走をつけて飛び蹴りをかました。
「やぁ!」
「ぐあぁ!」
男はその場に倒れた。警察には通報済みで、後は逃亡を阻止しながら、守りを固めて時間を稼ぐ。男は立ち上がり、2人を睨みつける。
「オイ、テメェら…。俺のバックには「「福岡爆徒」」がおるけん。暴走族やけん。フフフ、お前らはタダではすまんからなあ!」
「「「福岡爆徒」」、暴走族か。ヤクザに比べたら、大したことあらへんやん。それとアンタ、よう見たら狸のキンタ〇やん…。ぷぷぷ…。」
玲奈に嘲笑され、男は怒りで顔が真っ赤になり、ナイフを振り回して暴れ回る。
「誰が、誰が、キンタ〇じゃあぁぁぁぁ!ポンポコポーン!」
「女の子相手に、ナイフば使わんと喧嘩出来ん奴がストーカーしとるやなんて、ホンマにプライドは無かと?」
「うるさい、黙れぇ!俺はキンタ〇やなか!俺はキンタ〇やなか!」
暴れまわる男の攻撃を避けている間に、警察が駆けつけ、警官に呆気なく取り押さえられた。
「23時36分、ストーカー並びに殺人未遂の現行犯で逮捕!!」
男は、逮捕され、そのままパトカーで連行された。
「あれが、ストーカー…。呆気なかったけん。」
「由梨ちゃん、これでまだ終わりやないと思うで…。」

    すると、そこにバイクに乗った若者が現れ、瞬く間に2人を取り囲んだ。
「何ばしよっと!」
「もしかして、コイツらが「「福岡爆徒」」?」
1台は、黒いバイクで特攻服を着た少年が運転し、その後ろに黒いスカジャンの少女が乗っている。もう1台は、紫色のバイクで装飾に骸骨の模型が飾られている。バイクは停車し、少年少女が降りてきた。
「一部始終見てたけん。やってくれたと!」
特攻服を着て、金髪で剃り込みを入れている少年が先陣切って現れた。
「貴方達が、「「福岡爆徒」」?」
「あぁ、俺は福岡爆徒のナイフ使いこと、相田光輝。」
スカジャンの少女も名乗る。
「同じく、霊感女子の神崎悠。」
骸骨バイクに乗っていた白装束の少女も名乗る。
「同じく、サイケギャルの曽山京子。」
3人は、由梨に目をつけ、狙いを定める。
「フフフ、由梨って言うたと?アレ貰うけん!」
そう言うと、悠は由梨に駆け寄り、髪の毛を1本抜き取った。
「な!」
「悠ちゃん、それちょうだい!」
京子に渡すと、持っていた藁人形に入れた。
「藁人形…。まさか!!」
「フフフ、ウチは呪い使えるんよ。」
「そして、私は霊感があって、幽霊見えるし、使えると。2人合わせて、ゴーストギャルズ!」
3人はバイクに飛び乗り、そのまま走り去っていった。

    その夜、福岡爆徒と福崎は、宮若市の犬鳴山にある旧犬鳴トンネルにいた。
「豆大福の奴め…。まぁ、良かと。由梨をここにおびき寄せる算段は充分やけん。その前に、やってもらおうか。」
京子は、白装束の他に、頭に三脚を逆さに被り、蝋燭をつけ、鏡を首にぶらさげ、金槌と五寸釘を持って現れた。
「京子ちゃん、相変わらず可愛いやん。」
「いえいえ、麻帆さんの方がセクシーですよ。」
幹部の一人 大牟田麻帆も、霊感が強く、幽霊を操ることが出来る。京子は、近くの木に、藁人形を当て、五寸釘を打ち付ける。
「関谷由梨、関谷由梨、貴様に災いをもたらす。呪われよ、呪われよ、呪われよ!」
その頃、由梨は自宅の部屋のベッドで眠っていた。青いネグリジェを着て、すやすやと眠る彼女に、呪いがかかり、突然の胸の痛みが襲う。
「うぅ!何と!痛い!」
まるで、心臓を直接掴まれているかのような痛みに襲われ、呼吸が乱れて、手足をばたつかせて苦しむ。
「痛い!痛い!まさか、さっきの…。丑の刻参りやとしたら…。呪いがかかっとると!」
その夜、由梨は呪いに苦しめられた。

    翌朝、窓の外では小鳥が鳴き、外から陽の光が差す。呪いに苦しめられた由梨は、虚ろな目で、ヨダレが垂れ、ネグリジェとベッドカバーが激しく乱れた状態で横たわっていた。
「ハァハァ…。」
呪いが解け、由梨はゆっくりと起き上がる。洗面所へ行き、歯を磨く。いつものようにシャワーを浴びて、着替えて学校へ行く。その頃、雅文達は福岡滞在3日目を迎え、今日は福岡爆徒の情報を探るのと、由梨の観察である。雅文は捜査の合間、文化祭の演劇の練習を公園でやっていた。
「会えて良かった。僕だけのシンデレラ、アァウ!!!」
「このダンスパート、最後の「「僕は嫌だ」」は私が言うんやね。」
昼間に、福崎が勤務している博多の繁華街を捜査していると、彼と福岡爆徒の総長と幹部らしき男女を発見。こっそり後をつけて、会話を盗聴器で盗聴する。
「そういうことか、とんでもない奴らやな。」
喫茶店に立ち寄り、ここまで得た情報を整理していると、カウンター席の横に1人の男性が座った。彼は髭を蓄え、端正な顔立ちで長身。黒いジャンパーを着て、緑のズボンという動きやすい服装をしている。彼は注文したエスプレッソを一口飲み、雅文の方を見つめて、話しかけた。
「君は、ひょっとして探偵か?」
「はい。私は神戸の中村探偵事務所で探偵をしております、神田雅文と申します。貴方は?」
雅文の自己紹介を聞き、彼は懐から名刺を取り出した。
「改めまして、私は心霊探偵 桐原孝太郎と申します。」
心霊探偵と聞き、雅文はどういうものなのか、と興味が湧いた。
「心霊探偵?もしかして、貴方は霊能力でも使えるんですか?」
「あぁ、私は幽霊が見えるし、一緒に戦うことが出来る。霊視で、人の行いを見て、事件を解決させてきた。悪党には、幽霊と共に鉄槌を下した。」
信じられないような話に、雅文は真摯に耳を傾けた。
「霊視…。守護霊見えますか?」
「あぁ。君の守護霊は、ほうほう探偵やけんね。中々、一流の探偵やったんやな。すごか。」
「はい、私の誇りです。」
ここから本題に入る。
「さて、君は「「福岡爆徒」」を追いかけるんやね?」
「はい。貴方もですか?」
「あぁ、私にある依頼が来てね。暴走族に絡まれた翌日から、呪いにかけられたという相談があり、それを調査して欲しいとの依頼やけん。」
「呪い?確か、玲奈ちゃんと雫さんが言っていたゴーストギャルズという、奇妙な女の子達やったな。」
「そう、そのゴーストギャルズやけん。その2人に関する調査もしとると。あの2人は一筋縄じゃいかんよ。もし、福岡爆徒と戦うことになるなら、私も力を貸す。」
「分かりました。連絡先です。」
連絡先を交換し、ひとまずやり取りはここで終了した。

    18時、由梨に手紙が来た。差出人は福崎。20時に犬鳴山の旧犬鳴トンネルに来い、とあった。雅文達に相談し、ひとまずは彼女1人で旧犬鳴トンネルに向かった。雅文達と孝太郎は、1度、神社でお祓いをしてもらう。
「旧犬鳴トンネル、アソコ呪われてるやん。」
「犬鳴村があったような、無かったような…。」
「皆、準備はいいな。」
20時、誰もいない不気味な静けさと暗さに包まれた旧犬鳴トンネル、かつて凄惨な殺人事件が起きたことで、心霊スポットとして名高い魔境である。恐怖で足がすくみそうになる由梨は、1人でトンネルへ向かう。地獄の門の如くそびえ立つ旧犬鳴トンネル、怨念が渦巻く。そこに黒服の福崎が現れた。
「フフフ、よう逃げんと来れたなぁ?由梨ちゃ~ん!!」
「相変わらず気持ち悪い男やけんね!!福岡爆徒とか言う暴走族なんかの力を借りんと、威張れんような奴が、何ばしよっとね!」
「フフフ、さぁ、出てこい!福岡爆徒!」
由梨の背後から爆音と共に、バイクが現れた。
「せからしかね、コイツらが福岡爆徒?」
福岡爆徒のメンバーは7人。総長らしき長い金髪の大男と、幹部3人。昨夜出会った3人。
「へー、この娘が由梨ちゃん?キミ可愛ぃ~ね~!!俺は小倉隼人、又の名を金ゴリラ!」
「フフフ、さぁ、お前ら。リンチパーティーの始まりやけん!由梨ちゃん、血祭りにしたるわ!」
そこに闇を裂くように、銃声が響いた。
「ちょっと、待った。パーティーに女の子1人だけやったら、物足りひんわな。お待たせ、シンデレラ。アァウ!!!」
決めポーズと共に、効果音も決まった。
「私は、心霊探偵 桐原孝太郎。霊魂がさ迷うな。お前達、鉄槌を下そう。」
雫と玲奈も、それなりの決めポーズをして登場。
「フフフ、バトル・ロワイアルやけんね。由梨ちゃんを奪い返しに来い!」
由梨は福崎と総長、幹部に包囲された。
「大丈夫、私が行こう。」
孝太郎が向かい、雅文達はゴーストギャルズと3対3の勝負となる。

    霊魂漂う旧犬鳴トンネル。ナイフ使いの相田は特攻服にナイフ二刀流、コイツは改造エアガンで何とかなりそう。問題はゴーストギャルズ。悠は幽霊使い、京子は呪い使い、オカルトな2人をどう倒すか。
「フフフ、さぁ、行くで。ガシャドクロ。」
骸骨を立たせると、悠が浮遊霊を憑依させた。すると、骸骨は独りでに動き出した。
「骸骨、動いた!」
白装束に身を包んだ京子は、金槌と藁人形を持ち、その背後には妖気が漂う。
「霊魂か、私には探偵の守護霊がおる。」
「呪いか知らんけど、やる時はやるで。」
「何か、昔の週刊少年ジャンプでこんな漫画あったな…。」
かつての「シャーマンキング」や「幽☆遊☆白書」を彷彿とさせる戦いとなりそう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

20BIRTHDAYーLimit

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

包丁一本 1(この家に生まれて)

青春 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:1

ダイアリー・ストーリー

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

王太子妃殿下の離宮改造計画 こぼれ話

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:422

真夏の夜に降りよる雪

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

問題の時間

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

【完結】君を守るのが俺の使命・・・2度は繰り返さない。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:653pt お気に入り:2,387

処理中です...