49 / 221
第3章 back to school 青春の甘い楽園
第48話 福岡ラブロマンス
しおりを挟む
痴漢は警察に任せ、3人は博多駅を後にした。JR博多駅は新幹線や地下鉄の路線などがあり、周辺にはJR博多シティ・キャナルシティ博多といった大型ショッピングモール、福岡有数の繁華街の博多・中州・天神がある。大阪が関西の盟主ならば、福岡は九州の盟主と言っても過言ではない。
「大都会やな…。」
「そうやな。」
「この後、どうします?」
現在の時刻は9:00。計画としては、福岡の滞在期間の目安は4日間。木曜日の夜にフェリーで、神戸に帰るというものである。最初にやることは、依頼人と探し人が通っていた高校に行って、聞き込み調査をすることである。3人は博多駅から、徒歩で福岡県立福岡高等学校を目指した。
「ビルがいっぱいやな。」
「雅文は、山か海が見えへんかったら、場所が分かりにくいんやろ?」
「まあ…。」
しばらく歩くと、福岡県立福岡高等学校に着いた。授業中ということもあり、校内は静かである。3人は受付を通り、来客として校内に入った。校長室に案内され、校長と対面した。雫は、先週金曜日に学校にアポイントメントを取っていた。
「お待ちしておりました。兵庫からはるばると福岡まで、お越しくださいまして、ありがとうございます。私が当校の校長 鈴木と申します。」
「お忙しいところ、ありがとうございます。私は中村探偵事務所で探偵をしております、烏丸雫と申します。」
「同じく、神田雅文と申します。」
「音無玲奈と申します。」
9月上旬で、夏休みが終わって2週間後という時期なので、まだまだ残暑が厳しく、校長室はクーラーがガンガンかかっていた。
「皆様が、お忙しいところ、福岡までお越しくださった案件とは一体?」
校長の質問に、雫が代表して答える。
「はい。先週金曜日に、探し人の依頼がありました。依頼人は、古賀和昭という20代の男性です。」
「和昭君?和昭君に会ったと?」
校長が、懐かしむような反応になり、少し興奮して前のめりになる。
「はい。彼は今、神戸の一貫樓で働いています。彼の話によりますと、実家のラーメン屋が新たに支店を出すということで、そこのスタッフを頼まれ、福岡に戻ることになったそうです。」
「ほー!そうかそうか!和昭君もそこまで腕上げたんやなー!元気そうで何よりやけん。」
「依頼としましては、彼の高校時代に付き合っていた彼女と今、連絡が中々つかず、探して欲しいというものです。彼女とは、高校卒業後に別の進路を歩んだので、そこで自然消滅してしまったのです。それでも、彼女と再会したら、また付き合うと約束を交わしたようで、福岡に戻った時に連絡が取り合えるようにして欲しいということで、今回ここに来ました。」
校長は落ち着いた様子で、ソファーに深く腰掛け、腕を組んで考え込んだ。
「探偵さんの依頼とはいえ、卒業生のその後は全て把握出来てる訳やなか。何ば手がかりはなかね?」
「手がかりはあります。彼女の名前は、関谷由梨です。」
「関谷由梨?あぁ!ちょっと待って欲しいけん!アルバムば持ってくると!」
校長は何かを思い出したようで、急いで席を立って、奥に向かった。同じように、雅文も何かを思い出したようだが、イマイチ記憶が曖昧で完全には思い出せない。
「関谷由梨…。何か小学生の頃に、会っていたような気がするんやけどな…。」
臨死体験で出会ったブラックピエロに、記憶のパズルを木っ端微塵に砕かれたせいで、10代の記憶がバラバラになってしまった。
「本人に会ったら、思い出すんちゃいます?」
「そうやな、玲奈ちゃん。会ったら、思い出せるかもな…。」
しばらくしていると、校長が戻ってきた。
「すいません。お待たせしました。」
アルバムを捲ると、クラス写真に依頼人の古賀和昭と関谷由梨が映っていた。
「これですね。」
「そうやけん。進路で言うと、関谷由梨は確か、福岡大学に進学したとか…。」
「福岡大学ですね?」
「そうやったと。」
関谷由梨が、高校卒業後に福岡大学に進学したということが分かり、手がかりを得られた。
「分かりました。お忙しいところ、ありがとうございました。」
「いえいえ、お役に立てて光栄でした。」
1日目にして、情報を得られ、大きく前進出来た。
3人は校長室を後にし、学校を出ようとした時、1人の女子が雅文の元に駆け寄ってきた。黒髪ボブの体操服姿の女子が来て、よく見ると、電車内で出会った娘であった。
「さっきは、助けてくれてありがとうございました。」
「あぁ、良いってことよ。そうや、まだ名乗ってへんかったわ。私は神田雅文。神戸で探偵をしております。」
「同じく、探偵で雅文君の上司の烏丸雫と申します。」
「同じく、探偵の音無玲奈です。」
「探偵さんやけんね。カッコ良か。どういう案件で、ここに来たと?」
「あぁ、探し人がいてね。関谷由梨っていう女の子や。」
その名前を聞いて、彼女は何かを思い出したように喋り出した。
「あっ、由梨お姉ちゃんを探しとーと?由梨お姉ちゃんは私の従姉妹やけん。私は関谷咲希って言うけん。お姉ちゃんの連絡先は知っとるけん。連絡しとくね。」
「あぁ、ありがとう。」
「授業が始まるけん。行くけんね。」
彼女を見送り、3人は学校を後にした。
時刻は11:00。ここで二手に分かれて別行動を取ることにした。雅文と玲奈は、探し人の関谷由梨の通う福岡大学に向かう。雫は、福岡市内のホテルを探して、泊まる所を確保する。スマホで連絡を取り合うことにし、二手に分かれた。福岡大学は、福岡市城南区七隈にあるため、博多駅から天神駅へ行き、地下鉄七隈線の天神南に乗り換え、福大前駅に向かい、そこから徒歩という行き方になる。博多駅から天神駅へ向かう。
「もうお昼ですね。お腹空きました。」
「そうやな。せやけど、まずは福岡大学に着くこと、昼食はそれからや。」
天神駅に着き、地下鉄七隈線天神南駅に乗り換える。昼から授業と思われる学生らが多く乗車し、電車内は少し混雑した。電車に揺られること、20分は経ったであろう。目的地の福大前駅に到着した。
「着いたで。」
2人は電車を降り、改札を出て、地上に上がった。時刻は12:20。昼食は、これから人に会うということで、匂いのキツいモノは無しにして、Starbucks Coffeeでサンドイッチをいただくことにした。
「STARBUCKSでランチって、洒落てますね。」
「あぁ、私も普段行かへんからね。」
ランチを済ませ、2人は福岡大学の受付を通り、来客としてキャンパスに入った。関谷由梨は、福岡大学大学院に在籍し、歴史学を専攻しているとのこと。
「大学院に通ってるんやね。雅文さんは、どこの大学に行ってました?」
「私は、神戸大学の文学部に通ってた。」
「文学、素敵ですね。」
広いキャンパスを歩き回り、中央図書館に辿り着いた。館内に入り、中を見渡すと、黒髪ショートの白いカッターシャツに青いスカートの女子がいた。写真と見比べ、彼女が関谷由梨であることが判明した。彼女は、歴史の本を読み漁り、研究をしていた。雅文はそっと近づき、同じように歴史の本を持って、彼女の真正面の席に着いた。彼女はどうやら、東アジア世界の近現代史や、日本の近代化とアジアとの国際関係について、まとめていた。
「福沢諭吉の「「脱亜論」」。よう見たら、失礼なことば言うとる。まあ、当時のアジア情勢見たら仕方なか。」
独り言を言い始めたので、雅文もそれに合わせて会話する。
「清王朝の朝貢・冊封も揺らいできてた訳やから、日本は清・朝鮮と連帯しようとしてたんやろ。」
「それば、意地張って断ったけん。清は老朽化して、「「東亜病父」」とまで言われたけん。」
「お嬢さん、中々博識やね。ちょっとよろしいでしょうか?」
「ウチは良かよ。授業は終わったし、今日はバイト休みやけん。」
雅文の隣に玲奈が来た。
「改めまして、私は中村探偵事務所の神田雅文と申します。」
「同じく、音無玲奈です。」
「雅文?あ、もしかして雅文君と?覚えとー?」
彼女は、雅文の名を聞いて、少し興奮気味になった。
「ウチは、関谷由梨と言います。雅文君とは、小学生の頃に同級生やったけん。」
小学生の頃は、神戸に住んでおり、雅文と同級生だった。父親の仕事の都合で、地元の福岡に帰郷。それから雅文とは会っていなかった。
「由梨…。何か思い出せそうな…。」
「雅文君、それはそーと、何の依頼と?」
「ああ、君を探している人がおって、その人に頼まれたんや。」
「色々話はあるけん。家に来ると?」
そう言われて、雅文と玲奈は彼女の家に行くことになった。彼女の家は、博多区から離れた中央区にある和風建築の庭付きの大きな豪邸であった。
家に上がり、リビングに行く。ソファーに座って向かい合う。
「コンビニで買ったモンやけど、どうぞ。」
福岡名物のマンハッタンというご当地パンで、チョコレートがかかったドーナツである。コップにミルクを注ぎ、おやつタイム。
「美味いね。関西では見かけへんやつやね。」
「これは、福岡名物のマンハッタンやけん。美味かよ。」
おやつタイムで和んだ所で、本題に入る。
「さて、今回ここに来たのは、由梨ちゃんを探しているという依頼があったからや。」
「誰が、ウチを探しとーと?」
「依頼人は、古賀和昭と言います。大学卒業後に、神戸の一貫樓に就職。近々、実家のラーメン屋が新たに支店を出すということで、福岡に帰郷するとのことです。その中で、高校時代に貴女と「「いつかまた会えたら、再び付き合いたい」」と約束を交わしていたそうです。」
高校時代の甘い恋愛の記憶が蘇り、由梨は感慨深い気持ちでいっぱいになった。
「そうやったと。約束覚えてくれてたんや。和君、元気にしてたと。良かったけん。」
雅文は玲奈に何かを伝え、玲奈は一旦、席を外して雫にここまでの話を、電話で報告した。束の間だが、雅文と由梨の2人きりとなった。
「久しぶりやけんね、雅文君。小学校以来やね。」
「由梨ちゃん、ちょっとまだ、思い出せへんよ。」
「あの雅文君が、探偵をやってるなんて、やっぱクールでカッコ良かよ。」
「まぁ、今は神戸で探偵やっとるよ。ちょっと、この間、反社に喧嘩を売って、ヘマしてヤられて死にかけた。」
「反社に?何ばしよっと!」
「それで、青春の記憶だけがバラバラになってしもうた。やから、当時やってたことをしたら思い出すかもしれへんかもな…。」
ここまでの話を聞いた由梨は、あることを考えついた。その前に、ある依頼をした。
「ここまでの話とは、別になるけん。雅文君、探偵として依頼に応じてくれると?」
「あぁ、私は探偵。依頼人の依頼には、全力で解決に挑む。」
「実は、最近、ストーカーされとるんよ。」
「ストーカー?」
和やかな空気から一転し、依頼が来たということで、雅文はピリッと引き締まり、メモ帳に熱心にメモを取る。
「3ヶ月くらい前になるけん。ある日、福岡大学の頃におった男の子に告白されたんよ。その子は、過去に問題起こして退学になったけん。それを理由に断ったら、どこで連絡先を入手したか知らんけど、無言電話や隠し撮りした写真が送られたりしたけん。」
「ほうほう。」
「やけん、そのストーカーを見つけて欲しいけん。」
「ストーカー対策やね、分かった。ただ、調査となると前金がかかるで。」
「そこは両親に相談すると。」
この場で、電話番号を控え、準備が出来たら、夜に伺うということになった。
「雅文さん、報告してきました。」
「ありがとう、玲奈ちゃん。ごめんやけど、依頼が来たから、それも伝えてくれる?」
依頼内容を伝え、再び玲奈は席を外した。
「雅文君、小学校時代にウチの家に遊びに来てたけん。夏には、お互いすっぽんぽんになって、庭で水浴びしたと。」
「あぁ、何か大きい家に遊びに行ったな…。水浴び…。何か思い出せそうな…。」
「言うても、あれやけん。庭に人が入れるだけのタライが2つあるけん。ちゃんと蛇口とホースも付いとる。9月やけど、まだ暑いやろ?」
「あぁ、福岡は暑いな。ちょうど水浴びしたいなと思ってた。」
「庭で準備するけん。その玲奈って娘も一緒に。」
そう言って、由梨は庭へ向かった。
雫に報告し終えた玲奈が戻ってきた。上司の雫は、依頼の解決と新たな依頼を引き受けたことを称賛していた。ホテルは既にチェックインしてくれた様で、JR博多駅周辺にあるとのこと。2人は用が済んだら、ホテルに向かうと、雫に伝えてある。
「玲奈、庭に行こうか。」
「この家、庭あるんですね。」
庭に向かうと、由梨がタライに水を張ってスタンバイしていた。縁側にバスタオルと、由梨のものと思しき着替えが置いてあった。
「お待たせ、一緒に入ると。」
3人は服を脱いだ。水浴びと聞いて、雅文の脳裏に昔の光景が思い浮かぶ。小学生だった頃、思春期に入りかけの少年少女のひと夏の甘い一時。由梨をチラッと見ると、その当時見た下着姿が蘇るが、あの頃とは異なり、少女から女の身体に変貌した様子に、思わずドキッとした。薄い水色の下着で、パンティーのお尻の所には、可愛らしいキャラクターのイラストがあった。
「あ、玲奈って言うたと?下着、同じ色やけんね。」
「ホンマや。玲奈とお揃いやん。」
下着を脱いで、3人共、全裸になった所で小さな桶に入った水を被ってから、大タライに入る。雅文が入った所に、由梨がタオルを絞って、身体を拭く。
「小学生の頃、思い出すけん。」
「あったな。何か思い出しそう。」
その様子を微笑ましそうに、見つめる玲奈。
「こんな時期、あったんや。」
同じように、由梨の身体を拭く雅文。互いに向かい合ったことで、雅文は由梨の身体をまじまじと見つめる。記憶にあった少女は、いつしか大人に成長し、豊満な身体と甘い色気を醸し出している。あどけなさの残る童顔、短い黒髪、ぷるんとした乳房、桃のような豊満な尻、引き締まった太ももと全てが調和し、美しさがある。
「由梨ちゃん、色っぽくなったな。」
「そう?雅文君も色気出てきとーよ。」
「ねえ、玲奈もやって~。」
居ても立っても居られない玲奈にも、同じように身体を拭いて上げ、最後はみんなで水遊び。
「思い出せたよ、ありがとう、由梨、ぷはっ、ちょ、まだ喋ってんのに!」
お返しに由梨にも、水をかける。
「やはっ、冷たい~。」
ぷるぷるの乳房とお尻に、水が滴り、絵になる。玲奈にも、水をかける。
「やん、冷たくて気持ちいい~。」
終わった後は、水を流して、タライを乾かす。バスタオルで身体を拭く。
「水浴び、どうやった?」
「楽しかったよ。玲奈ちゃん、めっちゃはしゃいでたな。」
「だって~、お庭で裸で水浴びとか、大人になってしたことないから、楽しかった~。」
あの夏の、ラブロマンス。
「大都会やな…。」
「そうやな。」
「この後、どうします?」
現在の時刻は9:00。計画としては、福岡の滞在期間の目安は4日間。木曜日の夜にフェリーで、神戸に帰るというものである。最初にやることは、依頼人と探し人が通っていた高校に行って、聞き込み調査をすることである。3人は博多駅から、徒歩で福岡県立福岡高等学校を目指した。
「ビルがいっぱいやな。」
「雅文は、山か海が見えへんかったら、場所が分かりにくいんやろ?」
「まあ…。」
しばらく歩くと、福岡県立福岡高等学校に着いた。授業中ということもあり、校内は静かである。3人は受付を通り、来客として校内に入った。校長室に案内され、校長と対面した。雫は、先週金曜日に学校にアポイントメントを取っていた。
「お待ちしておりました。兵庫からはるばると福岡まで、お越しくださいまして、ありがとうございます。私が当校の校長 鈴木と申します。」
「お忙しいところ、ありがとうございます。私は中村探偵事務所で探偵をしております、烏丸雫と申します。」
「同じく、神田雅文と申します。」
「音無玲奈と申します。」
9月上旬で、夏休みが終わって2週間後という時期なので、まだまだ残暑が厳しく、校長室はクーラーがガンガンかかっていた。
「皆様が、お忙しいところ、福岡までお越しくださった案件とは一体?」
校長の質問に、雫が代表して答える。
「はい。先週金曜日に、探し人の依頼がありました。依頼人は、古賀和昭という20代の男性です。」
「和昭君?和昭君に会ったと?」
校長が、懐かしむような反応になり、少し興奮して前のめりになる。
「はい。彼は今、神戸の一貫樓で働いています。彼の話によりますと、実家のラーメン屋が新たに支店を出すということで、そこのスタッフを頼まれ、福岡に戻ることになったそうです。」
「ほー!そうかそうか!和昭君もそこまで腕上げたんやなー!元気そうで何よりやけん。」
「依頼としましては、彼の高校時代に付き合っていた彼女と今、連絡が中々つかず、探して欲しいというものです。彼女とは、高校卒業後に別の進路を歩んだので、そこで自然消滅してしまったのです。それでも、彼女と再会したら、また付き合うと約束を交わしたようで、福岡に戻った時に連絡が取り合えるようにして欲しいということで、今回ここに来ました。」
校長は落ち着いた様子で、ソファーに深く腰掛け、腕を組んで考え込んだ。
「探偵さんの依頼とはいえ、卒業生のその後は全て把握出来てる訳やなか。何ば手がかりはなかね?」
「手がかりはあります。彼女の名前は、関谷由梨です。」
「関谷由梨?あぁ!ちょっと待って欲しいけん!アルバムば持ってくると!」
校長は何かを思い出したようで、急いで席を立って、奥に向かった。同じように、雅文も何かを思い出したようだが、イマイチ記憶が曖昧で完全には思い出せない。
「関谷由梨…。何か小学生の頃に、会っていたような気がするんやけどな…。」
臨死体験で出会ったブラックピエロに、記憶のパズルを木っ端微塵に砕かれたせいで、10代の記憶がバラバラになってしまった。
「本人に会ったら、思い出すんちゃいます?」
「そうやな、玲奈ちゃん。会ったら、思い出せるかもな…。」
しばらくしていると、校長が戻ってきた。
「すいません。お待たせしました。」
アルバムを捲ると、クラス写真に依頼人の古賀和昭と関谷由梨が映っていた。
「これですね。」
「そうやけん。進路で言うと、関谷由梨は確か、福岡大学に進学したとか…。」
「福岡大学ですね?」
「そうやったと。」
関谷由梨が、高校卒業後に福岡大学に進学したということが分かり、手がかりを得られた。
「分かりました。お忙しいところ、ありがとうございました。」
「いえいえ、お役に立てて光栄でした。」
1日目にして、情報を得られ、大きく前進出来た。
3人は校長室を後にし、学校を出ようとした時、1人の女子が雅文の元に駆け寄ってきた。黒髪ボブの体操服姿の女子が来て、よく見ると、電車内で出会った娘であった。
「さっきは、助けてくれてありがとうございました。」
「あぁ、良いってことよ。そうや、まだ名乗ってへんかったわ。私は神田雅文。神戸で探偵をしております。」
「同じく、探偵で雅文君の上司の烏丸雫と申します。」
「同じく、探偵の音無玲奈です。」
「探偵さんやけんね。カッコ良か。どういう案件で、ここに来たと?」
「あぁ、探し人がいてね。関谷由梨っていう女の子や。」
その名前を聞いて、彼女は何かを思い出したように喋り出した。
「あっ、由梨お姉ちゃんを探しとーと?由梨お姉ちゃんは私の従姉妹やけん。私は関谷咲希って言うけん。お姉ちゃんの連絡先は知っとるけん。連絡しとくね。」
「あぁ、ありがとう。」
「授業が始まるけん。行くけんね。」
彼女を見送り、3人は学校を後にした。
時刻は11:00。ここで二手に分かれて別行動を取ることにした。雅文と玲奈は、探し人の関谷由梨の通う福岡大学に向かう。雫は、福岡市内のホテルを探して、泊まる所を確保する。スマホで連絡を取り合うことにし、二手に分かれた。福岡大学は、福岡市城南区七隈にあるため、博多駅から天神駅へ行き、地下鉄七隈線の天神南に乗り換え、福大前駅に向かい、そこから徒歩という行き方になる。博多駅から天神駅へ向かう。
「もうお昼ですね。お腹空きました。」
「そうやな。せやけど、まずは福岡大学に着くこと、昼食はそれからや。」
天神駅に着き、地下鉄七隈線天神南駅に乗り換える。昼から授業と思われる学生らが多く乗車し、電車内は少し混雑した。電車に揺られること、20分は経ったであろう。目的地の福大前駅に到着した。
「着いたで。」
2人は電車を降り、改札を出て、地上に上がった。時刻は12:20。昼食は、これから人に会うということで、匂いのキツいモノは無しにして、Starbucks Coffeeでサンドイッチをいただくことにした。
「STARBUCKSでランチって、洒落てますね。」
「あぁ、私も普段行かへんからね。」
ランチを済ませ、2人は福岡大学の受付を通り、来客としてキャンパスに入った。関谷由梨は、福岡大学大学院に在籍し、歴史学を専攻しているとのこと。
「大学院に通ってるんやね。雅文さんは、どこの大学に行ってました?」
「私は、神戸大学の文学部に通ってた。」
「文学、素敵ですね。」
広いキャンパスを歩き回り、中央図書館に辿り着いた。館内に入り、中を見渡すと、黒髪ショートの白いカッターシャツに青いスカートの女子がいた。写真と見比べ、彼女が関谷由梨であることが判明した。彼女は、歴史の本を読み漁り、研究をしていた。雅文はそっと近づき、同じように歴史の本を持って、彼女の真正面の席に着いた。彼女はどうやら、東アジア世界の近現代史や、日本の近代化とアジアとの国際関係について、まとめていた。
「福沢諭吉の「「脱亜論」」。よう見たら、失礼なことば言うとる。まあ、当時のアジア情勢見たら仕方なか。」
独り言を言い始めたので、雅文もそれに合わせて会話する。
「清王朝の朝貢・冊封も揺らいできてた訳やから、日本は清・朝鮮と連帯しようとしてたんやろ。」
「それば、意地張って断ったけん。清は老朽化して、「「東亜病父」」とまで言われたけん。」
「お嬢さん、中々博識やね。ちょっとよろしいでしょうか?」
「ウチは良かよ。授業は終わったし、今日はバイト休みやけん。」
雅文の隣に玲奈が来た。
「改めまして、私は中村探偵事務所の神田雅文と申します。」
「同じく、音無玲奈です。」
「雅文?あ、もしかして雅文君と?覚えとー?」
彼女は、雅文の名を聞いて、少し興奮気味になった。
「ウチは、関谷由梨と言います。雅文君とは、小学生の頃に同級生やったけん。」
小学生の頃は、神戸に住んでおり、雅文と同級生だった。父親の仕事の都合で、地元の福岡に帰郷。それから雅文とは会っていなかった。
「由梨…。何か思い出せそうな…。」
「雅文君、それはそーと、何の依頼と?」
「ああ、君を探している人がおって、その人に頼まれたんや。」
「色々話はあるけん。家に来ると?」
そう言われて、雅文と玲奈は彼女の家に行くことになった。彼女の家は、博多区から離れた中央区にある和風建築の庭付きの大きな豪邸であった。
家に上がり、リビングに行く。ソファーに座って向かい合う。
「コンビニで買ったモンやけど、どうぞ。」
福岡名物のマンハッタンというご当地パンで、チョコレートがかかったドーナツである。コップにミルクを注ぎ、おやつタイム。
「美味いね。関西では見かけへんやつやね。」
「これは、福岡名物のマンハッタンやけん。美味かよ。」
おやつタイムで和んだ所で、本題に入る。
「さて、今回ここに来たのは、由梨ちゃんを探しているという依頼があったからや。」
「誰が、ウチを探しとーと?」
「依頼人は、古賀和昭と言います。大学卒業後に、神戸の一貫樓に就職。近々、実家のラーメン屋が新たに支店を出すということで、福岡に帰郷するとのことです。その中で、高校時代に貴女と「「いつかまた会えたら、再び付き合いたい」」と約束を交わしていたそうです。」
高校時代の甘い恋愛の記憶が蘇り、由梨は感慨深い気持ちでいっぱいになった。
「そうやったと。約束覚えてくれてたんや。和君、元気にしてたと。良かったけん。」
雅文は玲奈に何かを伝え、玲奈は一旦、席を外して雫にここまでの話を、電話で報告した。束の間だが、雅文と由梨の2人きりとなった。
「久しぶりやけんね、雅文君。小学校以来やね。」
「由梨ちゃん、ちょっとまだ、思い出せへんよ。」
「あの雅文君が、探偵をやってるなんて、やっぱクールでカッコ良かよ。」
「まぁ、今は神戸で探偵やっとるよ。ちょっと、この間、反社に喧嘩を売って、ヘマしてヤられて死にかけた。」
「反社に?何ばしよっと!」
「それで、青春の記憶だけがバラバラになってしもうた。やから、当時やってたことをしたら思い出すかもしれへんかもな…。」
ここまでの話を聞いた由梨は、あることを考えついた。その前に、ある依頼をした。
「ここまでの話とは、別になるけん。雅文君、探偵として依頼に応じてくれると?」
「あぁ、私は探偵。依頼人の依頼には、全力で解決に挑む。」
「実は、最近、ストーカーされとるんよ。」
「ストーカー?」
和やかな空気から一転し、依頼が来たということで、雅文はピリッと引き締まり、メモ帳に熱心にメモを取る。
「3ヶ月くらい前になるけん。ある日、福岡大学の頃におった男の子に告白されたんよ。その子は、過去に問題起こして退学になったけん。それを理由に断ったら、どこで連絡先を入手したか知らんけど、無言電話や隠し撮りした写真が送られたりしたけん。」
「ほうほう。」
「やけん、そのストーカーを見つけて欲しいけん。」
「ストーカー対策やね、分かった。ただ、調査となると前金がかかるで。」
「そこは両親に相談すると。」
この場で、電話番号を控え、準備が出来たら、夜に伺うということになった。
「雅文さん、報告してきました。」
「ありがとう、玲奈ちゃん。ごめんやけど、依頼が来たから、それも伝えてくれる?」
依頼内容を伝え、再び玲奈は席を外した。
「雅文君、小学校時代にウチの家に遊びに来てたけん。夏には、お互いすっぽんぽんになって、庭で水浴びしたと。」
「あぁ、何か大きい家に遊びに行ったな…。水浴び…。何か思い出せそうな…。」
「言うても、あれやけん。庭に人が入れるだけのタライが2つあるけん。ちゃんと蛇口とホースも付いとる。9月やけど、まだ暑いやろ?」
「あぁ、福岡は暑いな。ちょうど水浴びしたいなと思ってた。」
「庭で準備するけん。その玲奈って娘も一緒に。」
そう言って、由梨は庭へ向かった。
雫に報告し終えた玲奈が戻ってきた。上司の雫は、依頼の解決と新たな依頼を引き受けたことを称賛していた。ホテルは既にチェックインしてくれた様で、JR博多駅周辺にあるとのこと。2人は用が済んだら、ホテルに向かうと、雫に伝えてある。
「玲奈、庭に行こうか。」
「この家、庭あるんですね。」
庭に向かうと、由梨がタライに水を張ってスタンバイしていた。縁側にバスタオルと、由梨のものと思しき着替えが置いてあった。
「お待たせ、一緒に入ると。」
3人は服を脱いだ。水浴びと聞いて、雅文の脳裏に昔の光景が思い浮かぶ。小学生だった頃、思春期に入りかけの少年少女のひと夏の甘い一時。由梨をチラッと見ると、その当時見た下着姿が蘇るが、あの頃とは異なり、少女から女の身体に変貌した様子に、思わずドキッとした。薄い水色の下着で、パンティーのお尻の所には、可愛らしいキャラクターのイラストがあった。
「あ、玲奈って言うたと?下着、同じ色やけんね。」
「ホンマや。玲奈とお揃いやん。」
下着を脱いで、3人共、全裸になった所で小さな桶に入った水を被ってから、大タライに入る。雅文が入った所に、由梨がタオルを絞って、身体を拭く。
「小学生の頃、思い出すけん。」
「あったな。何か思い出しそう。」
その様子を微笑ましそうに、見つめる玲奈。
「こんな時期、あったんや。」
同じように、由梨の身体を拭く雅文。互いに向かい合ったことで、雅文は由梨の身体をまじまじと見つめる。記憶にあった少女は、いつしか大人に成長し、豊満な身体と甘い色気を醸し出している。あどけなさの残る童顔、短い黒髪、ぷるんとした乳房、桃のような豊満な尻、引き締まった太ももと全てが調和し、美しさがある。
「由梨ちゃん、色っぽくなったな。」
「そう?雅文君も色気出てきとーよ。」
「ねえ、玲奈もやって~。」
居ても立っても居られない玲奈にも、同じように身体を拭いて上げ、最後はみんなで水遊び。
「思い出せたよ、ありがとう、由梨、ぷはっ、ちょ、まだ喋ってんのに!」
お返しに由梨にも、水をかける。
「やはっ、冷たい~。」
ぷるぷるの乳房とお尻に、水が滴り、絵になる。玲奈にも、水をかける。
「やん、冷たくて気持ちいい~。」
終わった後は、水を流して、タライを乾かす。バスタオルで身体を拭く。
「水浴び、どうやった?」
「楽しかったよ。玲奈ちゃん、めっちゃはしゃいでたな。」
「だって~、お庭で裸で水浴びとか、大人になってしたことないから、楽しかった~。」
あの夏の、ラブロマンス。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
Strawberry Film
橋本健太
現代文学
「写真と言うのは、人の人生の中の、ほんの少しの断片を切り取ったもの。後で見た時に、美しいと思えるようにするもの。カメラマンっていうのは、そういう仕事さ。」
その一心で、ある時はグラビア専門のカメラマンとして、何人もの少女の写真を撮り、イメージビデオ作成に貢献し、写真集も出した。またある時はジャーナリストとして、海外に赴き、テレビで放送されない真実を撮影し、報道してきた。いつしか大物になった彼は、地元の京都に芸能事務所 Strawberry Milkを立ち上げ、多くの夢見る少女達の背中を押し、才能を引き出して、花を咲かせた。
この物語の主人公 香塚 薫(1974~2019)は、京都府出身のカメラマンである。これは、彼の生涯と彼が遺した写真集やイメージビデオ、また、撮影してきたものにまつわる物語である。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
☆みのる的お気に入り小説☆
みのる
大衆娯楽
相当限られてくるのですがね…(ド滝汗)
かつて全くもって本を読まないみのるが(珍しく他のお方の)小説を読んで!勝手に紹介致します。
申し訳ございませんが、敬称略です。
これからいろいろ増えるといいなぁ……
※タイトル等に間違いがございましたらば
申し訳ございませんm(_ _)m
※※尚、様々な事情により閲覧出来なくなっている作品もございます。
ご了承くださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる