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第3章 back to school 青春の甘い楽園

第38話 取り越し苦労

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    バニーガールと戯れながらも、しっかりとターゲットを監視し、お尻の尻尾に仕掛けた盗聴器で会話を録音している。
「あの、ゆりあちゃんは人気なのかい?」
「はい、ゆりあは人懐っこくて優しい娘やから、お客さんに可愛がられてますよ。」 
「可愛いし、ムチムチな身体してるなぁ…。」
ターゲットの下を離れ、席を立つゆりあちゃん。白いレオタードに身を包み、頭には白いウサギの耳の被り物、網タイツをしている。あどけない丸顔に、ぷるんと膨らんだ胸と桃のような豊満な尻、タイツがはち切れんばかりの太ももと全てが調和し、絶妙な黄金比が出来上がっている。ゆりあちゃんが移動したので、雅文もそっと背後に近づき、お尻の尻尾に仕掛けた盗聴器をサッと回収した。ゆりあちゃんが雅文の下へ来たので、少し話をする。
「こんばんは~、楽しんでますか?」
「あぁ、可愛いバニーガールに会えて嬉しいよ。ところで、さっき彼と何を話してたん?」
「えっ…。別に、ただの身の上話ですよ…。」
「そうか。」
しばらくした後に、2人は店を出た。
「ありがとうございました!!」
「また会えそうな気がするな。good-bye、バニーガール…。」
そう言って、ゆりあちゃんの頭を優しく撫でた。
「雅文さん、カッコいいですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「ええよ、素敵な女の子やね、ゆりあちゃん🖤」
ポッと照れながらも、2人を見送る。
「ありがとうございました!!」
(カッコいい…。はぁ、また会いたいな…。)
ゆりあちゃんは、赤面してボーッとしていた。

    情報を入手した2人は事務所に戻り、明日の計画を立てる。
「情報は手に入れた。明日の午後に依頼人を呼んで、話をしよう。」
「そうやね、雅文さん。盗聴器はちゃんと録音されてるん?」
「そうやな、ちょっと点けるわ。」
盗聴器を再生すると、店の音楽が流れ、数秒後に2人の会話が再生された。
「大丈夫や、問題ない。」
会話を停止し、電源を落とす。時刻は20:30。所長達は帰宅していた。
「さて、今日はこの辺にして、明日のことは明日やろう。遅くまでありがとう。」
「いえ、Loft101楽しめましたから、ありがとうございました。」
この日の仕事は、ここで終了。2人は帰路に着いた。

    翌日、出勤した2人は朝礼後に各々の席に着いて仕事を始める。昨日休んでいた美夜子が出勤し、玲奈は改めて挨拶した。
「おはようございます!」
「おはよう。玲奈ちゃん、雅文との仕事はどない?」
「はい。上手くいってます。」
「そう、頑張ってね。」
それから2人は、昨夜訪れたLoft101で使用した盗聴器を再生する。

Loft101にて、ターゲットとゆりあちゃんの会話
ターゲット「ゆりあちゃん、お店の1番人気やねんな。ホンマに可愛いな~!」
ゆりあ「いや~、照れますよぉ…。」
ターゲット「可愛いよ、うさぎちゃん🖤」
ゆりあ「いやや~、うさぎちゃんやなんて…。」

ここまでは、ガールズバーでよく見かける客と女の子との会話。
「普通の会話やな…。浮気してる感じはあらへんな。」
「ただの友達関係?」
 
ターゲット「俺ね、ゆりあちゃんのこと気に入ったよ。やから、何か悩みごとがあったら言ってくれへん?力になるで。」 
ゆりあ「えっ…。いいんですか?」
ターゲット「ええよ。」

「悩み相談?」 
「これは気になりますね。」
ここからの会話を、2人は注意深く聴く。

ゆりあ「実は、最近、お店に来たお客さんが私に執拗に絡んでくるんですよ…。」
ターゲット「ほうほう。」
ゆりあ「黒いドクロTシャツ着たオッサンで、私のことヤラしい目で見てきて、わざとオッパイやお尻触ってきたし、私のこと、ストーカーしてるんちゃうかなって、思って…。」
ターゲット「ストーカー…。どういうことされたん?」
ゆりあ「私のことを、隠し撮りした写真を送って来たり、後をつけて来たり、家の前に箱が置いてあって、中見たらHな感じの下着が送られてきたんですよ…。」
ストーカーに怯えて、声が震えるゆりあちゃん。
ターゲット「それは許せへんな。せやけど、警察は事件性無かったら、動かれへんし、まだ証拠も不十分や。まずは探偵に依頼して、調査してもらう方がええな。」

ここまでの会話で分かったことは、浮気ではないということである。ターゲットは、ゆりあがストーカーを受けて困っているという相談を受け、何とかしようと考えているだけであった。
「浮気ではないな、あくまで相談に乗っているだけや。」
「それにしても、あの可愛いゆりあちゃんがストーカーされてるって、可哀そうやな…。犯人のオッサン、キモいわぁ…。」
「それも何とかしてやりたいところやな。まずは、この調査結果の報告や。」
そう言って、雅文はデスクに着いて、パソコンを立ち上げて報告書を作成し、玲奈は今日の計画についてまとめる。

 夕方、依頼人を事務所に呼び、調査結果を伝える。
「本日は、事務所にお越しいただきありがとうございます。」
「調査結果は、どうやったんですか?」
逸る気持ちの依頼人に、玲奈はお茶を入れて、落ち着かせた。
「これが調査結果です。」
調査報告書を見せ、盗聴器で録音した会話を聞かせる。浮気だと心配していた依頼人は、次第に落ち着き、自分の心配が取り越し苦労だったと悟って、安堵した。
「何や、ただの相談やったんや。私の取り越し苦労やったね。」
「まあ、これで一件落着ということでしょうか?」
「ええ、探偵さん。とんだ苦労をおかけしました。」
「いえいえ。」
それから1時間後、仕事が終わったターゲットも事務所に呼び、今回の依頼の件を伝えた。
「浮気やと、勝手に疑ってごめんなさい。」
「ええよ、済んだことや。」
疑いも晴れ、スッキリとした面持ちで2人は事務所を後にする。その前に、ターゲットは雅文に話しかけた。
「ちょうどよかった。この前、Loft101で会ったゆりあちゃんの件やけど、貴方方に依頼してよろしいでしょうか?」
「ええ。ですけど、紹介があっても本人が直接来ない限りは、調査は出来ないので…。」
「なら、彼女に伝えておきます。」
事務所の連絡先を伝え、後日、彼女が来るように言う、と約束して終わった。
「ストーカーか、独りだけやったらええんやけどな…。」
夕陽を見ながら、ボソッと呟く。この一件が、彼の運命を狂わせることになろうとは、まだ誰も知る由が無かった…。

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