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第3章 back to school 青春の甘い楽園

第33話 後日談

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    Golden Fruit一派との戦いが終わってから、3ヶ月が経った。3月には、雫・由香里・正昭は無事に退院し、里香と由香里は高校2年生に進級することが出来た。KANSAI BLACK PANTHERの活躍もあり、Golden Fruitは壊滅し、女子高生達は全員解放された。雅文達は冬が終わり、暖かくなった春の日も来る日も来る日も、探偵業に勤しんでいた。GW明けのある日のこと、その日の業務が終わった後、全員が戻ってきた時に所長が改まった感じで話をした。
「みんなお疲れ様でした。GW中に私が思っていたことだが、1つ提案がある。」
夕陽が射し込み、所長を照らす。3人は席について、真摯に耳を傾ける。
「2月に、Golden Fruit一派と戦い、女子高生達をJKビジネスから解放することが出来た。探偵は職業柄、時には反社会的勢力に狙われることもあるし、依頼人のためなら、ソイツらに喧嘩を売ることも有り得る。これからのことを考えると、また1人 探偵を増やそうと考えている。」
「所長、それって…。」
「あぁ、探偵の求人や。ホームページに探偵求人情報を載せた。応募期間は5/8~5/23。書類選考を行い、面接をして採用する。」
探偵の求人は、各探偵事務所やハローワークで情報が掲載されている。資格は必要ではなく、老若男女誰もがなれる可能性を秘めている。だが、特殊な仕事であるが故に、求人は乏しく、更に勤務時間は変則的で必ずしも週休2日とは限らない。早朝や深夜まで張り込んだり、時には人間の下衆い部分も見るなど、過酷で泥臭い仕事なので、やりたがる人間は少ない。
「今日からエントリーを開始する。」
「誰が来るか楽しみやな。」
「そうやね、私と雅文に部下が出来るんやね。」

    その頃、大阪府吹田市のとある高校に通う女子高生は、夏の始まりを楽しみに心待ちにしていた。
「夏、楽しみやなー。」
「沙耶香、そればっかりやな。」
プールを掃除しながら、談笑していた。水泳部は夏が勝負。水泳は一瞬で勝負が決まる。夏は長いようで短く、暑さの中に儚さもある。その刹那に勝負を懸ける。彼女は、それを楽しみにしていた。その日のトレーニングが終わり、下校途中の道、彼女は自転車を走らせ、夕陽を見ていた。
(雅文さんに、会ったのは去年の夏休みやったな…。)
それは、昨年の夏休みのことだった。猛暑の8月、彼女は東和薬品ラクタブドームで行われた水泳の大会に出場した。彼女は、存分に力を発揮して躍動し、上位に入賞。その様子を雅文は一部始終観ていた。彼女が大阪モノレールで帰路についていた時、万博記念公園駅で彼に出会った。彼は爽やかな印象で、静かに、かつ気さくに話しかけてきた。
「やぁ、こんにちは。」
彼女は一瞬たじろいたが、彼の端正な顔立ちと物静かなキャラクターに心を開いた。
「こ、こんにちは。」
(誰?せやけどイケメンやな…。チャラ男やなくて良かったぁ~!)
「観てたで。君の泳いでいるところ。躍動感があったし、水泳部のエースなんやね。後、君の水着姿をよく見たら、グラビアアイドルのようやね。」
「ありがとうございます…。」
(観てくれたんや。グラビアアイドルって、岸明日香に似てるって言われたことはあるけど…。)
自分のパフォーマンスを評価してくれたのと、水着姿もしっかりと吟味して見てくれていたことに、赤面して喜んだ。
「そうや、立ち話もなんやし、エキスポシティで茶でも飲みながら…。」
(お茶しようやなんて…。お腹空いたし、奢ってくれそうやな。)
「お兄さん、ウチ、お腹空いたぁ…。」
そこから意気投合し、2人はLINEを交換した。
(それから、神戸でデートしたんやな…。)
感傷に浸りながら、家に着いた沙耶香は、体操服を洗濯し、塾に行く準備をした。夜になり、塾から帰って来た彼女は、シャワーを浴び、夕食を済ませ、部屋に入った。ベッドに横たわり、当時のことを回想する。

    デートは暑い日のことだった。雅文と共に、神戸を観光。北野異人館街で異国情緒を感じ、南京町で中華を食べ歩きし、須磨海水浴場で一緒に泳ぐなど、2人きりの時間を満喫。だが、それに水を差すように、留置所から脱走した殺人犯が現れ、彼女を殺そうとした。ハーバーランドのmosaicに逃げ込んだ2人は、その殺人犯と応戦することにした。
「どこ行ったぁ?クソガキが!!右手に拳銃、左手にナイフ、これで俺は無敵だぁ!!!」
雅文は、敢えて銃を乱射させることで、弾切れを狙い、その隙に仕留めるという作戦に出た。そして、ヤツはその術中にまんまとハマった。弾切れの状態で、ヤツは雅文に銃を向けた。
「フン、このクソガキが!!手こずらせやがって、頭吹き飛ばすぞ!!」
2人が対峙している様子を、彼女は固唾を飲んで見守っていた。
(雅文さん、大丈夫なんかな?もし、ヤられたら…。ウチ、絶体絶命や…。)
雅文は、堂々として、ポケットからエアガンを取り出した。エアガンなので、殺傷能力は無いが、状況が状況だったので、ヤツは動揺した。
「くっ、テメェも拳銃持ってたのか…。」
「お前にどんな事情があったかは知らん。せやけど、人を殺したんは事実や。昔の恨みに執着して、人を殺した挙げ句に留置所から逃げ出すとは…。そんな悪党には、天誅や!!!」
啖呵を切った雅文に、彼女のハートは射ぬかれた。
「あぁん!!雅文さん、ウチもハートぶち抜かれたぁ…。」
ヤツは発砲しようとしたが、弾切れのため撃てず、動揺した隙を突かれて、彼女に股間を蹴られて悶絶した。
「やったな、沙耶香。」
「雅文さん、カッコ良かったぁ。」
彼女は雅文に胸打たれて、一目惚れした。彼女の恋も熱く燃えそうな予感。
「最後の夏の大会、雅文さんに応援してもらいたいな…。」

    それから時は流れ、探偵事務所が応募した求人のエントリー期間が終わった。応募総数は6人と少なかったが、期待の人材が集まった。
「6人か…。まぁ、でも、面白そうな人材が集まったなぁ。」

No.1 岡村 和輝(36) 兵庫県 
No.2 櫻木 渡(40) 兵庫県
No.3 三村 愛菜(30) 兵庫県
No.4 音無 玲奈(28) 大阪府
No.5 桐山 誠(32) 大阪府
No.6 河村 美鈴(26) 大阪府

そこから3日かけて、書類選考を行い、面接に進む者は面接案内を郵送した。
「楽しみやな…。」
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