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第2章 VS JKビジネス

第31話 リンゴ狩り

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    残るGolden Appleの勢力は、店長の近藤太一とGolden Bananaの残党2人の計3人。対して、雅文達とKANSAI BLACK PANTHERは3人。李羅は正昭の、美夜子は由香里の付き添いで救急車に乗って、病院に向かったためである。雅文・松本・応援に来た萩原の3人で3対3の戦いとなる。時刻は20時を廻り、雅文はGolden Bananaとの連戦による疲労が、今になってのしかかってきた。
(何とかコイツらを、瞬殺せぇへんと…。)
「ハッハッハッハッ!!!ここまでやるとは思わへんかったわ!雅文って言うたな!クソガキめ、お前から死ねぇ!!」
近藤は日本刀で雅文に襲いかかった。疲労が蓄積し、動きが悪くなっていたが、雅文は難なく攻撃をかわした。
「フン、余裕や!」
だが、背後からチェーンで攻撃され、首に巻き付けられた。
「ハッハッハッハッ、死ねぇ!!」
 チェーンで首を絞められ、悶える雅文にもう1人の黒服が追い討ちをかけるように、連続パンチとキックを食らわす。
「うぅ…。」
そこに、松本がチェーンを持った黒服に正拳突きを食らわし、更に萩原が追い討ちをかけてきた黒服に蹴りをかまして撃退した。
「ゲホゲホっ!!」
「大丈夫か?」
「ハァハァ、どうやら、あの店長がボスのようです。」
「そういうことやな、アイツを倒せば手っ取り早いな。」

 「ハッハッハッハッ!店長には近づけさせへんわ!」
黒服がチェーンを振り回して襲いかかって来た。雅文の腕にチェーンを巻き付け、もう一人の黒服はサバイバルナイフを持った状態でスタンバイ。
「ハッハッハッハッ!!!地獄の綱引きや!」
チェーンを引っ張ると、雅文も引っ張られる。このままでは、引っ張られた先で、もう一人の黒服にサバイバルナイフで刺殺されてしまう。雅文一人の力では、踏ん張りが効かない。
「クソッ…。」
だが、そこに松本と萩原が加わり、後ろから雅文を引っ張る。綱引きが拮抗している中、店長は日本刀で背後から斬りかかった。
「ハハハハハハハハ!探偵風情が死ねぇ!」
すると、萩原が前に立ち、店長に回し蹴りを入れ、更に飛び蹴りをお見舞いした。一瞬、陣形が崩れた隙を突いて、雅文と松本は一気にチェーンを引っ張る。黒服2人は引っ張られて、バランスを崩した。
「今や!」
松本と萩原は助走をつけて、黒服2人に飛び蹴りを食らわした。一瞬、彼らは怯んだが、すかさず体勢を立て直し、日本刀とチェーンで襲い掛かった。
「オラァ!」
「ウオオオ!」
松本と萩原も、静かに構えて精神統一。そして、走り出して技を放った。
「黒豹拳法、黒豹正拳!」
「黒豹拳法、テイルズキック!」
首筋に蹴り、顔面に正拳と強烈な一撃を放ち、黒服2人はノックアウト。倒れたところで、警官が駆け寄り、黒服2人を逮捕した。
「さて、残りはお前だけやな…。」
雅文は店長を指さし、静かに呟いた。
「く、やってくれたな、このガキィ…。」
「どないする?降伏した方がええよ?」
そう言って、雅文は店長にジリジリとにじり寄る。店長は後退りしながら、すぐさま背を向けて走り出した。
「ハハハハハ、まだ奥の手があるんや!」
「待てぇ!」
雅文は逃げる店長を追いかけた。

    店長はハァハァと息を切らして、必死で走ってバックヤードへ逃げ込み、倉庫へ辿り着いた。倉庫を開けようとした時に、雅文と警官が追い付いた。
「近藤太一、未成年者売春並びに監禁・暴行容疑で逮捕する!」
「ハッハッハッハッ!!!逮捕やとぉ?俺を捕まえられるモンなら捕まえてみぃ!」
彼は得意気に笑いながら、倉庫を開けたが、その笑みはすぐに消えた。
「えっ…。」
中に置いてあったダイナマイトや拳銃や、先回りした警官達によって、押収され、倉庫内はもぬけの殻となっていたのだ。
「そんな…。」
呆然とする彼に、雅文はストーリーテラーのように語りながら、静かに近づいた。
「いやぁ…。今も昔も、現実世界と漫画・小説の空想世界、両方におるもんやね…。上部だけは気取っとるけど、独りでは何も出来ひん臆病者が…。そんな奴は、塩漬けにして、クリーム塗りたくって、煮えたぎる油の中に放り込んだろうかと思うたけど、悪党なんか動物でも食わへんわ…。」
宮沢賢治「注文の多い料理店」のワンシーンを引用した比喩的表現で語った。店長は雅文の方を振り向き、サバイバルナイフを取り出して襲いかかった。
「訳の分からんことを、お前も死ねぇ!!」
その時、警官が横からタックルをかまして確保。店長は呆気なく御用となった。
「21時12分、近藤太一、未成年者売春並びに監禁・暴行容疑の現行犯で逮捕する!」
店長は警察に連行される時に、雅文にこう毒づいた。
「フン、俺を逮捕出来たからって、終わった訳やないぞ。Golden Tigerの餌食になるがいい…。」
1人残された雅文は、その言葉の意味を考えながら、スマホで美夜子とLINEをした。搬送された雫・由香里・正昭の手術は成功し、今は安静にしているという情報が入り、ようやく一安心出来た。雅文は、急いで美夜子達がいる大阪市内の病院に向かった。

    病院に着くと、雅文は美夜子と李羅に再会した。3人とも命に別状はないと知り、雅文はほっと胸を撫で下ろした。安堵したと同時に、緊張が切れたのか、疲労と空腹に襲われた。
「安心したら、腹減った…。」
「そうやね、もう21時30分だわ。」
疲労困憊の2人を見兼ねた李羅は、自宅に泊めることにした。
「もうこんな時間ね。リーダーと萩野さんはもう帰ったから。あなた達、もし良かったら、私の家に泊まっていかない?」
「えっ?いいんですか?」
「ええ。もう遅いやろ?大阪市から神戸市に戻るのも、体力的にキツそうやし、ゆっくりしてええよ。」
2人は、躊躇うことなく李羅の誘いに乗った。
「ありがとうございます。」
「ええ。お言葉に甘えさせていただきます。」
3人は病院を後にし、梅田から中之島まで歩いていった。夜の梅田は夜景が映え、高層ビル郡がまるで夜空に向かって伸びているかのようである。しばらく歩くと、タワーマンションについた。
「ここが私の家よ。」
3人は建物内に入り、エレベーターで10階まで上がった。10階の李羅の部屋につき、中に入る。
「お邪魔します。」
部屋は片付いており、和室と個室がある。

    3人とも手洗い・うがいを済ませ、リビングに向かう。雅文と美夜子は、スーツの上着を脱ぎ、綺麗に畳んだ。李羅は夕食の準備をし、ある程度の仕込みを済ませた。
「シャワー浴びたい…。」
「私も…。」
すると、李羅は部屋に向かい、下着と着替えを取ってきた。
「じゃあ、私と一緒に入る?」
「えっ、いいんですか?」
「3人まとめて入った方が、効率いいわ。」
雅文は少し赤面した。同年代の美夜子はまだしも、李羅は28歳で、いわゆる大人の女性である。タワーマンションの一室、時刻は夜、あらぬことを妄想し、赤面して固まった。
「雅文くん、行くよ。」
「あ、はい…。」
浴室へ移動し、雅文と美夜子は服を脱いだ。下着はまた着るので、畳んで置いた。李羅が脱いだ時、2人は思わず声を出して驚いた。黒いTバックで、お尻に黒豹のタトゥーが入っていたからである。
「李羅さん、タトゥー入ってる…。」
「大丈夫よ、お尻だから人目につかないわ。」
3人共、裸になり、浴室に入る。シャワーで頭と身体を洗う。雅文は大人の女性の裸に、タジタジしていた。
(ああ、罰当たらへんかな…。ギリシャ神話でアルテミスの裸を見た猟師が、鹿に変えられて食われてしもうた話みたいに…。)
李羅が背中を流してくれているが、その都度、豊満な胸が背中に当たる。美夜子は浴槽の中で、淡々と頭と身体を洗っていた。シャワーを浴び終え、浴室から出て、身体を拭いて着替える。李羅は真っ先に着替えると、急いで台所へ行き、仕込んだ食材を使って、夕食を作る。雅文と美夜子は着替え終わり、リビングでくつろぐ。
「今日は所長、休みやったから、報告は明日にしようか。」
「もう遅い時間やし、所長も寝てると思うわ。」
そうこうしていると、夕食が出来た。湯気が立ち込めるラーメン鉢が3つ、テーブルに置かれた。
「お待ち堂さま。香港風ワンタン麺です。」
大振りのワンタンが麺の上に乗り、あっさりスープが湯気を立てている。
「本格的ですね。」
李羅は大学時代、ラーメン屋でのバイト経験があり、そこで実際に調理していたので、短時間で本格的なものが作れるのである。
「いただきます。」
2人はレンゲでスープを掬って、一口飲んだ。あっさりとした醤油ベースのスープが、疲労困憊の五臓六腑に染み渡る。麺を啜り、ワンタンを口にする。ワンタンは具が入っており、プリプリのエビの旨味が噛むほどに広がる。
「やっぱり、ワンタン麺は美味いね。」
「私はね、大学時代にラーメン屋になろうって思ってたんよ。せやけど、クレーマーにぶちギレて、ぶん殴ったらクビになってしもうて…。」
サラッと、怖い話をする李羅。遅い夕食を済ませ、戦い疲れた3人は布団に入って、眠りについた。
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