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第2章 VS JKビジネス

第24話 JK革命

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    Golden Fruitの一角であるGolden Peachを撃破し、JKビジネスの実態が明るみに出た。由香里はテレビでこのニュースを確認して、いつものように朝のシャワーを浴びる。
「ふぅー…。」
鏡を見ると、昨夜の戦いの痕が痛々しく身体に刻まれている。まだ痛みが残っていた。
「痛い…。女の子に何てことしてくれたん…。」
身体は痛んでいるが、心は少し平穏を取り戻した。もうあんな変態達に、パンツを見せるような下卑たことをしなくてもすむから、気が楽である。シャワーを浴びた後、頭と身体を拭いて下着をつける。この日は純白のブラジャーとパンティ。それから制服に着替えて、朝食を済ませて学校へ行く。
「もう、ウチは自由や。」
JKビジネスから解放され、軽やかな足取りで地下鉄御堂筋線 心斎橋駅へ向かった。心斎橋から梅田へ行き、阪急電鉄に乗り換え、神戸三宮へ行き、神戸市営地下鉄 県庁前駅で降りて、学校へ行った。登校すると、下駄箱の所で里香に会った。
「里香、おはよう。」
「おはよう、由香里。大丈夫やった?」
「うん、まだちょっと痛いけどな。」
教室に向かい、いつものように授業を受ける。昼休みに他の女子たちと一緒に昼食。その時に、昨夜の戦いについて聞かれた。
「ニュース見たで。大丈夫やった?」
「うん。ヤクザみたいな奴らやったやど、ウチは負けへんかった。」
「他に誰かおったん?」
「それは、里香が依頼した探偵さんらが力貸してくれたから、最後まで戦えた。」
「由香里は、それからどないするん?ヤクザが絡んどったら狙われるで?」
心配するクラスメイト達に、由香里は茶を一口飲んだ後、堂々とこう言った。
「大丈夫や。ウチは決めたんや。ウチと同じ目に遭ってる娘らを救い出すって。鉄の部屋で寝てるから、叩き起こしたらな、みんな窒息して死んでまうから。ウチが革命を起こすんや。」
「なんか、ハリマオーみたいやな。」
「例えが古いわ。」

 一方その頃、この一件はGolden Fruitと傘下のGolden AppleとGolden Bananaにも伝わっていた。大阪キタエリアの曽根崎・東梅田に拠点を構える傘下の2店は、同じことが起こるのでないかを警戒していた。
「Golden Peachにおった山本由香里っていう小娘やな。ハハハ、渋谷はあんな小娘如きが起こした革命ごっこにやられたんかいな。あのガキ、舐めやがって…。まあ、俺のしもべのガキにそんなこと出来る奴なんかおらへんやろうけどな…。ハハハ…。」
黒服に、ワックスで整えた髪型の細身の男は、事務所で独りコーヒーを飲みながらブツブツと呟いていた。彼は、東梅田にあるGolden Appleの店主 近藤太一 38歳。彼は半グレ出身で、新興勢力のヤクザ Golden Tigerに入り、JKビジネスを始めた際に、Golden Appleの店主を任された。彼は二面性があり、まるで二重人格のようである。気に入った女の子には、名前でちゃん付けし、デートやセックスをして交流を深めて、お姫様のように可愛がって懐に入れる。一方で言うことを聞かない反抗的な女の子には、容赦なく罵倒して、暴力を振るい、泣こうが血が出ようが従順になるまで蹂躙・凌辱する。このように威圧と懐柔を駆使して、女子高生達をJKビジネスへと引き込み、美味い汁を吸い続けた。Golden Tigerから派遣された用心棒3人(男2・女1)を幹部として採用し、虎視眈々と勢力拡大を狙っている。

 それはGolden Bananaも同じことを考えていた。Golden Bananaは地下1階に個室の風呂場と大浴場があり、そこではソープまがいのことが行われている。女子高生達は裸になり、客とイチャイチャして本番無しで性的なことをする。事務所でアダルト動画を見ていた小太りの男、彼はGolden Bananaの店主 山中圭司 40歳。彼はかつて風俗店を経営していたが、未成年者を買春したことで逮捕され、店は閉店に追い込まれた。女子高生を性的な目で見ており、パンツを盗撮するのが大好き。従業員は9人。革命など起きないとのんびり構えている。
「フン、山本由香里ね。パンツ見せとったクセに革命って、調子乗ってるな。アイツがもし、ここに来たらボコボコにしてパンツ見ようかなー。グへへへへ。」

 そして、大阪ミナミの繁華街・難波の千日前にある雑居ビルに店舗を構えるGolden Fruit。ここでは、JKマッサージと称し、風俗店まがいの性的なマッサージを行っている。事務所で一人のハットを被った男がタバコを吸いながら、新聞を読んでいた。彼の名は相原雅史 46歳。サングラスをかけ、右手のすべての指に金の指輪をはめている。彼は元ヤクザの幹部で、組が壊滅した後、Golden Tigerに拾われて現在に至る。幹部3人(男2・女1)と手下8人を擁し、Golden FruitというグループでJKビジネスを行っている。
「まあ、あんなガキが立ち上がって挑んできたところで、俺の面拝むことなく、幹部たちに粉砕されて終わりやな。ボコボコにした暁には、首輪で繋いでGolden Tigerに引き渡したるわ。ハハハ、「「カイジ」」みたいな展開になるやろな。」

 それから1週間が経ち、2月になった。冬の寒さが厳しい日々が続く中、探偵事務所は通常の探偵としての職務に勤しんでいた。由香里はその後も頻繁にGolden Apple Golden  Bananaに勤務する女子高生達とLINEでやり取りし、情報を集めていた。皆をJKビジネスから救いたい、という一心で由香里は奔走した。2月のある日、大阪梅田のGolden Bananaに、先月、探偵事務所に来た美香子が出勤した。東梅田は曾根崎新地や北新地といった「夜の街」と隣接し、キャバクラやスナック、その他如何わしい店などが建ち並ぶ。美香子は出勤すると、1階で衣装に着替えて控室でスタンバイ。開店すると、客から指名が入った。地下1階の風呂場での指名だ。美香子は赤いランジェリーで客を迎えた。客と共に個室の風呂場へ行き、客の服を脱がせて、自身も裸になる。
「美香子と言います。」
「美香子ちゃん、可愛いね。」
客の身体を洗い、一緒に風呂に入る。美香子はあの一件以降、JKビジネスから足を洗うことを考えていた。他の女子高生達が客からストーカーされたり、従業員にセクハラされたという情報が入ってきていたからだ。
(何が悲しくて、オッサンと風呂入ってるんやろ。)
大広間の大浴場に行き、他の女の子達と遊ぶ。客のオッサン達は、女子高生の発達途上の身体に鼻の下を伸ばす。背徳と淫乱に満ちた不健全な楽園、かつての清王朝のアヘン窟のようである。
「へへへ、君たち。壁に突っかかって、お尻見せて。」
「えっ…。」
言われるがまま、美香子と同年代の女子2人は壁に突っかかって、尻を突き出した。男は品定めするように、女子高生達の尻を吟味し、美香子の尻を鷲掴みにし、思いっきり口をつけた。
(嫌~!止めて、気持ち悪い~!)
他の女子達は、完全に引いていた。

 勤務終了後、美香子は先程の一件に憤っていた。
「ホンマに気持ち悪かった~!!」
「美香子、あれセクハラやんね?訴えた方がええんちゃう?」
「そうやな。」
3人が店を後にした頃、由香里はGolden Banana周辺を物色。すると、露店商のように小さいテントで何かを販売している人がいた。恐る恐る近づいてみると、DVDを売っていた。探偵事務所で見た盗撮やレイプの映像が、収録されていると踏んだ由香里は売人に話しかけた。
「すいません、このDVDはどういった内容ですか?」
黒いハットを被り、タバコを吸っている売人は伏し目がちに由香里を一瞥した。
「ん?あぁ、これは裏もの。女子高生らの裸を収録した盗撮モンや。」
由香里はこっそり、周辺の写真を撮り、証拠を集める。
「お嬢ちゃん、何してん…。あっ!!テメェは?!」
「しまった!!」
逃げ出そうとしたが、売人は鎖を振り回し、由香里の腕を巻き付けた。
「あっ!」
「ハッハッハッ!テメェが山本由香里やな?ここで仕留めてやらぁ!!」
鎖を引っ張り、由香里を引き寄せる。左手には鎌が握られていた。
(ヤバい、ヤられる!!)
そこに、一人の黒服の女性が現れ、売人の横腹に蹴りを入れた。
「ぐわぁ!!」
「誰?!」
黒髪を肩まで伸ばし、凛とした顔の女性がいた。
「由香里ちゃん、怪我はない?」
「はい。貴女は?」
「私はKANSAI BLACK PANTHERの矢神 李羅。よろしくね。そうや、貴女がトドメを刺しなさい。」
そう言って、蹲っている売人の鎖を引っ張り、由香里の下へ引き寄せる。
「はっ?!えっ?!」
「この変態野郎!!!」
股間に蹴りを食らわした。
「ハァァン!!!」
売人は蹲って悶絶した。その隙に二人は東梅田通りを出て、HEP FIVEに移動した。美香子達をLINEで呼び出し、構内のStarbucks Coffeeで改めて話をする。
「さっきは、ありがとうございます。」
「いえいえ。」
ここまでの戦況を詳しく説明し、今後の動向についても入念に話し合った。
「作戦名は「「JKインフェルノ」」。」
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