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第2章 VS JKビジネス

第18話 魔人の祭典

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   日が西に傾き、北風が吹く冬の夕暮れ時。3人は神戸から大阪へ向かう。阪神高速道路の京橋ICに入り、まずは神戸市を出る。夕陽が海に映えるという風情ある光景だが、3人はそんな感傷に浸る余裕は無い。むしろ、反社会的勢力との戦いになるかもしれないので、夕陽で赤く染まった海が、まるで地獄の血の池のように思えて、どこか慄然としている。芦屋・西宮を通過し、尼崎から大阪へ入る。工業地帯なのか、ビル群が見える。
「もうすぐ、大阪市やな。」
「所長、お腹空いとる?」
「ああ、少しな…。」
後部座席で独り、スヤスヤ眠っていた雅文は目を覚ました。水筒のお茶を飲み、一息つく。今回の調査は長期戦になることを覚悟し、思考を張り巡らせる。大阪市に入ると、街中は高層ビルが建ち並び、大都会の雰囲気が漂う。淀川大橋を通過し、キタの繁華街・梅田に入った。
「大都会ですね。」
「雅文と同じ年頃の若者が、ようけおるな。」
阪急・阪神梅田駅とJR大阪駅が隣接し、交通の便は非常に良い。周辺には、飲食店が建ち並ぶ「かっぱ横丁」やファッション・グルメなどが充実し、若者に人気の商業施設「HEP FIVE」と賑わいを見せている。雅文は22歳と若いが、大阪にはほとんど行っていない。彼曰く、あのゴミゴミとした猥雑な雰囲気が苦手で、住むには適していない、ということである。御堂筋に出ると、後は南下し続けるだけ。
「ビル群が何か、落ち着かへんな。」
「せやね、ウチも大阪はよう行かへんから。ゴチャゴチャしてるのは苦手や。」
北新地・中之島・淀屋橋と南下し続けて、暫くすると、道頓堀に到着。グリコの看板や「道頓堀くくる」の看板といった「THE・大阪」という風景が広がる。なんばパークスに行き、地下駐車場に車を停めて、各々コンビニで買った食料を食べる。
「この地下駐車場は23:00まで開いてる。今は、18:00。「「Golden Peach」」は19:00に開店するからな。」
「はい。」
雅文は、おにぎりを食べながら、思考に耽っていた。ここまで得た情報では、Golden Fruitの傘下に、Apple・Banana・Peachがあることが分かった。何となくそれぞれの店名の由来も分かっていた。欲望をくすぐるものの例えで、「黄金の果実」という表現があり、JKビジネスは変態たちの欲望を満たすために存在し、それを扱っていることから、この名がついたのである。
リンゴは、「旧約聖書」に出てきた禁断の果実、バナナとモモは恐らく男性器と女性器であろう。

    夕食を済ませ、3人はなんばパークスから南下して、日本橋へ歩いていった。日本橋は、東京の秋葉原に匹敵するほどの電気街で、オタロードがあり、オタク文化の中心地でもある。メイド喫茶やアニメイト、とらのあなといったオタクが好きなものや少々変態じみた趣味を満たすものも多くあり、独特の雰囲気がある。3人とも、私服で変装して周囲に溶け込む。所長と雫は周辺の聞き込み調査にあたり、雅文は渡された資金で、Golden Peachに客として行き、内部調査をする。
「資金の5000円と盗聴機や。私と雫は店舗近くの調査にあたる。依頼者の言っていた由香里と言う娘が退勤した頃に、直接聞き込みをしてくれ。」
「分かりました。」
時刻は19:00。辺りは暗くなり、オタロード周辺はライトアップされ、まるで変態の欲望渦巻く伏魔殿のような雰囲気が漂う。アニメイト周辺を歩いていると、金色の外観の建物が目に留まり、看板には「Golden Peach」とあった。
「ここか。」
雅文は黒いジャケットに、黒パンツというモノトーンな服装をしているので、怪しまれることはない。店に入ると、受付から女の子の指名リストを渡された。
「お客様、当店ご自慢の女の子達でございます。貴方のお気に入りの娘を、ご指名ください。」
指名料はかからないが、コスチュームで別途料金がかかる。制服・体操服は500円、スクール水着・マイクロビキニは1000円、チャイナドレス・メイド服は1500円である。リストに目をやると、依頼者の言っていた由香里がいた。
「じゃあ、由香里ちゃんで。」
「お兄さん、お目が高いね。コスチュームは?」
「制服で。」
「分かりました。少々お待ち下さい。」
それから10分後、由香里が黒いセーラー服姿で現れた。茶髪ショートに、むっちりとした身体つきで、かなり大人びている。2人は個室へ移動し、プレイスタート。雅文は盗聴機をソファーに置いて、電源をつける。
「ご指名ありがとうございます。由香里です。」
「どうも、俺のことは雅文って呼んでね。」
捜査ではあるが、客を装い、プレイに興じる。由香里がベッドに座り、開脚してパンツを見せる。
「雅文君、由香里のおぱんちゅ見てぇ…。」
頬を赤らめ、スカートを捲り上げる。白いパンツの正面が、秘部で盛り上がっている。雅文は、背徳感を感じながら見ていた。なぜなら、昨年の夏に知り合った倉橋沙耶香の存在が、頭をよぎったからだ。
(沙耶香、これは探偵の捜査や。悪く思わんといてな。)
「ねぇ、由香里のオッパイ揉んでええよ。」
雅文の手を掴んで、胸元に押し当てる。豊満な胸の感触を感じ、言われるがまま揉んだ。
「ねぇ、由香里ちゃんは、いつからここで働いてるの?」
「ん?去年の夏からやで。」
「何か、ここ怪しい雰囲気せぇへん?俗に言うJKビジネスというか、反社会的勢力が絡んどるような…。」
由香里の表情が曇り、動揺したような様子になる。
「えっ?いや、そんなん…。あんまり聞いたらアカンで…。」
「何か心当たりはない?怪しい感じの人がいたとか…。」
由香里は、声のトーンを落として、囁くように呟いた。
「怪しい感じで言うたら、去年のクリスマスパーティーの時に、梅田に行ってな。そこで「Golden Tiger」とかいうイカツイ人達がおったわ。SMショーやったり、由香里はその人達に接待したわ。」
雅文の頭の中で、一つ伏線を回収した。Golden Fruitとその傘下のApple・Banana・Peach、更にその上の元締めがGolden Tiger。だとすると、反社会的勢力が絡んでいるという推理が的中する。この一件が、長期戦になるということも頷ける。
「ありがとう、よく話してくれたね。」
最後は写真を撮って終了。部屋を出る時に盗聴機を回収し、電源を落とした。

 その頃、所長と雫は周辺の聞き込みを行い、ある情報を入手した。2人は先になんばパークスの駐車場へ戻り、雅文は彼女の退勤を見計らった。そして、時刻は21:00。彼女が退勤したので、尾行して話しかけるタイミングを窺う。日本橋から道頓堀まで行った頃、雅文が話しかけた。
「こんばんは。」
「あっ、貴方はさっきの?」
「ちょっとだけ、話いいかな?」
敵意が無いことを悟り、彼女はそれに応じて、近くの喫茶店へ移動した。夜なので、2人共ココアを注文し、向かい合って話をする。
「改めて、私は神田雅文。神戸の探偵です。」
「探偵…。はじめまして。私は神戸山手女子高等学校1年の山本由香里です。」
探偵と聞き、由香里は安心した。ココアを一口飲み、一息つく。
「実は、君の同級生の深山里香という娘から依頼があってね。君がJKビジネスに関与しているかもしれない、もし、そうやとしたら救い出してほしい、とね。」
「里香が?そんな大げさな。ウチがやってることは、そないヤバくないて。」
「由香里ちゃん、この一件は校長先生から直々に頼まれたんよ。」
校長と言われて、由香里の顔から笑みが消えた。
「校長…。」
「JKビジネスはね、反社会的勢力が絡んでいる可能性があるんや。さっきパーティーのこと言ってたね。直近でそういうことやるの?」
「1月8日の16:00から19:00にかけて、梅田でGolden Frult主催のパーティーがあります。そこでウチらと他のお店の娘達も参加します。」
「分かった。くれぐれも危ないことはしないでね。」
その日はここで別れて、雅文はなんばパークスに戻り、3人は大阪を後にした。

 翌日、所長は休み。9時に出勤した雅文は雫・美夜子と昨日得た情報を共有し、このパーティーに潜入することにした。パーティーの定員は40人。15:00に受付開始し、料金は男性1000円・女性無料。18歳以上限定で、女性は男性との同伴でのみ参加可能。受付を通ると、パーティー用の水着が無料で貸し出されており(持参は可能)、男性はゴールドのズボン型、女性は白ビキニ。JK達はゴールドビキニを着用しているため、持参する際は色が被らないようにすること。場所は大阪市北区梅田。13:30に事務所を出るので、それまで事務作業や情報整理。
「パーティーか、どういうものか気になるな。」
「そうね、如何わしい雰囲気があるわ。」
作業を一通り済ませ、昼食を食べ終えた後、事務所を出た。施錠をし、3人は阪急神戸三宮駅から阪急梅田駅へ、電車で向かった。変装のため、3人は私服に着替えている。
「2人はともかく、ウチは大丈夫かしら?」
「どうかしましたか?」
「ええ、ウチは37やから、若い子達に交じったら、浮くんちゃうかな?」
「大丈夫やと思いますよ。」
そうこうしていると、梅田に到着した。梅田駅を出て、HEP FIVEや阪急三番街などを通り、東梅田通りに出た。飲食店が建ち並び、路地裏には風俗店やガールズバーなど少々如何わしい雰囲気が漂う。しばらく歩くと、金色の外装の建物が現れた。看板には、「本日、貸し切り」とあった。
「ここやね。」
「間違いないな。」
3人は恐る恐る入店した。男性1人・女性2人なので料金は1000円。水着を借りて、店内へ入る。建物は地上1階・地下2階。1階は受付と男女別のシャワールームとコインロッカー、地下1階はクラブとバーで、パーティーの時だけドリンク(ソフトドリンク)無料で飲み放題、地下2階は個室が8部屋あるプレイルームとなっている。3人はシャワールームでシャワーを浴びる。雅文はシャワーを浴びている時、この後起こることを予想した。
(内部の地図は、確認した。JKビジネスやということやから…。)
一方、雫と美夜子もシャワーを浴びながら話していた。
「雫さん、このパーティー怪しいと思います。」
「ウチも思うてるよ。」
3人は水着に着替え、念のためメモ帳とペンを携帯して地下1階に下りた。時刻は16:00。手前のステージに、主催者らしき男性が立っていた。彼はスーツに蝶ネクタイをしている。
「ええ、皆さん。このパーティーに集まりいただきありがとうございます。「「Golden Fruit」」主催の「「Golden Sexy Party」」へようこそ。無礼講の乱痴気騒ぎ、我らの自慢のピチピチJK達が、ゴールデンビキニで皆様をお出迎え。気に入ったら、地下2階のプレイルームでLets Party!甘い一時をお過ごしください。」
この日の来客は32人(男性20人・女性12人)。ゴールデンビキニを着たJKコンパニオン20人が現れ、乱痴気パーティーが始まった。ステージではDJが場を盛り上げ、ノリノリの男女とJK達が入り乱れる。
「面白いパーティーやな。」
そこにJKコンパニオンが近づいてきた。
「なあ、お兄ちゃん。」
「ウチらとエエことせえへん?」
見るからに未成年である。美夜子が割って入った。
「ねえ、貴女達は未成年よね?こんなとこで男に媚びを売って虚しくないのかしら?」
「何言ってんの、お姉さん?」
「こんなの親が見たら悲しむわ。」
美夜子の背後に、チャラチャラした男が忍び寄り、尻を鷲掴みにした。
「お嬢ちゃん、遊ぼうぜ。」
美夜子はすかさず手を捻って、抑え込んだ。
「痛てててて、ギブ、ギブ!」
「私ね、男尊女卑な考えの男は、大嫌いなの!」
その後も、着実に捜査を進める3人。それを見つめる黒い水着の男女。彼らは一体?

 

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