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第52話 2010ファミリー
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本格的な夏到来が近づく中、薫はのんびりした日々を過ごし、写真館で写真を撮り続けた。19th2010FIFAW杯南アフリカ大会も、決勝トーナメントを迎えた。
2010年6月29日 Round of 16 VSパラグアイ
日本の相手はパラグアイ。グループステージで前回王者のイタリアを退け、1位通過を果たした。守備的な両者は互いに一歩も譲らず、延長戦でも決着がつかない。勝負はPK戦へもつれた。
「PK戦か、勝ったらいけるぞ。」
固唾を飲んで、祈る思いで見守る薫。1人目は遠藤保仁。これはキッチリ決めた。その後、互いに2人目までは決め、日本の3人目は駒野友一。これは大きく枠を外してしまった。
「おわー。これはマズい…。」
日本の4人目 本田圭佑は決めるも、パラグアイの5人目に決められ、3-5で敗れた。とはいえ、開幕前の下馬評が非常に低い中で、打開策を見出し、粘り強く勝ち進んだのは評価された。この大会で2得点を挙げた本田圭佑は高評価され、日本の新エースとして期待されるようになった。
「本田圭佑、大したもんやな。」
ワールドカップが終わり、薫は写真館で撮影する日々を送る。妊娠した久美のお腹は大きくなり、身重で動きが鈍くなる。生計は薫と写真館の収入が補えているため、お金には困らない。実家でくつろぐ薫。縁側でのんびりとスイカを食べるのも何年ぶりだろうか。グラビアカメラマンの時には、海やプールで女子中高生の水着姿を撮影していた。真夏の中国・香港・東南アジアを駆け回って撮影した日々が蘇る。
「こうして、スイカをのんびり食えるのも久々やな。」
「そうやね。」
久美のお腹を見て、もうすぐ家族が増えると薫はワクワクしていた。夏が終わり、久美は妊娠後期を迎えた。ここまで摂生していたのと、薫とその両親の手厚いフォローもあり、妊娠中毒症や妊娠高血圧症候群などの病気にかかることなく、無事に過ごすことが出来た。秋を迎え、薫はスマホを購入。電話番号の登録をし、薫は喜美子に電話した。
「もしもし、喜美子。元気にしとる?」
「あ、薫君、久しぶりやけんね!元気にしとーとよ。」
喜美子は福岡の芸能事務所で活動しており、グラビアアイドルの撮影をしている。久々に屈託のない会話で盛り上がる。
「久美ちゃんは、元気にしとると?」
「あぁ、元気やで。あと少ししたら、子どもを授かる。」
「え、てことは、薫君、パパになると?良かったね。」
喜美子は、薫が父になることを祝う。
「ありがとう。喜美子はグラビアアイドル撮ってんの?」
「撮ってると。成人やけん。オッパイとかお尻撮りまくっとるけん。」
「また俺も撮りたいな~。」
「薫君、またね。」
写真館で仕事をしていると、父から仕事の依頼が来た。
「来年の春からやねんけど、高校の卒業アルバムの撮影や。」
ここまで2年分の写真は撮ってきたが、父は高齢のため、写真館1本に絞りたいとのことである。その高校は、京都府立洛西高等学校であり、薫の母校である。
「懐かしいな。」
21世紀になって、10年は経った。時代が変わり、価値観も変わった。少年少女達を撮影するが、これはグラビアでは無い。商業的価値というよりも、少年少女達の人生におけるアルバムであり、青春時代を記録したものである。楽しさもあるが、難しさがある。
「やってみるよ。」
しばらく経つと、懐かしい人から電話が来た。
「もしもし。」
「薫、久しぶりやな!!俺だよ!!博信だよ!!」
突然の旧友からの電話に、薫は驚いた。
「博信?!久しぶりやな!!」
京都芸術大学が出会った旧友 柿原博信である。卒業後、博信は東京スポーツ新聞社関西支社に就職。スポーツカメラマンとして、サッカーを担当して日本代表を撮影してきた。
「薫、写真集見たで。中々良かったで。」
「あ、ありがとう。」
薫に、再来年に控えるロンドンオリンピックのサッカーの撮影オファーを出してきた。
「再来年、あるな。イギリスやろ?」
「ロンドンオリンピックや。サッカーで日本代表が出場したら、薫も一緒にイギリスへ行こか!」
久美のこともあるので、しばらく考え込む。二つ返事で、保留とした。
「答え出すのは、来年の秋でええか?」
「あぁ。久美とかいう娘、無事に子ども授かれたらええな。そしたら、父として、しっかりやれよ!!」
電話はここで終わった。12月に久美が産婦人科医院に入院。12月24日午後4時、分娩室に入り、出産の時を迎えた。
「あぁ、あぅ!!!!」
「頑張れ、頑張れ、久美ちゃん!!」
ラマーズ法という呼吸法で乗り切り、同刻20分、無事に第一子を出産した。女の子であった。2010年クリスマス、カメラマンの2人に娘というプレゼントが送られた。
「良く頑張ったな、久美ちゃん!!」
嬉しさで薫は、涙が止まらなかった。
「うん。」
2010年6月29日 Round of 16 VSパラグアイ
日本の相手はパラグアイ。グループステージで前回王者のイタリアを退け、1位通過を果たした。守備的な両者は互いに一歩も譲らず、延長戦でも決着がつかない。勝負はPK戦へもつれた。
「PK戦か、勝ったらいけるぞ。」
固唾を飲んで、祈る思いで見守る薫。1人目は遠藤保仁。これはキッチリ決めた。その後、互いに2人目までは決め、日本の3人目は駒野友一。これは大きく枠を外してしまった。
「おわー。これはマズい…。」
日本の4人目 本田圭佑は決めるも、パラグアイの5人目に決められ、3-5で敗れた。とはいえ、開幕前の下馬評が非常に低い中で、打開策を見出し、粘り強く勝ち進んだのは評価された。この大会で2得点を挙げた本田圭佑は高評価され、日本の新エースとして期待されるようになった。
「本田圭佑、大したもんやな。」
ワールドカップが終わり、薫は写真館で撮影する日々を送る。妊娠した久美のお腹は大きくなり、身重で動きが鈍くなる。生計は薫と写真館の収入が補えているため、お金には困らない。実家でくつろぐ薫。縁側でのんびりとスイカを食べるのも何年ぶりだろうか。グラビアカメラマンの時には、海やプールで女子中高生の水着姿を撮影していた。真夏の中国・香港・東南アジアを駆け回って撮影した日々が蘇る。
「こうして、スイカをのんびり食えるのも久々やな。」
「そうやね。」
久美のお腹を見て、もうすぐ家族が増えると薫はワクワクしていた。夏が終わり、久美は妊娠後期を迎えた。ここまで摂生していたのと、薫とその両親の手厚いフォローもあり、妊娠中毒症や妊娠高血圧症候群などの病気にかかることなく、無事に過ごすことが出来た。秋を迎え、薫はスマホを購入。電話番号の登録をし、薫は喜美子に電話した。
「もしもし、喜美子。元気にしとる?」
「あ、薫君、久しぶりやけんね!元気にしとーとよ。」
喜美子は福岡の芸能事務所で活動しており、グラビアアイドルの撮影をしている。久々に屈託のない会話で盛り上がる。
「久美ちゃんは、元気にしとると?」
「あぁ、元気やで。あと少ししたら、子どもを授かる。」
「え、てことは、薫君、パパになると?良かったね。」
喜美子は、薫が父になることを祝う。
「ありがとう。喜美子はグラビアアイドル撮ってんの?」
「撮ってると。成人やけん。オッパイとかお尻撮りまくっとるけん。」
「また俺も撮りたいな~。」
「薫君、またね。」
写真館で仕事をしていると、父から仕事の依頼が来た。
「来年の春からやねんけど、高校の卒業アルバムの撮影や。」
ここまで2年分の写真は撮ってきたが、父は高齢のため、写真館1本に絞りたいとのことである。その高校は、京都府立洛西高等学校であり、薫の母校である。
「懐かしいな。」
21世紀になって、10年は経った。時代が変わり、価値観も変わった。少年少女達を撮影するが、これはグラビアでは無い。商業的価値というよりも、少年少女達の人生におけるアルバムであり、青春時代を記録したものである。楽しさもあるが、難しさがある。
「やってみるよ。」
しばらく経つと、懐かしい人から電話が来た。
「もしもし。」
「薫、久しぶりやな!!俺だよ!!博信だよ!!」
突然の旧友からの電話に、薫は驚いた。
「博信?!久しぶりやな!!」
京都芸術大学が出会った旧友 柿原博信である。卒業後、博信は東京スポーツ新聞社関西支社に就職。スポーツカメラマンとして、サッカーを担当して日本代表を撮影してきた。
「薫、写真集見たで。中々良かったで。」
「あ、ありがとう。」
薫に、再来年に控えるロンドンオリンピックのサッカーの撮影オファーを出してきた。
「再来年、あるな。イギリスやろ?」
「ロンドンオリンピックや。サッカーで日本代表が出場したら、薫も一緒にイギリスへ行こか!」
久美のこともあるので、しばらく考え込む。二つ返事で、保留とした。
「答え出すのは、来年の秋でええか?」
「あぁ。久美とかいう娘、無事に子ども授かれたらええな。そしたら、父として、しっかりやれよ!!」
電話はここで終わった。12月に久美が産婦人科医院に入院。12月24日午後4時、分娩室に入り、出産の時を迎えた。
「あぁ、あぅ!!!!」
「頑張れ、頑張れ、久美ちゃん!!」
ラマーズ法という呼吸法で乗り切り、同刻20分、無事に第一子を出産した。女の子であった。2010年クリスマス、カメラマンの2人に娘というプレゼントが送られた。
「良く頑張ったな、久美ちゃん!!」
嬉しさで薫は、涙が止まらなかった。
「うん。」
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