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第48話 悲喜こもごも
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Strawberry Film2の撮影が始まり、1ヶ所目の札幌での撮影は、無事に終了した。久美と喜美子は、札幌を満喫したようだ。2002年の日韓W杯以来であったから。
「ええ写真やな。」
「札幌は楽しめたと。美味かもんがいっぱいやったし、快適に過ごせたけん。」
順調な滑り出しを見せたが、薫には当時の情勢で懸念材料があった。それは、世界的流行になっていた新型インフルエンザである。国内・海外で感染者が続出し、死亡例も頻発していた。
「新型インフルエンザやけど、感染せぇへんようにな。」
薫は喜美子と久美に、注意を促した。
2ヶ所目の東京は、薫と久美が行く予定だが、2日目に薫が新型インフルエンザにかかってしまった。久美はスタッフとモデルと共に、薫抜きで東京での撮影に行った。社宅の部屋で、自主隔離して療養する薫。喜美子からは、ドアの前に差し入れを置いてもらっている。
「ハァハァ。節々痛い…。」
2003年に白血病で入院したことがあった薫。この時は20代ということもあり、回復は早かった。あれから6年経ち、薫は34歳になった。少しずつ身体にガタが来てくる。そういったことを、病床でしみじみと痛感させられた。
「もしかしたら、俺、死相出てるんちゃう?」
2000年代に入り、海外での撮影機会が増えた薫。現地を過密スケジュールで駆け回り、撮影しまくる日々。その時は充実していたが、帰国した後の疲労感は半端ない。
「Strawberry Film2完成させるまで、死ぬ訳には行かへんからな。」
高熱で悶え苦しむ薫。何とか脱水症状を回避しながら、回復に努める。
東京での撮影が終わり、薫も回復した。
「おぉ、ええやないか!!」
「薫君、もう大丈夫?」
「お陰様でな。ここから俺も撮影するで。」
コンディションが回復した薫。残り撮影場所は海外となる。それぞれの撮影地を確認。
5月7~13日 @韓国(ソウル・済州島)
モデル 張青花
6月9~16日 @中国(北京・上海)
モデル 黄凛衣
7月7~14日 @シンガポール
モデル 杉本奈央
薫は3ヶ所連チャンで撮影する。気合十分で臨むようだ。
GWが明け、薫は喜美子と共に韓国へ赴く。スタッフ達と共に関西国際空港へ集合し、仁川国際空港へ向かう。現地集合という形で出会う。
「ニーハオ!!久しぶりですね。」
「ニーハオ!!久しぶりやな!!」
5年ぶりに再会した張青花。黒髪が伸び、色気が増したようだ。初めて会った時は、中国が反日ムードの中で撮影した。韓国は久しぶりの薫と喜美子。ホテルへ向かうバスの中で、沁み沁みと7年前の韓国でのエピソードを振り返る。
「あのW杯以来やな。」
「あれは面白かったとね。」
遡ること2002年6月、17th2002FIFAW杯日韓大会のグループリーグが終わり、決勝トーナメントから韓国へ移動して撮影することになった。薫にとっては、1997年の香港旅行以来の海外で、韓国は初めてであった。撮影では韓国の試合を担当し、大田・光州・ソウルなどを廻った。
「安貞桓スゲェ!!!」
「PK戦、最後はホン・ミョンボか。ホン・ミョンボ決めたー!!!!アジア初のベスト4?!スゲェ!!!!!」
韓国はイタリア・スペインを撃破、ドイツ・トルコに敗れたが、アジア初のW杯ベスト4と快進撃を見せた。
バスはソウルへ移動。ホテルにチェックインし、打ち合わせを行う。それから、ソウルの街へ繰り出した。
「7年ぶりの韓国やー!!!!」
「東方神起は、どこにおるとね?」
「東方神起?何やそれ?」
漫画しか読んでいない薫は、音楽の流行には疎い。東方神起とは、2003年に結成された男性グループで、2004年に韓国でデビュー、2005年には日本でデビューを果たした。2007年から2008年6月にかけては、ソウル・台湾・マレーシア・タイ・中国でアジアツアーを開催した。喜美子に携帯でメンバーの写真を見せてもらった。
「おわー、めっちゃ男前やな。」
「中国にも来てくれました。」
青花も東方神起を知っている。だが、韓国に行ったからと言って、東方神起に会えるとは限らない。これは、香港に行ったからと言って、ジャッキー・チェンに出会えるとは限らないのと同じ。ソウルの街を歩き、韓国料理に舌鼓。
「参鶏湯は染み渡る~!!」
「薫君、辛いものイカンとね。」
「純豆腐とか見たら、真っ赤やん。絶対辛いで。」
あっさりした味わいの上海料理とは、また違った味わいの韓国料理に満足する青花。
「韓国菜、好吃!!」(韓国料理、美味しい!!)
翌日から撮影。韓国の首都 ソウルで行う。夜の闇の中、黒いドレスに身を包んだ青花。繁華街 梨泰院の綺羅びやかなネオンを背景に撮る。
「ええよ、ええよ。」
「K-POPアイドルみたいやけん。」
ソウルのホテルのプールでも撮影。黒いビキニを着て、髪を結った青花に、薫は思わず息を呑む。
「西施みたいや。」
「薫君、例えが古か。」
椅子に座り、妖艶な表情を浮かべる。プールで泳いでいる所を収める。大人になった、かつての少女を懐かしみながら、シャッターを切る。
ソウルでの撮影は順調に進み、後半は済州島で撮影する。ソウルから済州へ移動。済州島は、朝鮮半島南西部に位置する火山島でリゾート地になっている。まだ海開きはしていないが、ビーチで撮影する。
「可愛いよ。」
純白のドレスで、砂浜を歩く様子。かつてジュニアアイドルを撮影していた頃を思い出す。感慨深い心境になりながら、シャッターを切りまくる薫。
「ええよ。これやこれ。」
「楽しそうやけんね。」
済州島の温暖な気候もあり、いい雰囲気で撮影は進行した。
「薫さん、私に惚れましたか?」
「う、うん…。」
「薫君、照れとるね。」
韓国での撮影は無事に終了。残る撮影地は、中国とシンガポールである。
「薫君と一緒に撮影出来るのも最後になるとね。」
「そうやな。やから、この「「Strawberry Film2」」は絶対いいものにする!」
「ええ写真やな。」
「札幌は楽しめたと。美味かもんがいっぱいやったし、快適に過ごせたけん。」
順調な滑り出しを見せたが、薫には当時の情勢で懸念材料があった。それは、世界的流行になっていた新型インフルエンザである。国内・海外で感染者が続出し、死亡例も頻発していた。
「新型インフルエンザやけど、感染せぇへんようにな。」
薫は喜美子と久美に、注意を促した。
2ヶ所目の東京は、薫と久美が行く予定だが、2日目に薫が新型インフルエンザにかかってしまった。久美はスタッフとモデルと共に、薫抜きで東京での撮影に行った。社宅の部屋で、自主隔離して療養する薫。喜美子からは、ドアの前に差し入れを置いてもらっている。
「ハァハァ。節々痛い…。」
2003年に白血病で入院したことがあった薫。この時は20代ということもあり、回復は早かった。あれから6年経ち、薫は34歳になった。少しずつ身体にガタが来てくる。そういったことを、病床でしみじみと痛感させられた。
「もしかしたら、俺、死相出てるんちゃう?」
2000年代に入り、海外での撮影機会が増えた薫。現地を過密スケジュールで駆け回り、撮影しまくる日々。その時は充実していたが、帰国した後の疲労感は半端ない。
「Strawberry Film2完成させるまで、死ぬ訳には行かへんからな。」
高熱で悶え苦しむ薫。何とか脱水症状を回避しながら、回復に努める。
東京での撮影が終わり、薫も回復した。
「おぉ、ええやないか!!」
「薫君、もう大丈夫?」
「お陰様でな。ここから俺も撮影するで。」
コンディションが回復した薫。残り撮影場所は海外となる。それぞれの撮影地を確認。
5月7~13日 @韓国(ソウル・済州島)
モデル 張青花
6月9~16日 @中国(北京・上海)
モデル 黄凛衣
7月7~14日 @シンガポール
モデル 杉本奈央
薫は3ヶ所連チャンで撮影する。気合十分で臨むようだ。
GWが明け、薫は喜美子と共に韓国へ赴く。スタッフ達と共に関西国際空港へ集合し、仁川国際空港へ向かう。現地集合という形で出会う。
「ニーハオ!!久しぶりですね。」
「ニーハオ!!久しぶりやな!!」
5年ぶりに再会した張青花。黒髪が伸び、色気が増したようだ。初めて会った時は、中国が反日ムードの中で撮影した。韓国は久しぶりの薫と喜美子。ホテルへ向かうバスの中で、沁み沁みと7年前の韓国でのエピソードを振り返る。
「あのW杯以来やな。」
「あれは面白かったとね。」
遡ること2002年6月、17th2002FIFAW杯日韓大会のグループリーグが終わり、決勝トーナメントから韓国へ移動して撮影することになった。薫にとっては、1997年の香港旅行以来の海外で、韓国は初めてであった。撮影では韓国の試合を担当し、大田・光州・ソウルなどを廻った。
「安貞桓スゲェ!!!」
「PK戦、最後はホン・ミョンボか。ホン・ミョンボ決めたー!!!!アジア初のベスト4?!スゲェ!!!!!」
韓国はイタリア・スペインを撃破、ドイツ・トルコに敗れたが、アジア初のW杯ベスト4と快進撃を見せた。
バスはソウルへ移動。ホテルにチェックインし、打ち合わせを行う。それから、ソウルの街へ繰り出した。
「7年ぶりの韓国やー!!!!」
「東方神起は、どこにおるとね?」
「東方神起?何やそれ?」
漫画しか読んでいない薫は、音楽の流行には疎い。東方神起とは、2003年に結成された男性グループで、2004年に韓国でデビュー、2005年には日本でデビューを果たした。2007年から2008年6月にかけては、ソウル・台湾・マレーシア・タイ・中国でアジアツアーを開催した。喜美子に携帯でメンバーの写真を見せてもらった。
「おわー、めっちゃ男前やな。」
「中国にも来てくれました。」
青花も東方神起を知っている。だが、韓国に行ったからと言って、東方神起に会えるとは限らない。これは、香港に行ったからと言って、ジャッキー・チェンに出会えるとは限らないのと同じ。ソウルの街を歩き、韓国料理に舌鼓。
「参鶏湯は染み渡る~!!」
「薫君、辛いものイカンとね。」
「純豆腐とか見たら、真っ赤やん。絶対辛いで。」
あっさりした味わいの上海料理とは、また違った味わいの韓国料理に満足する青花。
「韓国菜、好吃!!」(韓国料理、美味しい!!)
翌日から撮影。韓国の首都 ソウルで行う。夜の闇の中、黒いドレスに身を包んだ青花。繁華街 梨泰院の綺羅びやかなネオンを背景に撮る。
「ええよ、ええよ。」
「K-POPアイドルみたいやけん。」
ソウルのホテルのプールでも撮影。黒いビキニを着て、髪を結った青花に、薫は思わず息を呑む。
「西施みたいや。」
「薫君、例えが古か。」
椅子に座り、妖艶な表情を浮かべる。プールで泳いでいる所を収める。大人になった、かつての少女を懐かしみながら、シャッターを切る。
ソウルでの撮影は順調に進み、後半は済州島で撮影する。ソウルから済州へ移動。済州島は、朝鮮半島南西部に位置する火山島でリゾート地になっている。まだ海開きはしていないが、ビーチで撮影する。
「可愛いよ。」
純白のドレスで、砂浜を歩く様子。かつてジュニアアイドルを撮影していた頃を思い出す。感慨深い心境になりながら、シャッターを切りまくる薫。
「ええよ。これやこれ。」
「楽しそうやけんね。」
済州島の温暖な気候もあり、いい雰囲気で撮影は進行した。
「薫さん、私に惚れましたか?」
「う、うん…。」
「薫君、照れとるね。」
韓国での撮影は無事に終了。残る撮影地は、中国とシンガポールである。
「薫君と一緒に撮影出来るのも最後になるとね。」
「そうやな。やから、この「「Strawberry Film2」」は絶対いいものにする!」
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