Strawberry Film

橋本健太

文字の大きさ
上 下
40 / 79

第40話 2006ロンリネス

しおりを挟む
 雑誌の売れ行きが伸び悩み、中田英寿の引退と山本圭壱の不祥事も相俟って、薫の2006年の夏は悶々としたものになってしまった。
「ハァ…。」
盆休みに帰省した実家で、浮かない顔で素麺をズルズルと啜っていた。TVをつけると、見慣れないアイドルグループが出ていた。
「何やコレ?AKB48?」
主要メンバーの卒業で、影が薄くなってしまったモーニング娘。に取って代わるように現れたAKB48。秋葉原を拠点とし、「会いに行けるアイドル」というコンセプトで活動していた。だが、東京から退いている薫にとっては、何も興味の対象にもならなかった。
「オタクの中のアイドルに過ぎひんな。」
編集長の菅野は、栄養ドリンクを飲みながら仕事をしていた。個人でやりたいことを尊重し、積極的にチャレンジさせている。
「ギャルも時代によって、変化してきてるからな。」
「安室奈美恵、浜崎あゆみ、ギャルにとってのカリスマが、昔はおったんですよね。」
薫は、コーヒー牛乳をチビチビ飲みながら、ギャルについて語る。ギャルもだが、女子高生に抱いていたロマンや美学、それが時代と共に変化していることを痛感した。
「ギャルとか女子高生の聖地って、どこですかね?」
「原宿やな。」
「原宿、よし、そこ行こう!!」
今度の「いちご🖤みるく」「シュークリーム」のワンコーナーに、東京の女子高生事情というテーマの企画を載せることにした。

 9月になり、新学期を迎えた頃を見計らい、薫は東京へ撮影に行った。若者の多い渋谷・原宿・秋葉原に絞る。最初に訪れたのは、渋谷。渋谷109など若者向けのお店がいっぱい。「109、広いな。」
中を歩くと、東京の女子高生達を目撃。1990年代後半にいたガングロ・ヤマンバ系・シノラーは見かけなくなり、ルーズソックスもあまり見なくなった。
「うわ~、スカート短いな…。」
ゲームセンターへ向かう2人組の女子高生を発見。そっと近づき、インタビューを行う。
「すいません、こんにちは。」
「こんにちは。」
1人は黒髪ショートのムッチリした子で、もう1人は茶髪ショートのスレンダーな子。
「大阪の芸能事務所Starの専属カメラマンをしております香塚薫と言います。」
薫は名刺を見せる。
「えっ?!芸能事務所?!やっば~!」
「原宿の竹下通りじゃなくて、渋谷109でスカウト?!」
はしゃぐ女子高生。薫は本題を切り出す。
「今回、東京の女子高生について色々と調べてます。雑誌の企画でね。」
黒髪ショートの子は、ゆかり、茶髪ショートの子は、夏美という名前で、17歳の高校2年生。
「プリクラ撮りに行きます?」
「えっ、いいの?」
夏美に誘われ、薫はプリクラに行った。

 プリクラに入ると、2人は鞄を置いて、制服を脱ぎ始めた。
「別に、ヌード撮影やないから脱がんでも…。」
「知らないんですか?」
「今流行の全裸プリクラですよ。」
「流行りなん?」
薫は東京の流行には疎い。
「ゆかりちゃんはピンクで、夏美ちゃんは黒のパンツやねんな。」
雑誌に乗せる企画は「東京で女子高生100人に聞いた!今どき女子高生は何色のパンツを履いてるの?」である。2人は裸になるが、靴下だけ履いてるのがエロい。2人は足を開いて、薫を真ん中にしてセクシーポーズ。
(ヤバい、エロいわ~!!!)
渋谷で他の女子高生にも聞いてみたが、渋谷は割と好意的に答えてくれた。久々に東京グルメを堪能する。
「そばの汁濃い!!!」

 女子高生で賑わう原宿でも調査。竹下通りは多くの女子高生がいた。
「は~、ようけおるな。」
みんなスカート短い。「ギャルサー」にいるようなギャル系の女子高生もいた。
「ホンマにギャルおったー!!!」
ギャルに話しかけていくが、悉く撃沈した。
「パンツ見せてって?キッモ~!!!」
「変態オッサンカメラマン!!」
ギャル達から、散々キモいと言われ、薫はヘコんでいる。
「キモいとか言うなや…。クレープ美味い…。」
それでも粘り強く行き、女子高生のパンツの色を聞き出せた。原宿から離れ、新宿歌舞伎町へ行った。
「伏魔殿という感じやな…。」
そこで、女子高生2人に出会えた。黒い制服で女子校の子だと言う。
「パンツ見たいの?」
「別に減るものじゃないし。」
躊躇うことなく、パンツを見せてくれた。
「ありがとう!!」
2人は、見知らぬオジサンに逆ナンパをして、ホテルへ向かっていった。
「半端ないな。」

 秋葉原で、オタクや女子高生達に雑誌の知名度を聞くも、あっさり撃沈。
「「「いちご🖤みるく」」?「「シュークリーム」」?自分は知りませんな!」
「何そのダサい名前?」
「時代は「「セブンティーン」」だし!」
時代はギャル。ジュニアアイドルでは太刀打ち出来ない。色々打ちのめされた感があったが、企画は成功した。

「東京で女子高生100人に聞いた!今どき女子高生は何色のパンツを履いてるのか?」
白 24人
黒 33人
青 10人
赤 9人
黄 8人
ピンク 16人

「今は、黒やねんな。」
あの純白のパンティから見える、ぷっくりとした秘部とムッチリした太もも。それらが調和したエロチズム。全てが美しく見える。時代の変化を感じつつ、薫は心のどこかに孤独を感じていた。2006年は、どこか寂しさを感じた年であった。
「「「ワンナイR&R」」終わるんや…。」
ゴリエ・轟さん・リサコと個性豊かなキャラクターに笑わせてもらっていた。ワンナイのエンドロールを見て、薫はイチゴミルクを飲みながら泣いた。
「フォトォウファラスァァァァァァン…。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...