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第39話 寂しさ
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春になり、薫はグラビアの仕事に勤しんだ。3月下旬のある日、薫の元に一通の手紙が届いた。それは結婚式の招待状で、送り主は倉橋優子だった。
「拝啓
早春の候 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
お久しぶりです。薫さん。この度私、倉橋優子は結婚することになりました。お相手は、国体にも出場したサッカー選手です。4月14日に私の地元の吹田市の万博記念公園にある迎賓館にて、結婚式を行います。是非、足を運んで下さい。」
薫が写真集を担当した彼女からの手紙に、驚きと喜びが隠せなかった。
「優子ちゃん、結婚するんや!!おめでたいな~!!」
思えば、薫が優子と初めて出会ったのは2000年の3月。薫がモーニング娘にハマり、ミニモニやプッチモニも追っかけていた頃だった。当時、優子は18歳で高校生。黒髪ショートで水泳をやっている彼女。思春期の身体に食い込むスクール水着、薫はその可愛さに一目惚れした。
(桂正和の「「I,,s」」で、一貴が泉ちゃんに出会ったシーンみたいや。)
2001年には、城崎温泉で撮影。彼女の裸を収められた。
「薫さん、照れてるんですか?」
「照れては無いで。」
夏に、彼女が来年に卒業することを発表した時は、寂しさを抱いた。
「優子ちゃんと、日韓W杯観たかったな。」
「薫さん、いつか私が大人になった時に、また会えますよ。」
翌年、優子は芸能界から卒業。その後は連絡がなかった。
「優子ちゃん…。裸を直接見たんは俺だけやな。芸能界では。」
桜が満開の陽気な日、4月14日 大阪 迎賓館。薫は、新婦の関係者として参列。ウェディングドレスに身を包んだ優子に、薫は息を呑んだ。
(優子ちゃん、色っぽくなったな…。)
相手は、顎髭を整え、色黒の端正な顔立ちをした逞しい男性。
(サッカー選手や言うてたな。あの肩幅、ゴールキーパーか?)
優子の幸せを祈り、盛大に祝った。5月になり、雑誌の売上は下がる一方だった。そんな時に、あるドラマを見た。
「ん?何やコレ?」
それは、「ギャルサー」と言うドラマだった。藤木直人主演で、渋谷を舞台にしたギャルのサークル ギャルサーが絡んだ群像劇。
「東京、そんなにギャルおるんや。」
若者向け雑誌の「セブンティーン」「ポップティーン」に押され、「いちご🖤みるく」「シュークリーム」は売れなくなっていた。
「ギャルか…。」
優子が結婚したことは、素直に喜んでいたが、雑誌が売れずに悩んでいた薫は、結婚せずにいることへ、どこか劣等感を抱いていた。
どこか気分が沈んだまま、夏を迎えた。6月に18th2006FIFAW杯ドイツ大会が開幕。W杯では、前回の日韓W杯で「W杯の中の日常」と言うテーマで、日本と韓国で撮影を行った。あの時は、日本のW杯初勝利&決勝トーナメント進出、韓国のアジア初のベスト4と快進撃を目撃。充実した時間を過ごせた。今回は、撮影に行っていないのと、日本のグループステージの組み合わせもあって、浮かない様子だった。
18th2006FIFAW杯ドイツ大会
グループF
ブラジル
クロアチア
オーストラリア
日本
前回王者ブラジルが、大きな壁になる。前回の得点王 ロナウドをはじめ、ロナウジーニョ・ロベルト・カルロスの他、カカ・アドリアーノ・ルイス・ファジアーノなどのスターが台頭。選手層は厚い。復活を期すクロアチアも油断出来ない。日韓W杯で韓国をベスト4に導いたフース・ヒディング率いるオーストラリアは、プレーオフでウルグアイを退けるなど地力はある。
「薫君、この組み合わせは厳しいけんね。」
「あぁ、初戦でオーストラリアを倒せへんかったら、もう厳しいで。」
当時の日本代表は、ジーコが監督で、中田英寿・中村俊輔・小野伸二など豊富なタレントを擁している。ジーコは前任者のトルシエと違い、個の融合と選手の自主性を重んじるタイプ。W杯予選では、2次予選でオマーン・インド・シンガポール、最終予選でイラン・バーレーン・北朝鮮と対戦。合計で11勝1敗となったが、7試合で1点差と苦戦を強いられていた。それでも、アジアカップでは反日ムードの中国で、逆境を跳ね除け、国内組が意地を見せて頂点に立った。個のタレントは豊富だが、トルシエのような明確な戦術に欠けているのが難点。
「ジーコは、戦術があまりな…。相手が相手やからな。」
不安を抱えたまま、W杯が開幕。
2006年6月12日 第1戦 VSオーストラリア
日本とドイツの時差は8時間。23時に放送された。中村俊輔・中田英寿・小野伸二などを擁し、最強世代と言われた日本代表への期待値は高い。日本は、26分に中村俊輔のゴールで先制。前半は1-0で折り返した。
「よし、良い流れや。」
「やけど、向こう暑そうやけん。足ば止まるとよ。」
後半、追加点を狙いに大黒将志を投入。しかし、84分、オーストラリアのロングスローからエースのティム・ケーヒルに決められ、追いつかれると、89分にミドルシュートで逆転される。更にカウンターを食らい、90+2分にアロイージに決められ、1-3と逆転負けを喫した。
「これは、痛か…。」
「嘘やろ…。」
2006年6月18日 第2戦 VSクロアチア
ここで勝利したい日本。前半に与えてしまったPKを川口能活が防いだが、柳沢敦が決定機を外してしまい、0-0と引き分けた。この時点で、ブラジル2勝 オーストラリア1勝1敗 クロアチア1分1敗 日本1分1敗と厳しい状況になった。
「ブラジル倒さなアカンのか…。厳しいで…。」
「これは難しいけん。」
2006年6月22日 第3戦 VSブラジル
決勝トーナメント進出には、3点差で勝たなければいけない。後がない日本は、前半から果敢に攻める。34分に玉田圭司のゴールで先制する。
「よっしゃー!!ブラジルから先制や!!」
「マイアミの奇跡みたいなことが、ドイツで起きると!!」
しかし、この1点がブラジルを本気にさせた。45+1分にロナウドに決められると、53分にジュニーニョ、59分にジウベルトに決められた。最後は81分にロナウドにやられ、1-4で敗れた。日本は1分2敗 勝ち点1 2得点7失点で撃沈した。
「王国ブラジルば、怒らせたけん。フルボッコにされたと…。」
センターサークルに倒れ込む中田英寿。日本サッカーの1つの時代の終わりを感じさせた。
「切ない終わり方やな…。」
W杯後の7月3日、中田英寿が引退を発表。
「ヒデ引退すんの?!」
更に、薫にとって、ある意味衝撃のニュースが飛び込んだ。7月17日に極楽とんぼの山本圭壱が未成年少女に猥褻行為を働き、吉本興業から契約解除された。
「何やってんの?!アイツ!!!」
「拝啓
早春の候 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
お久しぶりです。薫さん。この度私、倉橋優子は結婚することになりました。お相手は、国体にも出場したサッカー選手です。4月14日に私の地元の吹田市の万博記念公園にある迎賓館にて、結婚式を行います。是非、足を運んで下さい。」
薫が写真集を担当した彼女からの手紙に、驚きと喜びが隠せなかった。
「優子ちゃん、結婚するんや!!おめでたいな~!!」
思えば、薫が優子と初めて出会ったのは2000年の3月。薫がモーニング娘にハマり、ミニモニやプッチモニも追っかけていた頃だった。当時、優子は18歳で高校生。黒髪ショートで水泳をやっている彼女。思春期の身体に食い込むスクール水着、薫はその可愛さに一目惚れした。
(桂正和の「「I,,s」」で、一貴が泉ちゃんに出会ったシーンみたいや。)
2001年には、城崎温泉で撮影。彼女の裸を収められた。
「薫さん、照れてるんですか?」
「照れては無いで。」
夏に、彼女が来年に卒業することを発表した時は、寂しさを抱いた。
「優子ちゃんと、日韓W杯観たかったな。」
「薫さん、いつか私が大人になった時に、また会えますよ。」
翌年、優子は芸能界から卒業。その後は連絡がなかった。
「優子ちゃん…。裸を直接見たんは俺だけやな。芸能界では。」
桜が満開の陽気な日、4月14日 大阪 迎賓館。薫は、新婦の関係者として参列。ウェディングドレスに身を包んだ優子に、薫は息を呑んだ。
(優子ちゃん、色っぽくなったな…。)
相手は、顎髭を整え、色黒の端正な顔立ちをした逞しい男性。
(サッカー選手や言うてたな。あの肩幅、ゴールキーパーか?)
優子の幸せを祈り、盛大に祝った。5月になり、雑誌の売上は下がる一方だった。そんな時に、あるドラマを見た。
「ん?何やコレ?」
それは、「ギャルサー」と言うドラマだった。藤木直人主演で、渋谷を舞台にしたギャルのサークル ギャルサーが絡んだ群像劇。
「東京、そんなにギャルおるんや。」
若者向け雑誌の「セブンティーン」「ポップティーン」に押され、「いちご🖤みるく」「シュークリーム」は売れなくなっていた。
「ギャルか…。」
優子が結婚したことは、素直に喜んでいたが、雑誌が売れずに悩んでいた薫は、結婚せずにいることへ、どこか劣等感を抱いていた。
どこか気分が沈んだまま、夏を迎えた。6月に18th2006FIFAW杯ドイツ大会が開幕。W杯では、前回の日韓W杯で「W杯の中の日常」と言うテーマで、日本と韓国で撮影を行った。あの時は、日本のW杯初勝利&決勝トーナメント進出、韓国のアジア初のベスト4と快進撃を目撃。充実した時間を過ごせた。今回は、撮影に行っていないのと、日本のグループステージの組み合わせもあって、浮かない様子だった。
18th2006FIFAW杯ドイツ大会
グループF
ブラジル
クロアチア
オーストラリア
日本
前回王者ブラジルが、大きな壁になる。前回の得点王 ロナウドをはじめ、ロナウジーニョ・ロベルト・カルロスの他、カカ・アドリアーノ・ルイス・ファジアーノなどのスターが台頭。選手層は厚い。復活を期すクロアチアも油断出来ない。日韓W杯で韓国をベスト4に導いたフース・ヒディング率いるオーストラリアは、プレーオフでウルグアイを退けるなど地力はある。
「薫君、この組み合わせは厳しいけんね。」
「あぁ、初戦でオーストラリアを倒せへんかったら、もう厳しいで。」
当時の日本代表は、ジーコが監督で、中田英寿・中村俊輔・小野伸二など豊富なタレントを擁している。ジーコは前任者のトルシエと違い、個の融合と選手の自主性を重んじるタイプ。W杯予選では、2次予選でオマーン・インド・シンガポール、最終予選でイラン・バーレーン・北朝鮮と対戦。合計で11勝1敗となったが、7試合で1点差と苦戦を強いられていた。それでも、アジアカップでは反日ムードの中国で、逆境を跳ね除け、国内組が意地を見せて頂点に立った。個のタレントは豊富だが、トルシエのような明確な戦術に欠けているのが難点。
「ジーコは、戦術があまりな…。相手が相手やからな。」
不安を抱えたまま、W杯が開幕。
2006年6月12日 第1戦 VSオーストラリア
日本とドイツの時差は8時間。23時に放送された。中村俊輔・中田英寿・小野伸二などを擁し、最強世代と言われた日本代表への期待値は高い。日本は、26分に中村俊輔のゴールで先制。前半は1-0で折り返した。
「よし、良い流れや。」
「やけど、向こう暑そうやけん。足ば止まるとよ。」
後半、追加点を狙いに大黒将志を投入。しかし、84分、オーストラリアのロングスローからエースのティム・ケーヒルに決められ、追いつかれると、89分にミドルシュートで逆転される。更にカウンターを食らい、90+2分にアロイージに決められ、1-3と逆転負けを喫した。
「これは、痛か…。」
「嘘やろ…。」
2006年6月18日 第2戦 VSクロアチア
ここで勝利したい日本。前半に与えてしまったPKを川口能活が防いだが、柳沢敦が決定機を外してしまい、0-0と引き分けた。この時点で、ブラジル2勝 オーストラリア1勝1敗 クロアチア1分1敗 日本1分1敗と厳しい状況になった。
「ブラジル倒さなアカンのか…。厳しいで…。」
「これは難しいけん。」
2006年6月22日 第3戦 VSブラジル
決勝トーナメント進出には、3点差で勝たなければいけない。後がない日本は、前半から果敢に攻める。34分に玉田圭司のゴールで先制する。
「よっしゃー!!ブラジルから先制や!!」
「マイアミの奇跡みたいなことが、ドイツで起きると!!」
しかし、この1点がブラジルを本気にさせた。45+1分にロナウドに決められると、53分にジュニーニョ、59分にジウベルトに決められた。最後は81分にロナウドにやられ、1-4で敗れた。日本は1分2敗 勝ち点1 2得点7失点で撃沈した。
「王国ブラジルば、怒らせたけん。フルボッコにされたと…。」
センターサークルに倒れ込む中田英寿。日本サッカーの1つの時代の終わりを感じさせた。
「切ない終わり方やな…。」
W杯後の7月3日、中田英寿が引退を発表。
「ヒデ引退すんの?!」
更に、薫にとって、ある意味衝撃のニュースが飛び込んだ。7月17日に極楽とんぼの山本圭壱が未成年少女に猥褻行為を働き、吉本興業から契約解除された。
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