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第37話 2005アート
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海外と国内を往復し、薫は自分の夢の単独写真集作成を、心から楽しんでいた。ここまで長崎・沖縄・香港での撮影が終わり、後はベトナムとタイでの撮影を残すのみ。多忙だが、やりがいを感じ、熱心に仕事に励む。
「おぉ、薫。写真集はどうや?」
「あ、編集長。おかげ様で順調ですよ。あれ?編集長、ちょっと痩せました?」
久々によく見た編集長は、白髪が交じり、少しやつれたように見える。
「あぁ、ちょっと人間ドッグに引っかかってもうてな。最近、病気がちになっとる。まぁ、大丈夫やから、薫君も無理せんと、自分のペースで頑張りや。」
初めて出会った時は、ハードボイルドとダンディズムを漂わせながらも、どこかコミカルなキャラクターで、薫の心を瞬く間に掴んだ。そのエネルギッシュさが薄れ、少し弱った様子の編集長の後ろ姿に、薫は一抹の寂しさを感じた。息抜きを入れながら、撮影の打ち合わせを行う。7月2日、薫は約11年ぶりにガンバ大阪の試合を観に行った。
「久しぶりやな。万博!!」
2005J1第13節 ガンバ大阪VS東京ヴェルディ1969、薫にとっては、ボコボコにされた苦い記憶が蘇る。だが、今のガンバ大阪は東京ヴェルディを上回る強さを見せて、後半は6得点を奪い、7-1で快勝した。
「やったー!!!見たか、コノヤロー!!」
力を貰い、初の東南アジアでの撮影に乗り込む。
7月中旬、ベトナムへ乗り込んだ。首都ハノイに着いた時、熱帯のムワッとした湿気と暑さが漂った。
「うわー、ジメジメしとる…。」
南北に伸びるベトナムは、北部は亜熱帯気候で四季があり、南部は熱帯モンスーン気候で乾季と雨季がある。ベトナム北部の首都ハノイと北西部のラオスと国境を接している都市 ディエンビエンフーで撮影する。ハノイはベトナムの政治と文化の都で、東南アジア有数の世界都市である。ディエンビエンフーは小さな町で、かつて第一次インドシナ戦争(1954)でディエンビエンフーの戦いが起きたことで有名。ハノイのホテルにチェックイン。撮影の打ち合わせを行う。薫にとっては初の東南アジア。ベトナムで初めて食べるものは、ベトナム名物のフォー。米粉で作った麺を牛や鶏ベースのあっさりスープでいただく。レンゲで一口スープを飲むと、あっさりとした味わいで、酷暑にヤられた身体に染み渡る。
「はぁ~、エエ味や。」
麺を食べ、サイドメニューの油条(北京語:ヨウティヤオ 広東語:ヤウティウ)も程良い塩気でよく合う。
「薫さん、このパンみたいなヤツも美味しいですね。」
「香港では、粥の中に入っとるで。」
翌日から撮影。ベトナムは亜熱帯温帯夏雨気候で、7月の最高気温は40℃に達する上に降水量も多く蒸し暑い。ハノイの市場や遺跡で撮影。街中を歩くと、美女が多いことに気づく。
「ベトナム、美女多いなぁ~!」
ベトナムの民族衣装 アオザイに着替えた香織。白い色彩がよく似合う。ハノイでの撮影を終え、ディエンビエンフーへ移動。
「のどかな所やな。」
首都ハノイと打って変わって、のどかな町並みと山岳地帯のディエンビエンフー。イメージビデオを、ラオスの国境沿いでも撮影。田園風景が広がるディエンビエンフー。ふと、こんな話が出た。
「薫さん、「「ディエンビエンフー」」っていう漫画知ってますか?」
「あぁ、知ってるで!!」
ディエンビエンフーは、西島大介が描いた漫画。ベトナム戦争を題材にし、可愛らしいイラストと凄惨な描写で描かれている。主人公は、日経アメリカ人のヒカル・ミナミという青年。アメリカ軍に従事している戦場カメラマン。
「主人公のヒカル君が、何か薫さんに似てるんですよ。」
実年齢より幼く見える・女好き・能天気な所が共通している。
「言われてみりゃ、似とるわな。名前も。」
その漫画を再現したシーンも撮影し、ベトナムでの撮影は無事終了。
8月になり、Strawberry Filmの撮影も最後になる。最後の行き先は、ベトナムと同じく東南アジアのタイ。最後に連れて行くグラビアアイドルは、最年少の貴島裕香。高校の夏休み期間ということで、宿題も持って行く。
「薫さん、お久しぶりです!!」
「裕香ちゃん、久しぶりやな!!髪も伸びたし、大人びたな。」
黒髪を結った裕香は、一昨年よりも大人っぽくなっている。真夏の日本より、更に暑いタイへ向かった。
「やって来ました!!タイ王国!!」
「タイも南国やな~!!暑すぎやろ!!」
タイは東南アジア有数の仏教国で、立憲君主制国家でもあり、王室と王家が敬われている。歴史としては、東南アジアで唯一植民地にされず、自力で近代化した。日本との関わりも深い親日国である。首都バンコクとリゾート地のプーケット島で撮影する。暑いバンコクで、タイ料理をいただく。タイ料理は、香辛料・香味野菜・ハーブを多用し、辛味・酸味・甘味を組み合わせた味わいが特徴。裕香は初めての海外で、タイ料理も初めて食べる。辛い物が好きな裕香は、激辛焼きそばのパッキーマオとスープのトムヤムクンを、辛い物が苦手な薫は、グリーンカレーと鳥の丸焼きのガイヤーンをいただく。
「エスニックな味がして美味か~!」
「パッキーマオ、湯気だけでも咽そうになる…。」
タイ料理で英気を養い、撮影を行う。仏教国で戒律も厳しいので、寺院・仏像・僧侶はなるべく撮影しないようにして、市場や風景と合わせて撮影。ゾウに乗っているシーンも収める。
「ゾウさん、可愛いけん!」
「デカイな~。ゾウさん。んっ?」
ゾウは、薫目掛けて鼻息を食らわした。
「うわっ?!ゾウの鼻息臭っさ!!」
撮影後半は、リゾート地のプーケット島へ移動。タイ南部に位置するタイ最大の島である。青い海に感動する2人。
「こんな所、あったとね。」
「こんなリゾート地、あったんや。」
裕香は高校生と言うことで、スクール水着で撮影。南国にスク水姿が映える。
「おわー、めっちゃエエやん!!」
白いワンピースに着替えた裕香を撮影。この青い海の美しい光景、薫は何処かで見たような気がした。
「「「天国に1番近い島」」みたいや。」
タイでの撮影を終え、これにてStrawberry Filmの撮影は終了した。
秋になり、薫はグラビア撮影とStrawberry Filmの編集と出版準備で、忙しい日々を過ごした。12月になり、発売日が決まり、Strawberry Filmは発売された。
「やったー!!念願の写真集出せたー!!」
写真集を出せたことで、薫は大喜びした。2005年は夢が1つ叶った実りある1年となった。
「おぉ、薫。写真集はどうや?」
「あ、編集長。おかげ様で順調ですよ。あれ?編集長、ちょっと痩せました?」
久々によく見た編集長は、白髪が交じり、少しやつれたように見える。
「あぁ、ちょっと人間ドッグに引っかかってもうてな。最近、病気がちになっとる。まぁ、大丈夫やから、薫君も無理せんと、自分のペースで頑張りや。」
初めて出会った時は、ハードボイルドとダンディズムを漂わせながらも、どこかコミカルなキャラクターで、薫の心を瞬く間に掴んだ。そのエネルギッシュさが薄れ、少し弱った様子の編集長の後ろ姿に、薫は一抹の寂しさを感じた。息抜きを入れながら、撮影の打ち合わせを行う。7月2日、薫は約11年ぶりにガンバ大阪の試合を観に行った。
「久しぶりやな。万博!!」
2005J1第13節 ガンバ大阪VS東京ヴェルディ1969、薫にとっては、ボコボコにされた苦い記憶が蘇る。だが、今のガンバ大阪は東京ヴェルディを上回る強さを見せて、後半は6得点を奪い、7-1で快勝した。
「やったー!!!見たか、コノヤロー!!」
力を貰い、初の東南アジアでの撮影に乗り込む。
7月中旬、ベトナムへ乗り込んだ。首都ハノイに着いた時、熱帯のムワッとした湿気と暑さが漂った。
「うわー、ジメジメしとる…。」
南北に伸びるベトナムは、北部は亜熱帯気候で四季があり、南部は熱帯モンスーン気候で乾季と雨季がある。ベトナム北部の首都ハノイと北西部のラオスと国境を接している都市 ディエンビエンフーで撮影する。ハノイはベトナムの政治と文化の都で、東南アジア有数の世界都市である。ディエンビエンフーは小さな町で、かつて第一次インドシナ戦争(1954)でディエンビエンフーの戦いが起きたことで有名。ハノイのホテルにチェックイン。撮影の打ち合わせを行う。薫にとっては初の東南アジア。ベトナムで初めて食べるものは、ベトナム名物のフォー。米粉で作った麺を牛や鶏ベースのあっさりスープでいただく。レンゲで一口スープを飲むと、あっさりとした味わいで、酷暑にヤられた身体に染み渡る。
「はぁ~、エエ味や。」
麺を食べ、サイドメニューの油条(北京語:ヨウティヤオ 広東語:ヤウティウ)も程良い塩気でよく合う。
「薫さん、このパンみたいなヤツも美味しいですね。」
「香港では、粥の中に入っとるで。」
翌日から撮影。ベトナムは亜熱帯温帯夏雨気候で、7月の最高気温は40℃に達する上に降水量も多く蒸し暑い。ハノイの市場や遺跡で撮影。街中を歩くと、美女が多いことに気づく。
「ベトナム、美女多いなぁ~!」
ベトナムの民族衣装 アオザイに着替えた香織。白い色彩がよく似合う。ハノイでの撮影を終え、ディエンビエンフーへ移動。
「のどかな所やな。」
首都ハノイと打って変わって、のどかな町並みと山岳地帯のディエンビエンフー。イメージビデオを、ラオスの国境沿いでも撮影。田園風景が広がるディエンビエンフー。ふと、こんな話が出た。
「薫さん、「「ディエンビエンフー」」っていう漫画知ってますか?」
「あぁ、知ってるで!!」
ディエンビエンフーは、西島大介が描いた漫画。ベトナム戦争を題材にし、可愛らしいイラストと凄惨な描写で描かれている。主人公は、日経アメリカ人のヒカル・ミナミという青年。アメリカ軍に従事している戦場カメラマン。
「主人公のヒカル君が、何か薫さんに似てるんですよ。」
実年齢より幼く見える・女好き・能天気な所が共通している。
「言われてみりゃ、似とるわな。名前も。」
その漫画を再現したシーンも撮影し、ベトナムでの撮影は無事終了。
8月になり、Strawberry Filmの撮影も最後になる。最後の行き先は、ベトナムと同じく東南アジアのタイ。最後に連れて行くグラビアアイドルは、最年少の貴島裕香。高校の夏休み期間ということで、宿題も持って行く。
「薫さん、お久しぶりです!!」
「裕香ちゃん、久しぶりやな!!髪も伸びたし、大人びたな。」
黒髪を結った裕香は、一昨年よりも大人っぽくなっている。真夏の日本より、更に暑いタイへ向かった。
「やって来ました!!タイ王国!!」
「タイも南国やな~!!暑すぎやろ!!」
タイは東南アジア有数の仏教国で、立憲君主制国家でもあり、王室と王家が敬われている。歴史としては、東南アジアで唯一植民地にされず、自力で近代化した。日本との関わりも深い親日国である。首都バンコクとリゾート地のプーケット島で撮影する。暑いバンコクで、タイ料理をいただく。タイ料理は、香辛料・香味野菜・ハーブを多用し、辛味・酸味・甘味を組み合わせた味わいが特徴。裕香は初めての海外で、タイ料理も初めて食べる。辛い物が好きな裕香は、激辛焼きそばのパッキーマオとスープのトムヤムクンを、辛い物が苦手な薫は、グリーンカレーと鳥の丸焼きのガイヤーンをいただく。
「エスニックな味がして美味か~!」
「パッキーマオ、湯気だけでも咽そうになる…。」
タイ料理で英気を養い、撮影を行う。仏教国で戒律も厳しいので、寺院・仏像・僧侶はなるべく撮影しないようにして、市場や風景と合わせて撮影。ゾウに乗っているシーンも収める。
「ゾウさん、可愛いけん!」
「デカイな~。ゾウさん。んっ?」
ゾウは、薫目掛けて鼻息を食らわした。
「うわっ?!ゾウの鼻息臭っさ!!」
撮影後半は、リゾート地のプーケット島へ移動。タイ南部に位置するタイ最大の島である。青い海に感動する2人。
「こんな所、あったとね。」
「こんなリゾート地、あったんや。」
裕香は高校生と言うことで、スクール水着で撮影。南国にスク水姿が映える。
「おわー、めっちゃエエやん!!」
白いワンピースに着替えた裕香を撮影。この青い海の美しい光景、薫は何処かで見たような気がした。
「「「天国に1番近い島」」みたいや。」
タイでの撮影を終え、これにてStrawberry Filmの撮影は終了した。
秋になり、薫はグラビア撮影とStrawberry Filmの編集と出版準備で、忙しい日々を過ごした。12月になり、発売日が決まり、Strawberry Filmは発売された。
「やったー!!念願の写真集出せたー!!」
写真集を出せたことで、薫は大喜びした。2005年は夢が1つ叶った実りある1年となった。
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