Strawberry Film

橋本健太

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第22話 2000シンク

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    夏になり、20世紀最後の切なさと21世紀の新時代への思いが入り交じった気分で、グラビア撮影に勤しんだ。廃刊になってしまった雑誌への未練を断ち切り、刊行される新雑誌「いちご🖤みるく」「シュークリーム」のグラビアを企画し、女の子達の可愛さを上手く引き出せるよう、建設的に考えた。
「新雑誌の「「いちご🖤みるく」」は8月に、「「シュークリーム」」は9月に出す。20世紀最後の夏、思い切ったチャレンジしてみたいからな。私も。共に頑張ろう!」
ハットを被った茶色い眼鏡の編集長 菅野智弘 46歳。ダンディズム漂う静けさがある一方、漫画が好きでヤンジャンとヤンマガを愛読している。「銃夢」「3×3EYES サザンアイズ」「賭博黙示録 カイジ」にハマっている。編集長と密にコミュニケーションを図ろうと考えた薫は、仕事終わりに編集長の奢りでの夕食についていったりした。編集長は、おでんが大好物で、「暑い時期だからこそ、熱いものを食べれば元気が出る」と考えていた。
「今日は私の奢りや。遠慮なくいってくれ。」
「いただきます!」
薫と喜美子が、仲良く鍋をつついて、おでんを食べているのを、彼は微笑ましく見ていた。
「グラビア撮影やけど、テーマは「「夏休み」」で行きたい。何かこういうシチュエーションで撮りたい、という希望はあるか?」
彼は、膝の上にメモ帳を置き、積極的にアイディアを聞こうとしている。
「はい。」
「はい。薫君。」
「学校のプールとかで、プール掃除の様子も込みでのグラビアがいいです。」
「ほうほう。それはお着換えシーンも込みかい?」
「はい。」
「喜美子ちゃんは?」
「私は夏祭りの様子とか撮りたいです。」
彼はメモに記録し、これらの案を採用することにした。
「今日が7月3日やから、来週には「「いちご🖤みるく」」の撮影を開始する。頑張るぞ!」

 迎えた撮影日、薫はモデルの女子高生と対面し、色々と見極めて撮影するシチュエーションを決めた。撮影場所は大阪府内のとある廃校。モデルの子は3人。

・黒崎れいな(17)
・笹山博子(18)
・森山優佳(18)

体操服を着て、プールをデッキブラシで掃除するところを撮る。薫は濡れないようにしながら、ローアングルで写真を撮る。
「プールが綺麗になっていくの見ると、自分も心が綺麗になります。」
「ええこと言うやん。博子ちゃん。」
更衣室の場面は、お着替えということで、喜美子が撮影する。
「タオルで隠してね。」
「こうですか?」
それから、スクール水着に着替え、プールで泳ぐところを写真撮影。薫達は、ボートに乗って、水上から撮る。
「いいね、いいね。」
「プール楽しい🖤」
「薫さん、興奮してます?」
「べ、別に…。」 
プールでの撮影を終え、そこからの1週間は様々なシチュエーションで撮影する。撮影した写真を編集し、グラビアについてるコメントを作成。発売日の8月4日に向けて、来る日も来る日も撮影と編集を繰り返した。
「忙しい時こそ、息抜きを大事にな。」
「はい、編集長。」
「あ!3×3EYES サザンアイズ終わっとる!!」
薫は、グラビア撮影の合間、息抜きする所は息抜きしていた。
「I,,s終わりか…。ひょっとしたら、桂正和先生、この作品を以てジャンプから退くのか?」
「ONE PIECEは偉大なる航路(グランドライン)入ったんやな。このMr.3、セコいヤツやな!」
こうして8月4日、「いちご🖤みるく」2000年8月号が刊行された。
「やったな!!」
「ありがとうございます!!」

    息つく間もなく、「シュークリーム」のグラビア撮影に入る。この雑誌のコンセプトは、「ふわふわした感じの女子」。8月になり、Whiteberry「夏祭り」という曲が出た頃、夏祭りをテーマにしたグラビアにすることが決まった。「いちご🖤みるく」に登場した黒崎れいなちゃんも、浴衣グラビアをするという。
「よろしくお願いいたします。」
黒髪を下ろし、青い浴衣に身を包んだ彼女から、また別の色気を感じた。
「ええやん。可愛いで。」
8月上旬、「シュークリーム」の撮影を行い、編集を繰り返した。20世紀最後の夏は、あっという間に終わった。

   「いちご🖤みるく」と「シュークリーム」はヒットし、薫は専属カメラマンの地位を得て、グラビア撮影に勤しんだ。10月に2000シドニーオリンピックが開幕し、かつての友人 博信は現地でスポーツカメラマンとして撮影を行っていることを知り、何だか遠い存在のように思えた。オリンピックが終了した後の11月某日、薫は博信と大阪市内の飲食店で一緒に夕食をいただいた。
「お前から誘うなんて珍しいな。」
「シドニーオリンピックの撮影してたんだって?」 
「あぁ!サッカーはベスト8と惜しい所まで行ったからな。薫は今何してんだ?」
薫は最近のことを話した。 
「そうか、雑誌の専属カメラマンか!!ええやないか!!」
「何かさ、博信が遠い存在のように思えてきてさ…。」
「何言ってんだ!お前はお前の道を行けよ。」
「ありがとう。」
博信に励まされ、薫は元気が出た。それから、「いちご🖤みるく」「シュークリーム」の2000年度最後の回が刊行され、年内の仕事は全て終わった。 
「お疲れ様でした!!来年は21世紀や!みんな頑張っていこうな!!」
「ありがとうございました!!」
みんなが帰路に着いた時、編集長は薫にこう告げた。 
「薫君、イメージビデオ撮ってみぃひんか?」
「イメージビデオ…。」
20世紀の終わりに、思わぬチャンスが舞い込んだ。21世紀に思いを馳せることが出来た。
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