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電話と裸エプロンと
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怪我をしてからずっとおっさんの所に居候している。
最初に病院に行った日に一緒に住もうって提案されて、そのまま車で俺のアパートに荷物を取りに行った。そんなに物に拘る方じゃないから、着替えの服と、ゲーム機くらい。
いつでも逃げられるように物はあまり持たない主義。組織から逃げられる時が来るとは思ってないけど、自分なりの殺し屋の在り方っていうか、うん、そんな感じ。
おっさんは不規則ながら毎日仕事に行く。俺は、組織の仕事って何をしてるのかさっぱり分からないし、情報は持ちたくないから、その辺の話はしない。
何時に帰ってくるかも分からない。昼間はヤブじじぃの病院に行ったり、ゲームでもしたり、掃除、気が向けば簡単に夕飯の準備してみたり…。んで、おっさんが帰ってきて抱かれる日もある…。
これってさ…。これって、新婚みたいじゃないか?俺新妻なのか?可愛がられてるって自信は最近ついてきてしまって、エッチの時とか名前で呼んでみたいって気持ちも出てきて、あれ?おっさんの下の名前知らないやって考えて、聞いたんだけど、なぜか教えてくれなくて。
不満だ…。いや、寝床もあって金にも困らない生活させてもらって不満とか出てくるようになるとは。俺にも欲があったんだな。
そんな時、普段かかってこないはずの相手から電話がきた。いつもはこちらから、尾行の手伝いが必要な時にだけ連絡をとる、コードネーム『I』俺と同世代で、唯一連絡先を知ってる相手だ。
「もしもし?U。怪我したって聞いてさ、こちらから連絡とらない約束だったけど、俺が尾行でヘマしてUがターゲットに怪我させられたんじゃないかって思ったら、自分で確認しないと気が済まなくなったんだ…。ごめん」
同世代と、そんな電話をするのは初めてのことで、なんて返事をしたら良いのか考えてしまっていた。
「U?」
「あぁ、ごめん。別に、お前のせいじゃないよ。俺が少し油断しただけ。怪我も大したことじゃないから。気にするようなもんじゃないよ」
「なんかU、雰囲気変わった?柔らかくなったっていうか…」
「えっ、と、そうかな」
「そうだよ。いつも用件言うだけ言ったらブツっと電話切ってただろ。自覚なかったのかよ」
『I』の声が、笑いを含んだものに変わったのが分かった。
「じゃぁ、さ…ちょっと聞いていいか?恋人がさ、下の名前教えてくれないんだけど、どうしてなんだろう…」
「わっ!U 恋人が出来たからそんな雰囲気変わったんだ!へぇ、いいなぁ、俺も欲しいなぁ」
「…アドバイスないんなら切る」
「待って待って。う~んと、何でだろう。恋人が喜びそうな事してみるとかどう?サプライズ的なさ」
「サプライズか…」
「そう!例えば、彼女がさ、裸エプロンで料理して待っててくれたら嬉しいじゃん?お金じゃなくて、その程度のサプライズ。どうかな?」
「お前、、俺と同じくらいの年だろうに、発想がオヤジくさいのな」
「そうか?男のロマンじゃん」
「ふぅん。まぁ、参考になったかわかんねーけど、ありがとな」
「俺もこんな風にUと話せて良かったよ。またな」
言うだけ言って、楽しそうな『I』は通話を切った。
お前も言うだけ言って切ってるじゃん。
仕事あるのかとかも聞きたかったのにな…。
サプライズ、か…。
すっかり裸エプロンて言葉が頭に残っちまったじゃねーかよ。
最初に病院に行った日に一緒に住もうって提案されて、そのまま車で俺のアパートに荷物を取りに行った。そんなに物に拘る方じゃないから、着替えの服と、ゲーム機くらい。
いつでも逃げられるように物はあまり持たない主義。組織から逃げられる時が来るとは思ってないけど、自分なりの殺し屋の在り方っていうか、うん、そんな感じ。
おっさんは不規則ながら毎日仕事に行く。俺は、組織の仕事って何をしてるのかさっぱり分からないし、情報は持ちたくないから、その辺の話はしない。
何時に帰ってくるかも分からない。昼間はヤブじじぃの病院に行ったり、ゲームでもしたり、掃除、気が向けば簡単に夕飯の準備してみたり…。んで、おっさんが帰ってきて抱かれる日もある…。
これってさ…。これって、新婚みたいじゃないか?俺新妻なのか?可愛がられてるって自信は最近ついてきてしまって、エッチの時とか名前で呼んでみたいって気持ちも出てきて、あれ?おっさんの下の名前知らないやって考えて、聞いたんだけど、なぜか教えてくれなくて。
不満だ…。いや、寝床もあって金にも困らない生活させてもらって不満とか出てくるようになるとは。俺にも欲があったんだな。
そんな時、普段かかってこないはずの相手から電話がきた。いつもはこちらから、尾行の手伝いが必要な時にだけ連絡をとる、コードネーム『I』俺と同世代で、唯一連絡先を知ってる相手だ。
「もしもし?U。怪我したって聞いてさ、こちらから連絡とらない約束だったけど、俺が尾行でヘマしてUがターゲットに怪我させられたんじゃないかって思ったら、自分で確認しないと気が済まなくなったんだ…。ごめん」
同世代と、そんな電話をするのは初めてのことで、なんて返事をしたら良いのか考えてしまっていた。
「U?」
「あぁ、ごめん。別に、お前のせいじゃないよ。俺が少し油断しただけ。怪我も大したことじゃないから。気にするようなもんじゃないよ」
「なんかU、雰囲気変わった?柔らかくなったっていうか…」
「えっ、と、そうかな」
「そうだよ。いつも用件言うだけ言ったらブツっと電話切ってただろ。自覚なかったのかよ」
『I』の声が、笑いを含んだものに変わったのが分かった。
「じゃぁ、さ…ちょっと聞いていいか?恋人がさ、下の名前教えてくれないんだけど、どうしてなんだろう…」
「わっ!U 恋人が出来たからそんな雰囲気変わったんだ!へぇ、いいなぁ、俺も欲しいなぁ」
「…アドバイスないんなら切る」
「待って待って。う~んと、何でだろう。恋人が喜びそうな事してみるとかどう?サプライズ的なさ」
「サプライズか…」
「そう!例えば、彼女がさ、裸エプロンで料理して待っててくれたら嬉しいじゃん?お金じゃなくて、その程度のサプライズ。どうかな?」
「お前、、俺と同じくらいの年だろうに、発想がオヤジくさいのな」
「そうか?男のロマンじゃん」
「ふぅん。まぁ、参考になったかわかんねーけど、ありがとな」
「俺もこんな風にUと話せて良かったよ。またな」
言うだけ言って、楽しそうな『I』は通話を切った。
お前も言うだけ言って切ってるじゃん。
仕事あるのかとかも聞きたかったのにな…。
サプライズ、か…。
すっかり裸エプロンて言葉が頭に残っちまったじゃねーかよ。
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