悠生が息をする為の方法

七々虹海

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 ゲーセンで考えながらゲームをしていたらもうこんな時間になっていた。
 ポケットに手を突っ込んで、ヒヤリとしたナイフの感触を確かめる。よし、冷たくて固い俺の友達がいる。

 ポケットに手を突っ込んだまま、外へ出て、連絡があった廃墟へ。ぶらぶらと気怠げな様子は普通の10代の子供に見えているだろう。

 なぁ、俺人殺しなんだ、殺し屋なんだよ、誰か捕まえてくれよ。警察呼んでくれ。たまに雑踏の中叫びたくなる言葉。それが出来たら、どんなにか楽になるのだろう。

 廃墟の周りは住宅のない草むらだった。お誂え向きな場所。こんな場所あったんだ。
 Nが現れるという時間まであと僅か。廃墟の影に身を隠す。入っていった所を刺すつもりだ。周りに何もないったって、外で刺すにはやはり人目が心配。用心に越したことはない。来るか来ないか。五分五分ってとこだろう。

 俺の勘は来ると訴えている。自分より背の高いターゲット。一息で殺すには首の動脈を狙う。じわじわ殺すなんて残虐な趣味はない。仕事として、一瞬で葬ってあげたい。苦しい時間が続かないように逝けよと願う。

 神経を研ぎ澄ませると時計の音すら煩い。集中できてる証拠。いい傾向だ。

 足音。

 来た。Nだ。

 ゆっくり、ゆっくり建物に入っていく。

 まだだ。まだ待て。集中しろ。

 せめて、苦しみませんように。

 素早く、且つ、音をたてないようにはや歩きで近づく。薄暗い所にいたから、同じく薄暗い建物の中も目が慣れてる。
 自分の心臓の音。呼吸。精神をナイフに集中させろ。
 
 今だ。

 ガツン!

 目から火花が散る。何でだ。いつもと同じ通りに動いた。鈍器と催涙スプレーか?!意識が遠くなりかける。ダメだ、ヤらなきゃヤられる世界なんだ。目を開けろ。無理なら気配で奴がいない方へ、出口の方角に足よ動せ!

「こんなガキかよ。俺の事つけてたのは」
 尾行がバレていた。あいつは尾行だけは得意にしてる。なんでだ。一先ず逃げなきゃならない。体勢を整えて、機会をまた伺って…、出口へ、人通りのある所まで全力…

「待てよ」
「うっ」
 左手を踏まれた。この痛み。靴の裏に刃物が仕込んであるのかもしれない。頭がズキズキする。左手も血が流れて脈うってる。痛い。目もまだ開かない。
「ガキぃ、どこの回しもんだ?へぇ、綺麗な顔してんな。ほんとに男か?殺すの勿体ねぇな、少し楽しませろよ」
何をされる?左手を犠牲にして、固定された刃物を横に動かそうとする。ちっ。痛いけど、今から起こるかもしれない何かに比べたら多分マシ。
「刃物で手引きちぎる気かよ。こぇーな。少し我慢してりゃすぐ済むから楽しませろって」
Nはいつの間に下げたのか、男のシンボルを出して、口の中に突っ込んできた。
「う"ぅっ」
「歪んだ顔も綺麗だな、可愛いこちゃんよぉ」
 ズボンの中で蒸れた性器の青臭い臭いが口の中に広がる。悪臭でしかない。唇も切れそうだ。
「うぐっ」
「おら、もっと奥まで咥えろよ」
更に突っ込まれて、吐き気がする。陰毛が鼻をくすぐって、気持ち悪いし、臭い。
 口いっぱいに挿れられたそれを食いちぎりたくても、いっぱいに広げられてて出来ない。
「あぁ、喉気持ち~、お前慣れてんのか?連れて帰ってペットにでもしてやろうか?あぁっ?」
 ガツガツ喉にあたって、嗚咽と生理的な涙しか出ない。舌を噛みきって死んでやろうか。舌の上では不快なそいつが行き来してて、舌も噛めない。

 おっさん…俺、もう少し撫でて欲しかったよ…。

 ダメだ、諦めるな弱気になるな。あれだ、あの瞬間を待て。

 ごくっ。飲み込めない唾液が口の端から流れる。もうじき嘔吐するかもしれない。気持ち悪い。耐えろ。任務を遂行しろ。こんな最低な遂行の仕方は考えたことなかった。ベッドの上で自らの身を差し出して相手をヤるような手口、嫌だ。
「おら、飲み込めよ」
 異物を更に前後に速くピストンされ、気持ち悪いあれが喉に粘着質な水鉄砲のように飛んできた。Nが射精感で弛緩した。今だ。

 左手に刃物が深く刺さる感触、頸動脈をザックリ切り裂く音、Nが地べたに倒れる音が同時に聞こえた気がした。


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