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どのくらいの月日がたっただろう。パパが言った。
「悠生。外へ出る時がきたよ」
何を見せてくれるんだろう。一緒に出かけるのは初めての事でドキドキした。心臓が早く打つのを感じて、あぁ俺もこんな感情があったんだと嬉しくなった。ここにきた時以来久しぶりに見る外。なにか。なにか楽しそうな事が起きそうな気がする。
ついた場所は、海沿いの、広くて寂れた倉庫のような場所だった。一気に沸き上がる不安。ここでは楽しい事が起こるなんて思えない。嫌な汗だけが出てきて、心拍数が高いままなのは変わらない。そこには数人、俺と同じくらいの年だろう子供がいて。パパと何人かの怖そうな大人がいて。その中でもバパは真ん中に立って、言ったんだ。
「みんな、今までの成果を見せてくれ。」
偽物のナイフを持たされ、擬似的な殺しあいを強要された。
あぁ、パパの子供は俺だけじゃなかったのか。愛されてるわけじゃなかった。また1人、暗闇に立たされている気分になった。同世代の叫び声、こちらに向かってくる分からぬ悪意とナイフ。殺らなきゃ殺られる。
気がついた時には立っている子供は俺だけだった。みんな様々な箇所から血を流したり、手足が変な方向に曲がっていた。呻き声泣き声。虚しかった。他人から飛んできた血だけが温かかった。
「さすが悠生だな。思った通りだ」
パパが拍手をしながら近づいてきて肩を抱かれ頭を撫でられたけど、もう何も感じなかった。
「あんた誰?」
「私はとある組織の一応頭をしてるんだよ、悠生。飾りだけのトップだがね。悠生には組織専属の殺し屋として働いてもらう。いいね」
嫌とは言わせない声だった。飾りなんて嘘だろ。先生が本気の射撃を見せてくれた時よりも怖い。油断したら喰われてしまう怖さがある。目の前にいるのは今までの優しいパパではない。あれは一時の幻だったんだ。
「分かったよ、ボス」
「切り替えが早くて助かるよ。それでこそ私の悠生だな」
こうして俺は組織の殺し屋として働く事になった。コードネームは『U』他の子供たちは、組織の下っ端として働くもの、見込みがなくて男娼にされたもの。見かけの良い奴はボスたちの慰みものになった奴もいた。俺はそうならなくて良かった。
どうせ1人で産まれて1人で死んでいくんだろうな。そうしてきっと若くして死んでいくんだ。誰も悲しむ人もいない。俺の代わりなんて、ボスはストックしてるはず。
それでも誰か。誰かの特別になれたら…という気持ちを心の奥底に眠らせていた。
眠らせていたはずなのに、あのおっさんと出会って話してるうちにな。カチリと鍵が開いた音が聞こえた気がしたんだ。
「悠生。外へ出る時がきたよ」
何を見せてくれるんだろう。一緒に出かけるのは初めての事でドキドキした。心臓が早く打つのを感じて、あぁ俺もこんな感情があったんだと嬉しくなった。ここにきた時以来久しぶりに見る外。なにか。なにか楽しそうな事が起きそうな気がする。
ついた場所は、海沿いの、広くて寂れた倉庫のような場所だった。一気に沸き上がる不安。ここでは楽しい事が起こるなんて思えない。嫌な汗だけが出てきて、心拍数が高いままなのは変わらない。そこには数人、俺と同じくらいの年だろう子供がいて。パパと何人かの怖そうな大人がいて。その中でもバパは真ん中に立って、言ったんだ。
「みんな、今までの成果を見せてくれ。」
偽物のナイフを持たされ、擬似的な殺しあいを強要された。
あぁ、パパの子供は俺だけじゃなかったのか。愛されてるわけじゃなかった。また1人、暗闇に立たされている気分になった。同世代の叫び声、こちらに向かってくる分からぬ悪意とナイフ。殺らなきゃ殺られる。
気がついた時には立っている子供は俺だけだった。みんな様々な箇所から血を流したり、手足が変な方向に曲がっていた。呻き声泣き声。虚しかった。他人から飛んできた血だけが温かかった。
「さすが悠生だな。思った通りだ」
パパが拍手をしながら近づいてきて肩を抱かれ頭を撫でられたけど、もう何も感じなかった。
「あんた誰?」
「私はとある組織の一応頭をしてるんだよ、悠生。飾りだけのトップだがね。悠生には組織専属の殺し屋として働いてもらう。いいね」
嫌とは言わせない声だった。飾りなんて嘘だろ。先生が本気の射撃を見せてくれた時よりも怖い。油断したら喰われてしまう怖さがある。目の前にいるのは今までの優しいパパではない。あれは一時の幻だったんだ。
「分かったよ、ボス」
「切り替えが早くて助かるよ。それでこそ私の悠生だな」
こうして俺は組織の殺し屋として働く事になった。コードネームは『U』他の子供たちは、組織の下っ端として働くもの、見込みがなくて男娼にされたもの。見かけの良い奴はボスたちの慰みものになった奴もいた。俺はそうならなくて良かった。
どうせ1人で産まれて1人で死んでいくんだろうな。そうしてきっと若くして死んでいくんだ。誰も悲しむ人もいない。俺の代わりなんて、ボスはストックしてるはず。
それでも誰か。誰かの特別になれたら…という気持ちを心の奥底に眠らせていた。
眠らせていたはずなのに、あのおっさんと出会って話してるうちにな。カチリと鍵が開いた音が聞こえた気がしたんだ。
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