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モーテルにて
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戦いながら素性を話し、同じ組織の者だと伝えるようだろうなと思っていたのだが、呆気なくUは私を組織の者と認識した。
物おじしない様子で車の助手席に乗り込む。
「早く顔の汚れ落としたいからさ、近くのモーテルでも入ってよ。時間たつと落ちづらいからさ」
「確か10分も走らせればあったはずですね。聞いてもいいかな?」
「何を?」
「君の噂はかねがね聞いていました。殺しをした後は敵味方関係なく攻撃をすると。なぜ私に攻撃しなかったのですか?」
「そりゃ噂だろ?確かに組織の人間を間違ってヤリそうになった事もあったよ。俺に殺意をもって近づいてきた奴らね。俺を殺して名をあげてやろうってバカども。あんたは、おっさんは殺意どころか敵意もなかっただろ?俺が強いのか試してみようっていう戦う素振りもなかった。だから誰なのか聞いた。そんだけ」
何となく言ってる事は分かった。「噂は噂だよ、変な噂流すなよな」確かに鵜呑みにしていた私も浅はかだった。だが。
「U。私はこれでもまだ20代なんですよ。おっさんと呼ばれるにはちょっと早いんじゃないですかね」
「おっさんはおっさんだろ。16だか7だか忘れたけど、そのくらいの俺からしたらおっさんだから認めるんだな」
冷たくもなくからかってるわけでもなく、さも当然だというような言い方。ふ~ん、益々好感度あがりますね。早くその血を落とした顔も見てみたいものです。
廃れた町の外れにあったのは、こちらも寂れたモーテル。入口に監視カメラなんてついてない。
返り血を浴びた少年を連れて入るには、格好の立地と条件だった。
受付の老婆は、訳ありの者達に慣れてしまったのか、一言も発しないまま鍵を持った腕だけを突きだしてきた。料金だの支払い方法は読めば分かるだろというスタイルらしい。
受付の横にあった、こちらもギシギシ音のする壊れかけのエレベーターに乗る。Uは怖がりもせずに奥の角に背を持たれかけたものの、三階にはすぐ着いた。レトロなドアに古びた鍵。
このモーテルも、直に廃墟になるのかもしれない。
スプリングの壊れかけたベッドに腰かけて、シャワーを浴びているUを待つ。さて、どうしましょうね。好奇心で押し倒してみたい気持ちもあるんですが、なにせ相手はただの可愛い少年ではなく、あの『U』ですから。
そりゃぁ私も、伊達にボスの右腕なんか勤めてるわけじゃないですけどね、避けられる争いは避けたいじゃないですか。そうこう考えてる間にUが出てきた。
髪をタオルで拭きながら、まさかの全裸だ。
あぁ、、、想像以上だ。
色白で無駄な肉のついてない肢体。細身で長めの手足。そしてその魅力的な身体を忘れさせるほどの圧倒的な美貌の顔。長い睫毛は自然に上を向いているし、濡れた栗色の髪はうねっているので、パーマをかけているか天然パーマなのかもしれない。
「ん?もしかしておっさん、そっち系の人?」
「あっ、あぁすみません。つい見とれてしまいましたね」
「別に減るもんじゃないし見るくらいいいけどさ。そこのガウン着て帰っていいよな。血を浴びた服また着るの嫌でさ。取ってよ」
「いいんじゃないでしょうか。罪悪感があるならそのガウン分の金額プラスして置いていきますけど」
「別に。そういやこの業界、案外そっちの人多いね」
「そうかもしれませんね。私は自分の遺伝子を持った子供なんて想像もつかないので、女性とそういった関係になるなんて考えられませんでしたからね」
「ふぅん。恋人とかいるの?」
「いた時期もありましたが、今はいませんよ」
答えながら、私はこの少年に試されているのかと久々に自分の心臓の跳ねる音を聞いた。私の作り上げたポーカーフェイスが、口調が、『U』を前に崩れそうだった。
Uを抱いてみたい。欲しい。この会話はそういった行為が出来るかの質疑応答なんだろうか。私はUのお眼鏡に叶うのだろうか。
「さっぱりしたし、帰るか。ボスに報告しなきゃな」
ハッと現実に戻された。そうだ、ボスに報告に帰らなきゃならない。
饒舌だったUはまた帰りの車内では、空を見つめて心ここにあらずという表情だった。
殺し屋が任務を終えた後の気持ちなんて、到底私には分からないので、話しかけず運転にだけ集中した。知りたい。この少年の事が。
殺し屋、U、屈強な男じゃなくてむしろ守りたくなるような容貌の美少年。性格はさっぱりしてそうだ。まだこれしか知らない少年の事に興味が湧いてしまい、知りたくて堪らなかった。
物おじしない様子で車の助手席に乗り込む。
「早く顔の汚れ落としたいからさ、近くのモーテルでも入ってよ。時間たつと落ちづらいからさ」
「確か10分も走らせればあったはずですね。聞いてもいいかな?」
「何を?」
「君の噂はかねがね聞いていました。殺しをした後は敵味方関係なく攻撃をすると。なぜ私に攻撃しなかったのですか?」
「そりゃ噂だろ?確かに組織の人間を間違ってヤリそうになった事もあったよ。俺に殺意をもって近づいてきた奴らね。俺を殺して名をあげてやろうってバカども。あんたは、おっさんは殺意どころか敵意もなかっただろ?俺が強いのか試してみようっていう戦う素振りもなかった。だから誰なのか聞いた。そんだけ」
何となく言ってる事は分かった。「噂は噂だよ、変な噂流すなよな」確かに鵜呑みにしていた私も浅はかだった。だが。
「U。私はこれでもまだ20代なんですよ。おっさんと呼ばれるにはちょっと早いんじゃないですかね」
「おっさんはおっさんだろ。16だか7だか忘れたけど、そのくらいの俺からしたらおっさんだから認めるんだな」
冷たくもなくからかってるわけでもなく、さも当然だというような言い方。ふ~ん、益々好感度あがりますね。早くその血を落とした顔も見てみたいものです。
廃れた町の外れにあったのは、こちらも寂れたモーテル。入口に監視カメラなんてついてない。
返り血を浴びた少年を連れて入るには、格好の立地と条件だった。
受付の老婆は、訳ありの者達に慣れてしまったのか、一言も発しないまま鍵を持った腕だけを突きだしてきた。料金だの支払い方法は読めば分かるだろというスタイルらしい。
受付の横にあった、こちらもギシギシ音のする壊れかけのエレベーターに乗る。Uは怖がりもせずに奥の角に背を持たれかけたものの、三階にはすぐ着いた。レトロなドアに古びた鍵。
このモーテルも、直に廃墟になるのかもしれない。
スプリングの壊れかけたベッドに腰かけて、シャワーを浴びているUを待つ。さて、どうしましょうね。好奇心で押し倒してみたい気持ちもあるんですが、なにせ相手はただの可愛い少年ではなく、あの『U』ですから。
そりゃぁ私も、伊達にボスの右腕なんか勤めてるわけじゃないですけどね、避けられる争いは避けたいじゃないですか。そうこう考えてる間にUが出てきた。
髪をタオルで拭きながら、まさかの全裸だ。
あぁ、、、想像以上だ。
色白で無駄な肉のついてない肢体。細身で長めの手足。そしてその魅力的な身体を忘れさせるほどの圧倒的な美貌の顔。長い睫毛は自然に上を向いているし、濡れた栗色の髪はうねっているので、パーマをかけているか天然パーマなのかもしれない。
「ん?もしかしておっさん、そっち系の人?」
「あっ、あぁすみません。つい見とれてしまいましたね」
「別に減るもんじゃないし見るくらいいいけどさ。そこのガウン着て帰っていいよな。血を浴びた服また着るの嫌でさ。取ってよ」
「いいんじゃないでしょうか。罪悪感があるならそのガウン分の金額プラスして置いていきますけど」
「別に。そういやこの業界、案外そっちの人多いね」
「そうかもしれませんね。私は自分の遺伝子を持った子供なんて想像もつかないので、女性とそういった関係になるなんて考えられませんでしたからね」
「ふぅん。恋人とかいるの?」
「いた時期もありましたが、今はいませんよ」
答えながら、私はこの少年に試されているのかと久々に自分の心臓の跳ねる音を聞いた。私の作り上げたポーカーフェイスが、口調が、『U』を前に崩れそうだった。
Uを抱いてみたい。欲しい。この会話はそういった行為が出来るかの質疑応答なんだろうか。私はUのお眼鏡に叶うのだろうか。
「さっぱりしたし、帰るか。ボスに報告しなきゃな」
ハッと現実に戻された。そうだ、ボスに報告に帰らなきゃならない。
饒舌だったUはまた帰りの車内では、空を見つめて心ここにあらずという表情だった。
殺し屋が任務を終えた後の気持ちなんて、到底私には分からないので、話しかけず運転にだけ集中した。知りたい。この少年の事が。
殺し屋、U、屈強な男じゃなくてむしろ守りたくなるような容貌の美少年。性格はさっぱりしてそうだ。まだこれしか知らない少年の事に興味が湧いてしまい、知りたくて堪らなかった。
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