20 / 59
一族②
しおりを挟む
10時10分前。美智さんに呼ばれてる時間まで後少しだ。朝食の後は歯を磨いてからぼんやりしていた。本も持ってきてない、勉強道具もない。
仕方がないから昨日遅かった分、少しだけウトウトしてみた。寝られるなという頃晴空を思い出してしまいダメだった。
この部屋に感じてた違和感、窓がない。地下だから当たり前といえば当たり前なんだけど、二階の僕の部屋の窓を開くと風向きによって海の潮の香りがした。あれが僕の当たり前だったから不思議な感じがする。
まだこの家は僕にとって巨大迷路だから、隣室の貴嶺さんに頼って美智さんに呼ばれてる部屋に連れてってもらう。一緒に入ってくれるのかと思ってた貴嶺さんの方から足音がしないから振り替えってみたら「俺も色々と忙しいんだよ、凪だけ行ってきな」と、僕が入るのを見送ってくれた。帰り道…う~ん、何となくなら分かるかもしれない。
「あの、美智さんえっと…」
「とりあえず座りなさいよ」
昨日と同じ位置で座って待っててくれた美智さんはどうにも迫力があって、口ごもってしまった。
僕も昨日と同じ位置、美智さんの対面に座る。
「足崩して。長話苦手だから簡潔に話そうと思ってはいるけど」
「あっ、はい」
「ここ近江家の話は一切両親からは訊いてないのね?」
「はい。親戚の話は聞いた事なかったからいるなんて知らなかったし、お母さんに双子の妹がいたのも…」
「そう。単刀直入に話すと、うちは視える者が産まれやすい家系なの。中でも双子が産まれるとそのどちらかは必ずと言っていい程に視えるの。それは霊的な物だったり、未来予知だったり。未来予知は出来なくても霊的なモノにアドバイスしてもらう事が出来たり、中には自分の中に死んだ人だの予知能力者を呼んで予知を行うものも。そういった能力を使って代々政界と関わってきた家系なのよ。昔はそういった方々の住んでいる都に近江家も家を構えてたんだけど、この島の位置が霊的能力を向上させやすいって分かってからはここに一族全員で住んでるって話なの。私達の場合は私が産まれた時から強い力を持ってうまれて、姉さんは劣性だった。あっ、力を持ってない者が劣性ね。あなたのお父さんも劣性だったわ」
ここまで喋った美智さんはふぅっと溜め息をつき手元のベルを押した。ほんの少しの間待っただけでお茶とお菓子が運ばれてきた。
「お茶でいいわよね?はぁ、私あんまり説明とかするのは苦手なのよ。凪は学校の勉強は好きだった?」
「好き…でも嫌いでもなくやらなきゃって感じだったかな…。本を読んでる方が好きだった」
「インドア派なの?」
「昔から熱を出したり、風邪をひきやすかったから、室内にいる事が多くて…。そんなだから自然と本を読むようになった…って感じかな。晴空がよく隣に居てくれた時は……」
ベッドで転がる僕の横に座ってる晴空を思い出した。熱があったら額のシートを代えてくれたり、手を握ってくれたり。だから僕は寝込むのが嫌いじゃなかったんだ。
「晴空ってあなたの双子の兄よね」
「そう、です」
「ふぅん…」
お茶を飲んで一息ついている美智さんを真似て僕も飲んでみた。
晴空、晴空に会いたいと考えたら胸が熱くて、何かが込み上げてきそうだった。涙も出そうだった。貴嶺さんに着いていくと決めた時に泣かない、弱音もはかないつもりだったのに、既に涙が出そうで情けなくなる。
「まだ家族と離れるには幼かったみたいね。仕方がないわ、力を持ってしまったんだもの。と言ってもあなたの力はまだ安定してないって聞いてる。地下の部屋の近くに通路があるから、その通路から外に出た泉で力の使い方学びなさい。しばらくはそれが課題ね。学校?そんなもの行かなくていいわよ。ここにはないし。学校行かなくてもここで稼げるようになるんだから。どうしても勉強もしたかったら『知』の建屋に行けば図書室あるわよ。貴嶺に聞いてね」
美智さんがお茶を飲みきって、目の前の急須から注いでまた飲み干す。
「説明するって喉渇くわよね。あとここの島、うちの一族しか住んでないからどこ行っても凪の事はもう知れ渡ってるはずよ。迷子になったらその辺の人探して。この屋敷の中で同じ格好してる人達は私たちの世話をしてくれたり……まぁもう1つの役目もあるんだけど。アレルギーとかは?」
「ない、です。風邪ひきやすいのもなくなってきたし…」
「そう。良かった。とりあえずこの辺話しとけばいいかしら。…姉さんに目元が似てるわね。あっ、そしたら私にも似てるってことね」
ふふふと可笑しそうに笑った美智さんはやっぱり双子だけあってお母さんと笑いかたが似ていた。
仕方がないから昨日遅かった分、少しだけウトウトしてみた。寝られるなという頃晴空を思い出してしまいダメだった。
この部屋に感じてた違和感、窓がない。地下だから当たり前といえば当たり前なんだけど、二階の僕の部屋の窓を開くと風向きによって海の潮の香りがした。あれが僕の当たり前だったから不思議な感じがする。
まだこの家は僕にとって巨大迷路だから、隣室の貴嶺さんに頼って美智さんに呼ばれてる部屋に連れてってもらう。一緒に入ってくれるのかと思ってた貴嶺さんの方から足音がしないから振り替えってみたら「俺も色々と忙しいんだよ、凪だけ行ってきな」と、僕が入るのを見送ってくれた。帰り道…う~ん、何となくなら分かるかもしれない。
「あの、美智さんえっと…」
「とりあえず座りなさいよ」
昨日と同じ位置で座って待っててくれた美智さんはどうにも迫力があって、口ごもってしまった。
僕も昨日と同じ位置、美智さんの対面に座る。
「足崩して。長話苦手だから簡潔に話そうと思ってはいるけど」
「あっ、はい」
「ここ近江家の話は一切両親からは訊いてないのね?」
「はい。親戚の話は聞いた事なかったからいるなんて知らなかったし、お母さんに双子の妹がいたのも…」
「そう。単刀直入に話すと、うちは視える者が産まれやすい家系なの。中でも双子が産まれるとそのどちらかは必ずと言っていい程に視えるの。それは霊的な物だったり、未来予知だったり。未来予知は出来なくても霊的なモノにアドバイスしてもらう事が出来たり、中には自分の中に死んだ人だの予知能力者を呼んで予知を行うものも。そういった能力を使って代々政界と関わってきた家系なのよ。昔はそういった方々の住んでいる都に近江家も家を構えてたんだけど、この島の位置が霊的能力を向上させやすいって分かってからはここに一族全員で住んでるって話なの。私達の場合は私が産まれた時から強い力を持ってうまれて、姉さんは劣性だった。あっ、力を持ってない者が劣性ね。あなたのお父さんも劣性だったわ」
ここまで喋った美智さんはふぅっと溜め息をつき手元のベルを押した。ほんの少しの間待っただけでお茶とお菓子が運ばれてきた。
「お茶でいいわよね?はぁ、私あんまり説明とかするのは苦手なのよ。凪は学校の勉強は好きだった?」
「好き…でも嫌いでもなくやらなきゃって感じだったかな…。本を読んでる方が好きだった」
「インドア派なの?」
「昔から熱を出したり、風邪をひきやすかったから、室内にいる事が多くて…。そんなだから自然と本を読むようになった…って感じかな。晴空がよく隣に居てくれた時は……」
ベッドで転がる僕の横に座ってる晴空を思い出した。熱があったら額のシートを代えてくれたり、手を握ってくれたり。だから僕は寝込むのが嫌いじゃなかったんだ。
「晴空ってあなたの双子の兄よね」
「そう、です」
「ふぅん…」
お茶を飲んで一息ついている美智さんを真似て僕も飲んでみた。
晴空、晴空に会いたいと考えたら胸が熱くて、何かが込み上げてきそうだった。涙も出そうだった。貴嶺さんに着いていくと決めた時に泣かない、弱音もはかないつもりだったのに、既に涙が出そうで情けなくなる。
「まだ家族と離れるには幼かったみたいね。仕方がないわ、力を持ってしまったんだもの。と言ってもあなたの力はまだ安定してないって聞いてる。地下の部屋の近くに通路があるから、その通路から外に出た泉で力の使い方学びなさい。しばらくはそれが課題ね。学校?そんなもの行かなくていいわよ。ここにはないし。学校行かなくてもここで稼げるようになるんだから。どうしても勉強もしたかったら『知』の建屋に行けば図書室あるわよ。貴嶺に聞いてね」
美智さんがお茶を飲みきって、目の前の急須から注いでまた飲み干す。
「説明するって喉渇くわよね。あとここの島、うちの一族しか住んでないからどこ行っても凪の事はもう知れ渡ってるはずよ。迷子になったらその辺の人探して。この屋敷の中で同じ格好してる人達は私たちの世話をしてくれたり……まぁもう1つの役目もあるんだけど。アレルギーとかは?」
「ない、です。風邪ひきやすいのもなくなってきたし…」
「そう。良かった。とりあえずこの辺話しとけばいいかしら。…姉さんに目元が似てるわね。あっ、そしたら私にも似てるってことね」
ふふふと可笑しそうに笑った美智さんはやっぱり双子だけあってお母さんと笑いかたが似ていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる