初恋奇譚

七々虹海

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 正一くんとの行為に溺れた僕は、前にもまして正一くんの事ばかり考えるようになりました。

 自宅での食事中ぼんやりとしていて静かに母に叱られたほどです。
 のめり込んではいけない。分かってはいても、この思いからも、一度知ってしまった快楽の波からも逃れることは難しいのです。



 考え、葛藤し葛藤しました。
 別れが辛いのは分かっていました。世継ぎは家はどうしようと、鈍くなった頭でぼんやりと考え続けました。
 正一くんの家の事もあります。僕たち二人だけの問題ではないのです。



 卒業間近の逢瀬の日、僕は「今日でこの関係は終わりにしよう。君と出会ってから今日までの事を生涯の思い出とし、一生抱えて心の奥底では君だけを想って生きていくよ」と伝えました。 
 
 身を引き裂かれる思いとはこのことだと思いました。
 家を継がなければならないので当然だと心の底では分かってはいたのです。

 正一くんも悲しいかもしれませんが分かってくれているはずです。決死の思いで伝えたはずの言葉でしたが、目の前の正一くんは微笑んでいました。笑顔で見送ってくれるつもりでしょうか。

「何言ってるの?今日これから始まるんだよ」
大好きなはずの正一くんの笑顔が邪悪なモノに見えました。




※ ※ ※


 あれから何日何ヵ月、はたまた何年がたったのでしょうか。僕は未だにあの地下の部屋にいます。
 僕の手記は正一くんが持ってきてくれたので、ここで書いています。
 正一くんは魔術でも使ったのでしょうか。
家は弟が継いだのでしょうか。分かりません。

 分かることは毎晩のように正一くんがここに来てくれる事と僕たちは永遠に一緒だということです。

 繋がれた手の紐がたまに不便な時もありますが、些細な事です。

 正一くんは結婚したのでしょうかするのでしょうか。分かりません。今となってはどうでも良いことです。

 僕たち二人だけの空間があり正一くんが僕に跨がる。それだけ分かってれば良いのではないでしょうか。

 今日もほら、軽やかに階段を降りてくる音が聞こえてきました。また粗相をしたので叱られるでしょうか。

 叱っても叩いても最後には僕を受け入れてくれて愛してくれるのが分かっているから平気です。

 きっと、こうして生涯共にしたら生まれ変わっても一緒だと思います。

 けれどどうか、この手記を見たあなた。
清一は幸せだと父と母に伝えてもらえないでしょうか?心配していると思うのです。僕はここで幸せに暮らしています。

どうか……どうか……


よろしくお願いします。


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