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5.まさか貴方は、、
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旧アルカディア王城。
今はゴルゴン王国では東城と呼ばれている。
城へ入ると自分が居た時とさほど変わりは無かった。
ただ、兵士や役人の制服がゴルゴン風に変わっていた。
迎えに出てきた侍女が思っても見なかった事を言った。
「王との謁見なので、まずは身支度を整えさせて頂きます。」
「いいえ、このままで。」
「なりません。御命令でございます。ご案内致します。」
仕方がなく部屋に案内をされるとそこは昔、自分が使っていた部屋よりもはるかに豪華で調度品も一級品揃いだった。
湯浴みをして久しぶりにシルク生地にレースやシフォンの飾りのドレスを着て髪を結われる。
(確かに村の農家の服は薄汚れている。
けれどこのドレスはちょっと豪華過ぎない?それに装飾品まで身につけるなんて。)
「こちらの部屋で頭を下げてお待ち下さい。声をかけられるまであげませんように。直ぐに陛下は来られます。」
言われた通りにしていると王の入場を知らせる鐘の音が鳴らされた。
ドアが開く音と複数の足音が響いた。
「では、陛下。何かあれば直ぐにお呼びください。我々は失礼します。」
「ああ。」
低い静かな声が響いた。
部屋から皆が退室する音がしてバタンと扉を閉める音がした。
(どうなっているの?)
物音がしなくなり静寂が訪れる。
(どうして何も言わないの?もう王も居なくなったとか?)
不安がピークになった時、声をかけられた。
「名前を申せ。」
「はい。リリアーナ・バークスでございます。」
「何故バークスなのだ?」
「結婚いたしましてリリアーナ・オズモンドからバークスになりました。」
「いつだ?」
「先月でございます。」
椅子から立ち上がる音がしてこちらに向かって歩く音がする。少し離れた所で止まった。
「顔をあげよ。」
やっと許しが出て顔を上げると目の前に立つ顔を見て驚いた。
「ジェド!あぁ、、生きていたの?」
リリアーナは驚き手を伸ばして嬉し涙を流したが、ジェラルドがリリアーナを見下げる瞳は険しく冷たくてニコリともしない。その瞳に立ち止まってしまった。
「リリアーナ、2年ぶりだ。痩せたな。」
「あ、、あ、、私、、。」
リリアーナは、彼の表情に大いに戸惑った。何からどう話せばよいか上手く言葉が出てこない。
「まさか護衛に付けた者と婚姻を結ぶとは。何か言う事はないか?」
リリアーナは一気に顔色を無くした。
「ごめんなさい、、2年待ったのよ。貴方が死んだと思って、、。」
ジェラルドは、無表情でリリアーナを見つめ続けている。
「他に言いたい事は無いか?」
「何故?2年間も音沙汰が無かったの?だから私、、、生きる為にはロイドと結婚が必要だったの。許して。」
リリアーナは、堪らなくなりジェラルドと視線を合わす事が出来ずに床を見た。
手が伸びアゴを引き上げられ顔を上に向かせられた。
「ロイドに惚れたのか?」
「何をいう、、」
リリアーナは言葉を途中で止めてしまった。
会いたくて会いたくて堪らなかった人。なのに私はもうロイドの妻だ。
胸に飛び込む事は出来ない。
それに何を今更言っても無意味だわ。
リリアーナは、複雑な思いで今すぐ逃げ帰りたかった。
「せめて貴方からの連絡があれば、、、。こんな事にならなかったわ。」
一気に吐き出すと、我慢していた涙が溢れ出した。
ジェラルドは、その涙を手ですくうと表情を変えず静かな声で応じた。
「他には?」
「何故なの?何故敵国の王になっているの?」
ジェラルドは何故かさらに厳しい眼差しになった。
リリアーナは彼からこんな眼差しを受けた事は無かった。
堪らなくなり目を閉じた時、フッと耳元で小さな声がした。
「泣くな。」
ジェラルドは、立ち上がり涙が止まらないリリアーナを置いてドアへ向かった。
「ジェド!ジェラルド!」
リリアーナは思ってもいない言葉をかけられ気持ちが溢れて大声で名前を呼んだ。
彼は一瞬、立ち止まったが振り返る事なく部屋を後にした。
今はゴルゴン王国では東城と呼ばれている。
城へ入ると自分が居た時とさほど変わりは無かった。
ただ、兵士や役人の制服がゴルゴン風に変わっていた。
迎えに出てきた侍女が思っても見なかった事を言った。
「王との謁見なので、まずは身支度を整えさせて頂きます。」
「いいえ、このままで。」
「なりません。御命令でございます。ご案内致します。」
仕方がなく部屋に案内をされるとそこは昔、自分が使っていた部屋よりもはるかに豪華で調度品も一級品揃いだった。
湯浴みをして久しぶりにシルク生地にレースやシフォンの飾りのドレスを着て髪を結われる。
(確かに村の農家の服は薄汚れている。
けれどこのドレスはちょっと豪華過ぎない?それに装飾品まで身につけるなんて。)
「こちらの部屋で頭を下げてお待ち下さい。声をかけられるまであげませんように。直ぐに陛下は来られます。」
言われた通りにしていると王の入場を知らせる鐘の音が鳴らされた。
ドアが開く音と複数の足音が響いた。
「では、陛下。何かあれば直ぐにお呼びください。我々は失礼します。」
「ああ。」
低い静かな声が響いた。
部屋から皆が退室する音がしてバタンと扉を閉める音がした。
(どうなっているの?)
物音がしなくなり静寂が訪れる。
(どうして何も言わないの?もう王も居なくなったとか?)
不安がピークになった時、声をかけられた。
「名前を申せ。」
「はい。リリアーナ・バークスでございます。」
「何故バークスなのだ?」
「結婚いたしましてリリアーナ・オズモンドからバークスになりました。」
「いつだ?」
「先月でございます。」
椅子から立ち上がる音がしてこちらに向かって歩く音がする。少し離れた所で止まった。
「顔をあげよ。」
やっと許しが出て顔を上げると目の前に立つ顔を見て驚いた。
「ジェド!あぁ、、生きていたの?」
リリアーナは驚き手を伸ばして嬉し涙を流したが、ジェラルドがリリアーナを見下げる瞳は険しく冷たくてニコリともしない。その瞳に立ち止まってしまった。
「リリアーナ、2年ぶりだ。痩せたな。」
「あ、、あ、、私、、。」
リリアーナは、彼の表情に大いに戸惑った。何からどう話せばよいか上手く言葉が出てこない。
「まさか護衛に付けた者と婚姻を結ぶとは。何か言う事はないか?」
リリアーナは一気に顔色を無くした。
「ごめんなさい、、2年待ったのよ。貴方が死んだと思って、、。」
ジェラルドは、無表情でリリアーナを見つめ続けている。
「他に言いたい事は無いか?」
「何故?2年間も音沙汰が無かったの?だから私、、、生きる為にはロイドと結婚が必要だったの。許して。」
リリアーナは、堪らなくなりジェラルドと視線を合わす事が出来ずに床を見た。
手が伸びアゴを引き上げられ顔を上に向かせられた。
「ロイドに惚れたのか?」
「何をいう、、」
リリアーナは言葉を途中で止めてしまった。
会いたくて会いたくて堪らなかった人。なのに私はもうロイドの妻だ。
胸に飛び込む事は出来ない。
それに何を今更言っても無意味だわ。
リリアーナは、複雑な思いで今すぐ逃げ帰りたかった。
「せめて貴方からの連絡があれば、、、。こんな事にならなかったわ。」
一気に吐き出すと、我慢していた涙が溢れ出した。
ジェラルドは、その涙を手ですくうと表情を変えず静かな声で応じた。
「他には?」
「何故なの?何故敵国の王になっているの?」
ジェラルドは何故かさらに厳しい眼差しになった。
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堪らなくなり目を閉じた時、フッと耳元で小さな声がした。
「泣くな。」
ジェラルドは、立ち上がり涙が止まらないリリアーナを置いてドアへ向かった。
「ジェド!ジェラルド!」
リリアーナは思ってもいない言葉をかけられ気持ちが溢れて大声で名前を呼んだ。
彼は一瞬、立ち止まったが振り返る事なく部屋を後にした。
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