聖女様、ご遊学は終ったのです。早くお戻りを!

牡丹

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11.ウィリアムの心の中

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ウィリアムは、部下達を故郷へ送った日から眠り続けた。心配したエリザベスは、毎日、彼に祝福を贈った。
6日目にやっと目醒めると、ビジネスを一条奈々美に任せ、日中はリビングの棚に置かれた誰も入っていない仏像を物思いに眺めて過ごしていた。

エリザベスがいつものように祝福を送っているとウィリアムが質問をした。

「エリちゃん、故郷に帰れず仲間のいないこの世界に1人っきりになるって想像した事あるかい?」

「今の私みたいな?」

「ちょっと違うな。君は1人だけど帰るだろ?このまま帰れなくなると思った事はないかい?」

「帰れない、、考えた事ないわ。何故そんな事を聞くの?」

吉之助と一緒の時さえ私はいつか帰る者だ。と思って過ごしてきた。

「可笑しな事を聞いたね。後2体で私の探し物も終わる。ここに1人残るってどうなのかなと思ってね。」

「故郷を捨てるって事ですか?
私は、、私は出来ません。責務があるから。」

「迷いがないね。」

「残ろうか迷ってるんですか?」

「ま、そんなとこだ。」

エリザベスが訳を聞こうとした時、一条奈々美が部屋に入って来たのでこの話は終わってしまった。

「ウィリアム、光さんから電話で隣町の道祖神が年代的な可能性があるんだって。」

「待っていたよ。現地で待ち合わせよう。打合せをたのむよ。」

電話を切ると2人に声をかけた。

「よし活動再開だ。近くだから良いリハビリになる。ついでに空っぽになってしまった仏像達を奉納しに行こう。」



光の指定した場所は住宅街で区画整理で道路が拡張される事になり道祖神も撤去が決まったらしい。
大きな楠の下にある古い道祖神は野ざらしに置かれていた。
ウィリアムは一目見るなり陽気に声をかけた。

「やあ。ギルドとルイズ。待たせたな。君達で最後だ。」 

「団長じゃないですか!本物ですか?」

「うっ、俺もう諦めてました。うっ、、。」

「私が諦める訳ないだろ?」

ウィリアムがしゃがんで仏像の頭を撫ぜた。
その様子に光が声をあげた。

「ちょっ、ちょっと!ウィリアム何やってんだ?マジ勘弁してくれよ。」

狼狽する光の横で一条奈々美がニッコリとした。

「あの2体はウィリアム様の部下達ですって。驚くわよね。ふふふ。」

「部下?なんだそれ?ったく、こんなに驚いたのは初めてだ。お前、知ってたのか?」

「私もつい最近、知ったの。」

「って事は、嬢ちゃんもか?」

「ええ。それと嬢ちゃんはやめて。」

「相変わらず素っ気ないよな。」

そう言いながら話をする奇怪な仏像を見ると大きなため息をついた。

「さぁ、急いで帰ろう。ありがとう光。
これでこの依頼は終わりだよ。本当に良くやってくれた。感謝を捧げるよ。」

「まさか話す仏像を探していたとは思っても無かったよ。」

「黙っていてすまないね。ギルドとルイズ!この光さんが居なければ君達を見つける事は難しかった。私に続け。心より感謝を捧げる。」

「心より感謝を捧げる!!」

「イヤイヤイヤ~、これ以上は、もう何も言わないでくれ。頼むから。」

「ふふふ。光さんでもビックリするのね。」

「ふふふ。らしくないわ。ふふふ。」

普段は豪快な男が狼狽える姿に一条奈々美とエリザベスの笑いは止まらなかった。
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