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2.怒りが収まらない。
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ジングー王国の大神殿の祭壇に描かれた魔法陣が輝き黒髪の女性が現れた。
エリこと聖女エリザベスである。
その姿に神官達から歓声が上がり、オズモンド神官長が前に進み出て膝を突き最大級の礼を取った。
「王国の守り主、聖女エリザベス様、お帰りさなさいませ。長らくのご遊学、お疲れ様でございました。」
その場にいた全員も膝を突き最大級の礼をとった。
エリザベスは無表情で彼らを見つめ頷いた。
「ええ。遊学は一年の約束。」
「さようでございます。さぁさ、こちらへ。まずはお身体をお清め下さいませ。」
祭壇から部屋の外へ促すが、エリザベスは動こうとしない。
「聖女様?どうかされましたか?」
異変に神官達もザワザワとしだした。
「オズモンド神官長。私、怒ってますの。何故だかお分かりかしら?」
無表情で目は全く笑っていない。
神官長は訳が分からず困惑している。
「聖女エリザベス様、お迎えの儀式で不手際がございましたでしょうか?」
「いいえ。」
「では何故でしょうか?」
その問いにイラッとしてエリザベスの語尾があがった。
「わからない?本当に?」
「はい。申し訳けございません。どうかお鎮まり下さいませ。」
「私の遊学中の様子は魔道具を使い見ていたわよね?」
「はい。安全を見守る為に定期的に拝見しておりました。」
「ならば、もう少し待てたでしょうに。何故今なの?納得がいかないわ。」
「しかし、一年のお約束でございます。だから出発された時刻に呼び寄せました。」
「私の様子を知ってたなら日付が変わる頃でも良いでしょう!」
「気が効かず申し訳ございません。あちらと時間の流れが違いました事、失念していました。」
神官長は深々と頭を下げて詫びを入れた。
「ハハッ。失念ですって?ハハハッ。」
聖女エリザベスからヒステリックな笑い声が漏れた。
「聖女様?」
神官長が顔を上げると聖女エリザベスの顔は涙で濡れていた。
「婚約したばかりだったのよ!せめて後一刻程、待ってくれてたらあの人と年を重ね一生を終わる事ができたのよ。」
そう叫ぶと神聖石に歩みを進め、神官長に殺るような視線を投げた。
「やり直しよ!今度、邪魔をしたら2度目はないわよ。」
「なりません!お留まりを!」
神官長の叫びを振り切り聖女エリザベスの身体は光に包まれ異次元へ消えていった。
エリこと聖女エリザベスである。
その姿に神官達から歓声が上がり、オズモンド神官長が前に進み出て膝を突き最大級の礼を取った。
「王国の守り主、聖女エリザベス様、お帰りさなさいませ。長らくのご遊学、お疲れ様でございました。」
その場にいた全員も膝を突き最大級の礼をとった。
エリザベスは無表情で彼らを見つめ頷いた。
「ええ。遊学は一年の約束。」
「さようでございます。さぁさ、こちらへ。まずはお身体をお清め下さいませ。」
祭壇から部屋の外へ促すが、エリザベスは動こうとしない。
「聖女様?どうかされましたか?」
異変に神官達もザワザワとしだした。
「オズモンド神官長。私、怒ってますの。何故だかお分かりかしら?」
無表情で目は全く笑っていない。
神官長は訳が分からず困惑している。
「聖女エリザベス様、お迎えの儀式で不手際がございましたでしょうか?」
「いいえ。」
「では何故でしょうか?」
その問いにイラッとしてエリザベスの語尾があがった。
「わからない?本当に?」
「はい。申し訳けございません。どうかお鎮まり下さいませ。」
「私の遊学中の様子は魔道具を使い見ていたわよね?」
「はい。安全を見守る為に定期的に拝見しておりました。」
「ならば、もう少し待てたでしょうに。何故今なの?納得がいかないわ。」
「しかし、一年のお約束でございます。だから出発された時刻に呼び寄せました。」
「私の様子を知ってたなら日付が変わる頃でも良いでしょう!」
「気が効かず申し訳ございません。あちらと時間の流れが違いました事、失念していました。」
神官長は深々と頭を下げて詫びを入れた。
「ハハッ。失念ですって?ハハハッ。」
聖女エリザベスからヒステリックな笑い声が漏れた。
「聖女様?」
神官長が顔を上げると聖女エリザベスの顔は涙で濡れていた。
「婚約したばかりだったのよ!せめて後一刻程、待ってくれてたらあの人と年を重ね一生を終わる事ができたのよ。」
そう叫ぶと神聖石に歩みを進め、神官長に殺るような視線を投げた。
「やり直しよ!今度、邪魔をしたら2度目はないわよ。」
「なりません!お留まりを!」
神官長の叫びを振り切り聖女エリザベスの身体は光に包まれ異次元へ消えていった。
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