上 下
34 / 42

33.吐き出し口は整理整頓

しおりを挟む
私の婚約者アルベルト・ルドヴィカ侯爵は、騎士団総団長が仕事で王城の中にある執務室に缶詰になり仕事をしているはず。

それも結婚式の準備を全て私に任せて2ヶ月は屋敷に帰宅していない。
なのに何故?
隣町のヨドガーワで女性の腰に手を回して歩いていたの??

何度考えてもわからない。執務室に訪ねて顔を見て尋ねたい。でもそうはいかない。グッと我慢で4日が過ぎたけど手紙も連絡も無い。

言い訳もない訳?

堪らず見かけた場所へ再び行ってみた。
彼らを見かけた辺りにある宿屋の2階に部屋を取る。
ここなら窓際に座り行き交う人々を眺められる。

「来たわ!」

昼ご飯を食べてお茶を飲んでいると彼らはやって来た。
今日は女の方が腕を絡ませて歩いてくる。

「貴方達はここに居なさい。命令よ。」

侍女達には普段はしない「命令」と言う言葉を選び1人で宿の外へ飛び出た。
前方を歩く2人に追いつくとさりげなく声をかけた。

「落としましたよ。」

同時に振り向いた2人にハンカチを差し出すと女が迷いなく手に取り確認をした。

男の方は、ほんのわずか目を見開いたが直ぐに無表情になり私を見つめている。

うん。確かにアルベルトだわ。成る程ね、そんな態度に出るんだ。

「私のじゃないわ。」

女はそう言うとハンカチを突き返し再び男に腕を絡ませると2人は去っていった。

ハンカチを握りしめて宿の部屋に戻ると直ぐにゴミ箱へ投げ捨てた。
あの女が触れた物を早く捨てたかった。
侍女は、私の行動を上から伺っていたのだろう。声をかけるのにひどく動揺している。

「あの、、その、、えっと、、」

「うん、大丈夫。家へ帰るわ。馬車の用意をして。」

長い帰路の間、侍女は気を使って話しかけてくるけど、ごめん。最低限の返事しか返せなかった。しまいには侍女も何も話さなくなり重い空気のまま屋敷に帰り着いた。

爆発しそうな感情を何とか押し込みアルベルトからの返事を待ったけど手紙の返事も「言い訳」の伝言1つもよこしてこない。

何故なの?何故何も言ってこないの?
怒鳴り散らす事も出来ずモヤモヤした気持ちがトグロを巻いている。

「あっー、本当に日本に帰りたいな。」

口にしたからって帰れる訳ないけど、ホント参ったわ。
ライアンに続き2人目よ。ちょっと立ち直れないかも。泣きたくても侍女の前では泣けないし、人払いをしても泣いた事がバレてしまう。それも何だか悔しいな。
大きく深呼吸をするとマリーとアンに大きめの箱を幾つか持って来てもらった。

「物が増えてきたから持ち物の整理するわ。手伝って頂戴。」

いる物、要らない物を手際よく仕分けていく。洋服、小物、化粧品となんと数の多い事。この世界に来た時は何も持たな無かったのに。

「じゃあ、これは不用品だから使用人で分けて。売るなり使うなり好きにしていいから。この2箱だけは私の家へ届けてね。」

「こんなに沢山の物を頂いてよろしいのでしょうか?」

そう言いながらも目が輝いている。だってどれも高級品だもん。売ってもいいお金になるはずだから。

「うん、いいのいいの。使わないから。」

「は、はい。しかし、本当に良いのでしょうか?」

「どうせ直ぐに増えるんだから。ね?」

アクセサリーもネックレスだけでも10本はあるなぁ。服を着替えるようにアクセサリーも着替えが必要だなんて貴族って大変よね。
ま、これらは財産だからここに保管ね。

衣装タンスが半分以下になり気分も前よりは良くなった。さあ、これ以上、沈んだって仕方がない。

「よし、スッキリしたからこれから町の家へ荷物を置きに行くわ。ついでに商店の女将さん達に挨拶したいから手土産も購入したいし。」

「まぁ、それは喜ばれる事でしょう。この屋敷に来る前ぶりですから。」

「突然、この屋敷に来ることになって挨拶も出来てなかったから。心配していると思うの。沢山お世話になったのにね。」

「わかりました。積もる話もあるでしょう。どうぞゆっくりなさって来てください。」

侍女長は沈みがちな私を元気づける様に見送ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

うーん、別に……

柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」  と、言われても。  「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……  あれ?婚約者、要る?  とりあえず、長編にしてみました。  結末にもやっとされたら、申し訳ありません。  お読みくださっている皆様、ありがとうございます。 誤字を訂正しました。 現在、番外編を掲載しています。 仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。 後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。 ☆☆辺境合宿編をはじめました。  ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。  辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。 ☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます! ☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。  よろしくお願いいたします。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

女体化してしまった俺と親友の恋

無名
恋愛
斉藤玲(さいとうれい)は、ある日トイレで用を足していたら、大量の血尿を出して気絶した。すぐに病院に運ばれたところ、最近はやりの病「TS病」だと判明した。玲は、徐々に女化していくことになり、これからの人生をどう生きるか模索し始めた。そんな中、玲の親友、宮藤武尊(くどうたける)は女になっていく玲を意識し始め!?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...