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31.次期当主との面談

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私は、とんでもない間違えを犯したのかもしれない。

アルベルト・ルドヴィカ騎士総団長が侯爵である事を失念していた。

「エリコ様、お客様でごさいます。」

「誰?約束はしてないわよ?」

「それが、、レイモンド様、侯爵家の後継者でございます。」

つまりアンベルトの息子が来たって事?!どうしよう?アルベルトは仕事で留守中だ。

急ぎ彼のいる居間に入ると彼とそっくりの赤髪の美男子が優雅にお茶を飲んでいた。年は23歳で昨年、結婚したと聞いている。

「レイモンド様、初めまして。エリコ カワムラと申します。どうぞ宜しくお願い致します。」

「ーーー。」

あれ?何故何も言わないの?聞こえたはずなのに。

「あの、、レイモンド様?」

「ハァー、、、レイモンド・ルドヴィカだ。異世界から来た者は、礼儀を知らないようだな。」

「申し訳ございません。お教えします。」

執事は、私に向き直ると教えてくれた。上位貴族から声をかけるのが礼儀らしい。

「悪いけど、私はこの国の人間でも貴族でも無いわ。この国の客人よ。それにアナタの母になる者。礼儀知らずとは失礼よね?」

「ハァー、、、父上はいつ戻られる?」

「結婚式まではお戻りは難しいと伺っております。」

「本当に勘弁してくれよ。よりによってこの様な者を。」

ああ。私は全く歓迎されていなかったのね。元の世界でも再婚すると子供だとか親戚から反対されるって聞くけど、どこも一緒ね。

「あのね、事実として知ってるだろうけど、パーティーで突然結婚する宣言をしたのはお父様よ。付き合ってさえいなかったのによ。私の方が勘弁してほしかったわ。」

「そ、それは、、、父が失礼をした。
だが!アナタが断れば済んだ話だ。」

「ハァ。」

今度は私が大きなため息をお見舞いした。

「私も逃げて捕まったの!あんな強引な人、知らないわ。文句ならお父様にお願い。」

初対面から口争いはしたく無かったけど、事の成り行きは知っててほしかった。

「嫁いだ妹も心配をしているんだ。なるべくルドヴィカ侯爵家の事には関わらないでもらいたい。次期当主として、また一族を代表して意見をする。」

「勿論よ。私達の結婚は、私が元の世界に帰るまでよ。私はね、1人で一生暮らせるだけのお金はあるの。財産なんていらないし興味もないから安心して。」

財産という言葉に彼はギロリと睨んだけど、頷いてくれた。

「では、一筆書いてもらおう。父上が不在で残念だが仕方がない。」

そう言うと執事に紙を用意させた。

「いいわ。お互いの為よ。私はお父様が好きよ。顔はアナタにそっくりで素敵な人よね。この黒髪が聖女と間違われて狙われるのを世間から保護もしてくれ感謝しているわ。」

「当然だ。父上は歴史ある侯爵家当主として、また騎士団総団長として恥じぬ行いをなさっている。」

「男気もあるわ。人の話を聞かなくって強引だけどね。ふふふ。」

私の笑いに釣られてか彼が初めてニコリとした。

「フン、わかっていらっしゃる。成る程。我々は敵対すべきでは無いと思うがいかがか?」

「勿論よ。私は初めからそう思っているわ。」

「では、書類を作るとしよう。父が死後、ルドヴィカ侯爵家の全財産を放棄すると言う内容だ。見返りは父の妻と認め一族に加えましょう。」

「いいわ。改めて宜しくね。レイモンド。エリコと呼んでね。」

サインをすると彼は満足げに笑うと意地悪気に続けた。

「では、エリコ、父上は頑固だからアナタの事は決して諦めないでしょう。祖国に帰るのは諦める事だな。」

「はは。嘘でしょ?」

「まだ序の口だな。これからの父上の心配とわがままはエリコに任せた。これで私は安心して領地にこもってられるし一族に良い報告がでる。では結婚式で会いましょう。」

サインした紙を胸ポケットにしまうと部屋を出て行こうとする。慌てて止めるけど背が高く足が長いので直ぐにドアに辿り着いてしまった。

「ち、ちょっと待って。ね、序の口って何?教えてよ!」

レイモンドは、初めて会った時の渋い顔と正反対の清々しい笑みをドアから覗かせて手を振ると大声で笑いながら去って行った。

「ねえ!わがままって?心配ってどう言う意味よ~!」

「エリコ様、御愁傷様です。」

執事が慣れた様子で慰めの言葉をかけてくれた。

私、とんでもない面倒を押し付けられた?!
ああ、完全にやられたわ!
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