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23.安易な甘い私
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スイータの都。
着いて直ぐに食事をしたレストランの店員から、ここは商業の盛んな都で裕福な平民が集まり何でも揃う便利な賑やかな町と聞いた。
高級宿では無いけれど、ボロ宿でも無い、3階建ての宿に入ると受付に女将が座っていた。女が見知らぬ土地で宿を取るんだから女将が切り盛りする安心感があるわ。値段を聞くと妥当なところだ。ここに決めた。
部屋を頼むとジロジロと観察をされたけど2週間の滞在を前金でと告げると手の平を返す態度になり始めて笑いかけてきた。
まったく、不愉快だわ。ここに来る前に立ち寄った数軒の店でも耳と首、最後に手先を観察された。アクセサリーを全く身に付けていないからか、直ぐに店員は手を振り追い返され接客をしてこなかった。宿の入口で止められた所もあった。
なんて町なの。入った店々が悪かったのか?貧乏に見えて結構よ。
ふん!私、かなりのお金持ですから!
*****
「こちらの部屋は、日当たりも良く家具付きです。2階なので階段も楽ですよ。町の中心から外れますが買い物の便利な地域になります。」
宿で聞いた不動産屋に行き、部屋の内覧
を重ねている。
5件目に周った4階建集合住宅の2階の部屋に決めた。
「じゃあ、即金で渡すから負けてよ。」
「ありがとうございます。勿論でございます。」
即金でと聞いた店主は目尻を下げて揉み手で喜んでいた。
成程ね、この町はお金が物を言うみたいね。残念。この町、失敗したなぁー。
でも部屋も決まったし慣れるしかないわね。
その日のうちにちょっと早いが明日、宿を引き払うと女将に伝えた。
新居の掃除や新しく用意する物の買い物で疲れて早々にグッスリと寝てしまった。
真夜中に突然、身体を拘束された。見知らぬ男が2人、目の前にいた。
部屋に入って来た気配には全く気が付かなかった。
「誰?アンタ達!どうやって入ったの?出てって!」
最後まで言い終わる前に猿ぐつわをされ手を縛られた。刃物で脅されて渋々、灯りの灯る廊下に出た時、男が口笛を吹いた。
「こりゃいい。羽振が良いカモとは聞いていたが黒髪とは珍しい。これは高く売れるぞ。」
しまった。寝る時は、カツラを外しているので黒髪がバレてしまった。
小突かれながら一階に降りてフロントに差し掛かった。ラッキーな事に女将がいる。
お願い助けて!
力一杯に男達の列から女将の前に飛び出した。
「う、う、うっ!」
助けてと言うが声にならない。女将はひどく驚いている。カウンターから出てくると私の身体をガッチリと掴んだ。
「ちょっと!ちゃんと見張りなよ。」
女将はそう言ってニヤリと笑った。
助かった。と思ったのは甘かった。コイツらとグルだったんだ。
「そのままだと目立つからマントをしな。油断するんじゃないからね!」
もう逃げ場はなかった。宿の前に付けられていたに幌付きの荷馬車に乗せられさらわれてしまった。
ああ、どうしよう!どうなるの?この町に来てたった2週間でトラブルに遭うなんて。
幌馬車は、スピードをあげて町を走っている。見張りは1人。もう1人は運転をしている。
このまま何処へ連れて行かれるのだろう?何とか逃げなくちゃ。
ジッと機会を伺っていると石畳の道から土の道に変わったのがわかった。
町を抜けたんだわ。イグサの様な香りと木の香りがしている。
やがて馬車がスピードを落として走り出した。街灯が無いので月明かりのみだから外がよく見えない。
所々でカーズを曲がって走っているので山道に入ったようで、川の音も聞こえるから川沿いを走っているみたい。
逃げるならスピードを落としている今がチャンスだ。
幸い足は縛られていない。
きっとチャンスは一度切りだろう。
怪我をしてでも連れて行かれるよりマシだわ。
マントで身体は隠れているので暗い馬車の中でお尻を上げて体勢をジワリと整えた。
ダメ元で次のカーブで馬車の後部から身を思いっきり投げた。
痛い!肩と手を激打し地面をころがった。
「テメェ!オイ、止めろ!女が逃げたぞ。」
何とか立ち上がりぶつけた身体を庇いながら薄暗い道を走る。
薮の中に入り身を隠そうとした時、目の前まで追っ手が迫った。
そうよね。手を拘束され、身体は打ち付けた痛みで悲鳴を上げた状態で上手く走れる訳がない。
もうダメだ。こんな奴らに捕まって酷い事になるなら、、、とっさに川側の土手へ足を踏み入れた。その瞬間、一気に傾斜のキツイ土手から川へ滑り落ちて濁流に身を投げた。
濁流は激しくて何とか顔を上げて岩にしがみ付こうとするが手が縛られいるからままならない。
「クソッ!川に落ちたぞ!どうする?」
「仕方がねぇ。クソ女、溺れ死ね!」
小さくなっていく声に安心はしたけど、濁流に揉まれて苦しい、、、誰か助けて、、、。
着いて直ぐに食事をしたレストランの店員から、ここは商業の盛んな都で裕福な平民が集まり何でも揃う便利な賑やかな町と聞いた。
高級宿では無いけれど、ボロ宿でも無い、3階建ての宿に入ると受付に女将が座っていた。女が見知らぬ土地で宿を取るんだから女将が切り盛りする安心感があるわ。値段を聞くと妥当なところだ。ここに決めた。
部屋を頼むとジロジロと観察をされたけど2週間の滞在を前金でと告げると手の平を返す態度になり始めて笑いかけてきた。
まったく、不愉快だわ。ここに来る前に立ち寄った数軒の店でも耳と首、最後に手先を観察された。アクセサリーを全く身に付けていないからか、直ぐに店員は手を振り追い返され接客をしてこなかった。宿の入口で止められた所もあった。
なんて町なの。入った店々が悪かったのか?貧乏に見えて結構よ。
ふん!私、かなりのお金持ですから!
*****
「こちらの部屋は、日当たりも良く家具付きです。2階なので階段も楽ですよ。町の中心から外れますが買い物の便利な地域になります。」
宿で聞いた不動産屋に行き、部屋の内覧
を重ねている。
5件目に周った4階建集合住宅の2階の部屋に決めた。
「じゃあ、即金で渡すから負けてよ。」
「ありがとうございます。勿論でございます。」
即金でと聞いた店主は目尻を下げて揉み手で喜んでいた。
成程ね、この町はお金が物を言うみたいね。残念。この町、失敗したなぁー。
でも部屋も決まったし慣れるしかないわね。
その日のうちにちょっと早いが明日、宿を引き払うと女将に伝えた。
新居の掃除や新しく用意する物の買い物で疲れて早々にグッスリと寝てしまった。
真夜中に突然、身体を拘束された。見知らぬ男が2人、目の前にいた。
部屋に入って来た気配には全く気が付かなかった。
「誰?アンタ達!どうやって入ったの?出てって!」
最後まで言い終わる前に猿ぐつわをされ手を縛られた。刃物で脅されて渋々、灯りの灯る廊下に出た時、男が口笛を吹いた。
「こりゃいい。羽振が良いカモとは聞いていたが黒髪とは珍しい。これは高く売れるぞ。」
しまった。寝る時は、カツラを外しているので黒髪がバレてしまった。
小突かれながら一階に降りてフロントに差し掛かった。ラッキーな事に女将がいる。
お願い助けて!
力一杯に男達の列から女将の前に飛び出した。
「う、う、うっ!」
助けてと言うが声にならない。女将はひどく驚いている。カウンターから出てくると私の身体をガッチリと掴んだ。
「ちょっと!ちゃんと見張りなよ。」
女将はそう言ってニヤリと笑った。
助かった。と思ったのは甘かった。コイツらとグルだったんだ。
「そのままだと目立つからマントをしな。油断するんじゃないからね!」
もう逃げ場はなかった。宿の前に付けられていたに幌付きの荷馬車に乗せられさらわれてしまった。
ああ、どうしよう!どうなるの?この町に来てたった2週間でトラブルに遭うなんて。
幌馬車は、スピードをあげて町を走っている。見張りは1人。もう1人は運転をしている。
このまま何処へ連れて行かれるのだろう?何とか逃げなくちゃ。
ジッと機会を伺っていると石畳の道から土の道に変わったのがわかった。
町を抜けたんだわ。イグサの様な香りと木の香りがしている。
やがて馬車がスピードを落として走り出した。街灯が無いので月明かりのみだから外がよく見えない。
所々でカーズを曲がって走っているので山道に入ったようで、川の音も聞こえるから川沿いを走っているみたい。
逃げるならスピードを落としている今がチャンスだ。
幸い足は縛られていない。
きっとチャンスは一度切りだろう。
怪我をしてでも連れて行かれるよりマシだわ。
マントで身体は隠れているので暗い馬車の中でお尻を上げて体勢をジワリと整えた。
ダメ元で次のカーブで馬車の後部から身を思いっきり投げた。
痛い!肩と手を激打し地面をころがった。
「テメェ!オイ、止めろ!女が逃げたぞ。」
何とか立ち上がりぶつけた身体を庇いながら薄暗い道を走る。
薮の中に入り身を隠そうとした時、目の前まで追っ手が迫った。
そうよね。手を拘束され、身体は打ち付けた痛みで悲鳴を上げた状態で上手く走れる訳がない。
もうダメだ。こんな奴らに捕まって酷い事になるなら、、、とっさに川側の土手へ足を踏み入れた。その瞬間、一気に傾斜のキツイ土手から川へ滑り落ちて濁流に身を投げた。
濁流は激しくて何とか顔を上げて岩にしがみ付こうとするが手が縛られいるからままならない。
「クソッ!川に落ちたぞ!どうする?」
「仕方がねぇ。クソ女、溺れ死ね!」
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