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12.二人目の珍客

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ライアンと二度目のデートの時、交際を申し込まれたわ。
それから彼とデートを重ねる度に好きになっていく。まだ好意に近い愛ではないものだけど。今、私の心は踊っている。
デートはこそばくって心地が良いもので、ときめきなんてモノを感じている。

折り紙を折る手もアドレナリンがでいるせいか疲れない。
上機嫌で折っていると店の前に豪華な馬車が停まった。

貴族のお客様かな?とぼんやり思っていると、なんとナオちゃんが護衛騎士と侍女を連れて来店した。

「どうしたの?こんな所に来るなんて大丈夫なの?」

ナオちゃんの顔を見るなり挨拶もせずに声をかけてしまった。

「エリコさん、会いたかった~!」

そう言うとナオちゃんは抱きついて泣き出してしまった。
困惑して護衛騎士と侍女の顔を見ると神妙な顔をして首を振っている。
ソファに座らせて侍女へ二階のキッチンでお茶を入れるのを頼むと警護の騎士に尋ねた。

「よくここに来る許可が出ましたね。」

「貴方の家へ連れて行かないと祝福祭も出ないし舞も踊らないと言われまして。苦渋の決断です。お察しを。」

訓練されているので騎士は無表情だけど、それでも苦労が伺われた。
ナオちゃんも城へ呼べばいいのにわざわざ私の家に来るなんてねぇ。よほど城を出て来たかったんだろう。

侍女がお茶とお菓子を持って来たのでナオちゃんに進めた。

「このお茶、ちょっと日本茶に似てるのよ。飲んでみて。」

日本と言う言葉にピクリと飛びついてお茶を飲むとナオちゃんは少し落ち着ちついて語り出した。

「あのね、花祭り最終日に皆んなの前で祝福の舞を贈らないといけないの。だけど、大勢の人の前に立つなんて恥ずかしくって。ナオには無理よ。助けてエリコさん!」

そしてまた泣き出してしまった。

「帰りたい。日本に帰りたいの。もうここは嫌。パパとママの所へ帰りたいの。」

その気持ちはよくわかる。私も帰れるものなら帰りたい。けれど叶わないから前を進んでいるだけだ。まだ20歳の心のままに泣けるナオちゃんが羨ましい。

「ね、ナオちゃん。寂しいのは私も同じよ。ここで生きるしか無いんだから自分に与えられた事を精一杯しようよ。生きていれば帰れる時が来るかもよ。私と違ってナオちゃんは聖女なんだからそんな力が身に付くかもしれないでしょ?」

「帰れる力?」

「そう。聖女の修行をすれば身につくかもよ。私の為にも頑張ってくれないかな。」

ほんとうに叶うならば頑張ってと願わずにいられない。
けれど私は嫌らしい大人。不確かな言葉で慰めて丸く収めようとしてしまう。きっと私達の違いは日本への未練の違いだろう。

「じゃあ、もう少しだけエリコさんの為にも頑張ってみる。だから、またここに来てもいい?」

そう言うと顔色を伺うように小首をかしげた。うーん、可愛いい。
もう来るな、城の人達と関わりたくない、と言いたいけどこれじゃ言えないわね。

「そうね、明日の御披露目を頑張ればまた連れて来てもらえるんじゃないかな。」

チラリと騎士を見ると頷いている。
私は陳列棚から商品を手に取りナオちゃんに渡した。

「これね、私が作ったくす玉なんだけど貰ってくれる?花玉と呼ばれて人気なのよ。」

「綺麗ね、ありがとう!」

まだ目尻には涙が付いていたけどニッコリと笑ってくれた。

「ナオ様、そろそろお時間でございます。お戻りにならなければいけません。」

お付きの騎士が声をかけたがナオちゃんは彼を無視して立ち上がると店内の商品を手に取って眺めている。

「エリコさんもこっちに来て。」

隣に行くと手を重ねられた。

「ふふふっ、一緒にやろお。」

その時、フワッと温かい空気が現れ部屋をかけて行った。

「えへへ。祝福を授けちゃった。売れると良いね。」

舌をペロリとだしてニッコリ笑うと私を抱きしめた。

「エリコさん、またね。」

身体が離れるとドアに向かって歩き始め振り返る事は無かった。

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