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5.注目の理由
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翌日、町歩きをしようと一階の扉の鍵をかけていると騎士アルクに呼び止められた。
「外出ですか?慣れるまでご一緒します。」
「いいよ、そんな子供じゃ無いし大丈夫よ。」
アルクはキリッとして首を振った。
「以前と違い隣国と許可証さえあれば行き来出来る様になってからトラブルが増えてます。それにエリコさんは慣れない国ですからね。」
確かにここの様子を全く知らないわ。
ここは素直に同行してもらおう。ま、荷物持ちにもなるしね~。
町を歩いていると確かに異国風の服装に顔つきが違う人がチラホラといる。年も職業もバラバラ。商売人らしき人から若いカップルまでいる。
「ねえ、ここってもしかして観光地なの?」
「ええ。王都ですからね。特に神殿の建物は歴史と豪華さで人気で旅の祈願で殆どの人が立ち寄るのでは無いでしょうか?」
「そんなに多くの人が?」
「はい。商人も観光客もです。隣国からの旅は日にちもかかりますからね。ちなみにこのメインストリートは飲食店も沢山あって観光ルートになってます。」
そう言えばどこを歩いていても美味しそうな匂いがするわ。
片手に何か食べながら歩いてる人も多い。
あれ?今、すれ違った人達、私を指差して無かった?さっきの人達もだけど。
気のせい?と思ったけど、周りをよく見ると少し離れた人とも目が合う。
やっぱりチラチラとこっちを見ている。
「ねえ、私達見られているよね?何かおかしな所ある?」
自分の服装を確認するとアルクは意外そうな顔をした。
「当然ですよ、もしかしてご存じないのですか?」
「何が?」
「エリコさんの黒髪と黒目ですよ。伝説に出てくる聖女と同じだし、この大陸では見かけませんからね。」
「つまりナオちゃんの事よね。」
「そうです。エリコさんは聖女じゃ無い。しかし外見が同じだから注目されてしまうんです。ま、聖女と同郷の女性が町に住んでいると周知されれば見るのも観光客位になりますよ。」
「それじゃ当分は見せ物になるの?嫌だわ。」
「早く解決するのにピッタリの場所がありますよ。こっちです。」
メインストリートを一本中に入ると広場があり市が開かれていて、すぐ横の店舗に案内された。
「こんにちは!カント会長。新しい住人を紹介するよ。騎士団詰所の上に住むエリコ カワムラさん。
エリコさん、商業組合のマーク・カント会長。この町の顔役です。商売をするなら力になるでしょう。」
「おやおや珍しい黒髪黒目ですな。マーク・カントです。」
カント会長から面白ろがる視線を向けられた。
「エリコ・カワムラです。何かの店を始めようと思うので宜しくお願いします。」
「おお、そうかい。歓迎するよ。ところで、失礼だがその髪色は?」
アルクは隠す事なくカント会長に私の事を説明した。
「聖女様と同郷で聖女の力はありませんよ。異世界からの旅人と呼ばれてます。」
「そうか聖女じゃ無いのか。まあ我々庶民がお会い出来るはずもないからな。異世界からの旅人さん、早速、皆んなに紹介しよう。ついておいで。」
市の中に連れて行かれると次々と大声で紹介をされ、それを耳にする大勢の市民が見に集まりもみくちゃにされてしまった。
カント会長が大きく手を叩いた。
「ハイハイ!見せ物じゃ無いんだ!見に来ても聖女じゃ無いからご利益はないぞ!ちったちった!」
「あ、ありがとうございます。」
「ま、仕方ないな。異世界人ってだけで見てみたいもんな。アンタの噂はあっという間に広がるから視線もそのうち落ちつくさ。」
そうか。もし私も日本にいて異世界人が現れたら見に行くだろう。珍しいパンダを見るみたいに。
「あっ!思いついた。私の店、異世界人の私の手作り品を売る雑貨店はどう?小物とかお菓子とか。」
「ほほう。それは面白そうだな。受けると思うぞ。」
よし!注目を逆手に取って儲けてやろう。
そうと決まれば早速よ。
今日は、荷物持ちもいるし色んな材料を仕入れて帰るぞ。
「外出ですか?慣れるまでご一緒します。」
「いいよ、そんな子供じゃ無いし大丈夫よ。」
アルクはキリッとして首を振った。
「以前と違い隣国と許可証さえあれば行き来出来る様になってからトラブルが増えてます。それにエリコさんは慣れない国ですからね。」
確かにここの様子を全く知らないわ。
ここは素直に同行してもらおう。ま、荷物持ちにもなるしね~。
町を歩いていると確かに異国風の服装に顔つきが違う人がチラホラといる。年も職業もバラバラ。商売人らしき人から若いカップルまでいる。
「ねえ、ここってもしかして観光地なの?」
「ええ。王都ですからね。特に神殿の建物は歴史と豪華さで人気で旅の祈願で殆どの人が立ち寄るのでは無いでしょうか?」
「そんなに多くの人が?」
「はい。商人も観光客もです。隣国からの旅は日にちもかかりますからね。ちなみにこのメインストリートは飲食店も沢山あって観光ルートになってます。」
そう言えばどこを歩いていても美味しそうな匂いがするわ。
片手に何か食べながら歩いてる人も多い。
あれ?今、すれ違った人達、私を指差して無かった?さっきの人達もだけど。
気のせい?と思ったけど、周りをよく見ると少し離れた人とも目が合う。
やっぱりチラチラとこっちを見ている。
「ねえ、私達見られているよね?何かおかしな所ある?」
自分の服装を確認するとアルクは意外そうな顔をした。
「当然ですよ、もしかしてご存じないのですか?」
「何が?」
「エリコさんの黒髪と黒目ですよ。伝説に出てくる聖女と同じだし、この大陸では見かけませんからね。」
「つまりナオちゃんの事よね。」
「そうです。エリコさんは聖女じゃ無い。しかし外見が同じだから注目されてしまうんです。ま、聖女と同郷の女性が町に住んでいると周知されれば見るのも観光客位になりますよ。」
「それじゃ当分は見せ物になるの?嫌だわ。」
「早く解決するのにピッタリの場所がありますよ。こっちです。」
メインストリートを一本中に入ると広場があり市が開かれていて、すぐ横の店舗に案内された。
「こんにちは!カント会長。新しい住人を紹介するよ。騎士団詰所の上に住むエリコ カワムラさん。
エリコさん、商業組合のマーク・カント会長。この町の顔役です。商売をするなら力になるでしょう。」
「おやおや珍しい黒髪黒目ですな。マーク・カントです。」
カント会長から面白ろがる視線を向けられた。
「エリコ・カワムラです。何かの店を始めようと思うので宜しくお願いします。」
「おお、そうかい。歓迎するよ。ところで、失礼だがその髪色は?」
アルクは隠す事なくカント会長に私の事を説明した。
「聖女様と同郷で聖女の力はありませんよ。異世界からの旅人と呼ばれてます。」
「そうか聖女じゃ無いのか。まあ我々庶民がお会い出来るはずもないからな。異世界からの旅人さん、早速、皆んなに紹介しよう。ついておいで。」
市の中に連れて行かれると次々と大声で紹介をされ、それを耳にする大勢の市民が見に集まりもみくちゃにされてしまった。
カント会長が大きく手を叩いた。
「ハイハイ!見せ物じゃ無いんだ!見に来ても聖女じゃ無いからご利益はないぞ!ちったちった!」
「あ、ありがとうございます。」
「ま、仕方ないな。異世界人ってだけで見てみたいもんな。アンタの噂はあっという間に広がるから視線もそのうち落ちつくさ。」
そうか。もし私も日本にいて異世界人が現れたら見に行くだろう。珍しいパンダを見るみたいに。
「あっ!思いついた。私の店、異世界人の私の手作り品を売る雑貨店はどう?小物とかお菓子とか。」
「ほほう。それは面白そうだな。受けると思うぞ。」
よし!注目を逆手に取って儲けてやろう。
そうと決まれば早速よ。
今日は、荷物持ちもいるし色んな材料を仕入れて帰るぞ。
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