上 下
6 / 15

6. 侯爵家の次男アンドレと顔合わせ

しおりを挟む
翌日、ユリアーナは、朝からイライラしていた。今日は侯爵家の次男アンドレと顔合わせだ。彼は、俺様気質で傲慢で会う度にユリアーナをイライラさせる。

「アンドレが来るまで一人にしてと言ってるじゃない。下がりなさない。」

「いえ、神官長様から片時と離れるなとご指示です。ご勘弁を。」

警備方と侍女が絶えず側に居るので更にユリアーナは苛立っていた。
そこへ父である神官長がやって来た。

「アンドレ殿がお好きな赤のドレスがよく似合っておるぞ。仕上げはこれだ。」

そう言うとユリアーナの腕をつかんだ。
つかさず共の者がシルバーに輝く鍵付の腕輪をはめた。
これは力封じの腕輪をだった。

「結婚式までは外さぬからな。ふん!お前の覚悟とやらを見せてもらおう。」

ユリアーナははめられた金属から目が離せない。

「こ、これは、、、お父様!ここまでなさるのですか!」

神官長はニヤリと笑い「約束を守れ」とだけ告げて出て行った。

(何て事を!
これじゃ力が使えないじゃない、、、
腹立ただしいわ。
この派手なドレスも気分をイラつかせる。今から会うアンドレも大嫌い!)

腕輪がある限り力は使えない。こうなると逃る道を絶たれたのも同じだ。

コンコンコン

ノックの音で振り返るとアンドレが大きな花束を持って入って来た。御供の者は沢山のプレゼントを抱えている。
ユリアーナが好みそうな宝石やお菓子を持参したのだ。

「ユリアーナ、今日も美しい。夫婦になれば俺が更に美しくしてやろう。」

そう言うとユリアーナの長い髪を一房掴み口づけた。

(!!キモっ!)

心の声がただ漏れな目つきでアンドレを睨み付ける。
アンドレは、全く気にせずプレゼントのネックレスを箱から出し、ユリアーナの首元に巻きつけようとする。

「髪が邪魔だ。なんとかしろ。」

ユリアーナが片側に髪をまとめたら早速ネックレスを巻き付けた。

(うっうっ、、彼の手が触れるし息もかかり気持ち悪いわ。最悪!)


その時、アンドレが耳元で囁いた。

「よく似合っているぞ。」

その瞬間、ユリアーナはバッと耳に手を当て飛び退いた。

(!!)

「ハッハッハッ、そう怯えずとも来月には夫婦になるのだ。早く俺に慣れろ。」

見開いた瞳がアンドレを凝視している。

(嫌だ!嫌だ!嫌だ!)

席を立つことも許されないので、ただ苦痛な時間を過ごした。

「では、3日後に会おう。虫には気を付けろよ。」

そう言うとユリアーナの頬にキスをした。

唐突の行動にユリアーナは固まってしまった。
バタンとドアの音で正気に戻ったユリアーナは、側にあった花瓶を力任せにドアへ投げつけた。

「ユリアーナ様!何を、、」

後の言葉を待たずにユリアーナは自室へ向かって飛び出した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが

雪丸
恋愛
エミリアの婚約者、クロードはいつも彼女に冷たい。 それでもクロードを慕って尽くしていたエミリアだが、クロードが男爵令嬢のミアと親しくなり始めたことで、気持ちが離れていく。 エミリアはクロードとの婚約を解消して、新しい人生を歩みたいと考える。しかし、クロードに別れを告げた途端、彼は今までと打って変わってエミリアに構うようになり…… ◆エール、ブクマ等ありがとうございます! ◆小説家になろうにも投稿しております

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜

櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。 はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。 役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。 ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。 なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。 美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。 追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!

不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ
ファンタジー
「なんだ!あの農具は!槍のつもりか?」「あいつの頭見ろよ!鍋を被ってるやつもいるぞ!」ギャハハと指さして笑い転げる正規軍の面々。 魔王と魔獣討伐の為、軍をあげた帝国。 討伐の為に徴兵をかけたのだが、数合わせの事情で無経験かつ寄せ集め、どう見ても不要である部隊を作った。 魔獣を倒しながら敵の現れる発生地点を目指す本隊。 だが、なぜか、全く役に立たないと思われていた部隊が、背後に隠されていた陰謀を暴く一端となってしまう…! 〜以下、第二章の説明〜 魔道士の術式により、異世界への裂け目が大きくなってしまい、 ついに哨戒機などという謎の乗り物まで、この世界へあらわれてしまう…! 一方で主人公は、渦周辺の平野を、異世界との裂け目を閉じる呪物、巫女のネックレスを探して彷徨う羽目となる。 そしてあらわれ来る亡霊達と、戦うこととなるのだった… 以前こちらで途中まで公開していたものの、再アップとなります。 他サイトでも公開しております。旧タイトル「茫漠と彷徨えるなにか」。 「離れ小島の二人の巫女」の登場人物が出てきますが、読まれなくても大丈夫です。 ちなみに巫女のネックレスを持って登場した魔道士は、離れ小島に出てくる男とは別人です。

処理中です...