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3.プロポーズ

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異世界だなんてあり得ない状況で正気でいられるのは、アルベルトと一緒だからだわ。
もし、1人っきりだったら、、、そう考えるだけでアルベルトの手を握りしめてしまう。
そんな不安な気持ちを察してか、彼の自宅、ギャンダー侯爵邸へ向かう馬車の中で彼がプロポーズをしてくれた。

「ハルナ、俺と結婚しよう。俺はここでは地位も仕事もある。不自由なく幸せにする自信がある。受けてくれるか?」

私達は、終わりがわかっていて付き合ったからこんな日が来るなんて信じられなかった。

「私なんかでいいの?この国の、、この世界の人間じゃないのよ?」

「勿論だ。愛してるよ。」

「うん、、よろしくお願いします。へへ、何だか照れてしまうね。」

照れる私なんてお構い無しに愛を囁いて熱いキスをくれた。

「これから俺がずっと側にいる。何も不安に思わなくて大丈夫だ。安心してほしい。」

肩を抱きしめ何度と繰り返し伝えてくれた。ずっと一緒にいられるなんて本当に嬉しい。元の世界には戻れない悲しみが吹き飛んでしまうくらい。彼と共にここで新しい生活をして前を向こうと思った。

侯爵邸に到着をすると、彼は屋敷中の者から出迎えられ彼の両親と涙の再会をした。皆さん、どれかだけ心配されてたか顔を見ればわかるわ。その輪の外で静かに彼らを見守る事にした。

応接室で正式に御両親と弟に挨拶の場が設けられた。

侯爵は、アルをダンディにした美男子で侯爵夫人は、青い眼の金髪の美魔女。弟のキースリィーは、赤髪だけど夫人似だ。

夫人はアルベルトの隣に座り「もう離さない。」とばかりにずっと彼の腕に手を置いている。

「この者は異世界から一緒に来たハルナ タナカです。」

「初めまして。ハルナ タナカです。宜しくお願いします。」

出来るだけ愛想よく御挨拶をした。2人も笑顔で対応してくれたので一安心した。

「私は失踪先の異世界で彼女と愛し合い寝食を共に暮らしていました。直ぐに正式に婚姻を希望しています。お許し頂けますか?」

その言葉に侯爵は笑顔を崩して大きな溜息を吐くと首を振った。

「アルベルトが世話になった事は心から礼を言う。ありがとう。息子が元気な姿で戻れたのもあななたのお陰でしょう。しかし、婚姻は別だ。」

「何故ですか?私達は愛し合っています。」

「お前は、マリーローズ・アンダーソン伯爵令嬢と婚約をしていただろ?失踪で婚約は解消されたが、先方にお詫びを入れる前から次の者と婚姻とは感心しない。」

「アンダーソン伯爵邸へは近々、お詫びに伺います。」

「それにお前も貴族だからわかるだろう?異世界人の彼女に侯爵家の女主人が出来るのか?」

「彼女は聡明です。教育を受ければ出来ますし、どうかお許しください。」

どうしよう。私の事でやっと会えた家族に険悪な空気が漂っている。アルには何も言うなと言われているから口出しも出来ない。

「無理ならば家を出ます。家督は弟が継げば問題もありませんし、私が戻らなければそうなっていた事です。」

「アル!何を言うの?」

とうとう母親が声を荒げて身を乗り出した。ああ、こんな揉める事になるなんて。

この場から逃げたい。でも私には逃げる所なんてない。情けないけど、黙って話の成り行きを見守るしかなかった。

平行線の話し合いのすえ、両親はある提案をする事で妥協した。

「ウィリアム殿下が王家の秘宝を使ってまでお前を呼び寄せたのだ。お前を侯爵家としても失う訳にはいかない。」

「では、婚姻を認めてくれるのですね?」

「ああ。先ずは婚約だ。彼女には、直ぐに貴族としての教育を始めてもらう。3ヶ月後の婚姻後、半年以内に結果を出さなければ離縁してもらう。これでいいな?」

「ありがとうございます!感謝します。」

こうして婚約が決まり、彼の強い希望で彼の部屋の近くに部屋を与えられ異世界での生活が始まった。


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