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6.トラベル発生。助けて!

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「私、ミタラシを3本頂戴。」.

「僕はキナコがいいなぁ。」

「はーい!毎度ありがとう!」

この街に来て1年。米によく似た穀物の産地が近いので団子屋を始めた。簡単に作れて材料も少なくて良い。町の人と交流も出来るから。

侯爵邸を去ってこの5年でよーくわかった事は、幾らお金があるからってひっそりと働かず暮らすと悪目立ちしてしまう。そのせいで要らぬ噂を立てられ町を移った。だから、この町に来て直ぐに店を始めた。名前もハルーナと偽名を名乗った。万一の追っての目をくらます為だ。

団子屋を始めて順調だったのにこの町の町長相手にトラブルに見舞われてしまった。

今日も店の扉が乱暴に開けられ人相の悪い男達が店に入って来た。

「ちょっと!いい加減にして下さい。帰って!」

金切声で訴えるけれど彼らは全く動じず店の中の物をひっくり返してやっと出て行った。入れ違いに初老の男がやって来た。

「おやおや、ハルーナ。災難だったねぇ。私ならやめさせられる。だから強情を張らずにワシに嫁いで来なさいといってるだろ?」

「誰があなたなんかに!」

「じゃあ、さっさと弁償するんだ。お前が荷馬車の前に飛び出して横転させて商品は全滅だ。王族への献上品もあったんだからな。」

「この家を売ったお金で弁償すると言ってるじゃないですか!」

「はっはっは、売ったところで足りんわ。後、10日後だけまってやる。楽しみにいておるぞ。花嫁殿。」

どうしよう。貯金をかき集めても弁償額の半額にしかならない。それでも平民なら一生暮らせる金額だ。

どうしよう、、、もう後がないわ。
だから、もう解決する方法は、一つしかない。

「マリーに託したいの。これを、、、王都のギャンダー侯爵邸へ届けてくれない?」

「このネックレスと手紙を?ハルーナさんがいつも大切に物している物ですよね?」

「ええ。だから信頼するあなたにお願いしたいの。私は今、見張られててこの町を離れられないからお願いよ。」

「わかりました。ハルーナさんがそこまでお願いされるなら。」

「ありがとう。これがあれば侯爵様と会えるはずだから頼んだわよ。」

アルベルトの元から逃げるように去って5年。一度、私を捜している者に気がついて更に田舎の町に引越したっけ。

なのに自ら連絡を取ろうとするなんて皮肉だわ。でももう私にはどうしようもない。どんだけ罵られても構わない。この世界で頼れる人は、もう彼しかいないんだから。
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