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王室騎士団総団長マーベリックとケイコの婚約
21.貴方の隣に立つ幸せ
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2人の成り行きを見守っていたケイコは突然、手を引かれ部屋を連れ出された。
「ねぇ、待って。マリアンヌ様に退席の挨拶もしていないわ。」
「かまわん。」
馬に相乗りをして向かったのは、アルフレッド家本邸だった。
「ご主人様!お帰りなさいませ。」
突然のマーベリックの帰宅に執事やメイドがバタバタと集まってくるが、マーベリックはシッシッと手を振り、やめさせた。
「明日、ケイコと王都に立つ。夕食の用意とケイコの荷物を俺の部屋へ移せ。」
そして片手一つで人払いをした。
ケイコはグイグイと引っ張られ家の奥へ連れられた。
「さぁ、俺の部屋だ。入れ。」
マーベリックの顔を見るとさっきまでの怒った顔と大違い。甘くとろける様な笑顔で熱く見つめている。
「ここに座れ。」
何処からか飲み物を持って来て隣に座ると不意にマーベリックが笑った。
「フッフッ、、嬉しいものだな。お前が俺の部屋に居る事は。」
「私だって。なんだかくすぐったいわ。」
「ここなら人払いがしてある。さぁ、どうしてお前が神殿で「宣誓の儀」を執り行ったのか教えてくれるか?」
「宣誓の儀?!じゃーあればそうだったの?最後に「宣誓」と言ったやつね。」
ケイコは神殿へ行く経緯とそこでおこなった事を話した。話が終わるとマーベリックは大きく息を吐いた。
「ふぅー、参ったな。
叔母上は、昔から周りの状況を面白がるクセがあって油断がならないんだ。
今回、叔母上は芝居をして、お前を新しい女主人として宣誓の儀をさせたんだ。
ちょっと目を離した隙にお前をアルフレッド家の女主人にしてしまったんだ。」
「何ですって!女主人?!私が?」
驚いて動揺するケイコの肩に手を回して落ちつかせる。
「そうだ。叔母上がお前を認めたんだ。」
さらに耳元に顔を近づけてささやいた。
「もう逃げれなくなったな。」
チュッと首に口づけをしてニヤリとした。
ケイコはさらに驚いてバッと首に手を当てた。年甲斐もなく赤くなっている。
そんな様子を見てマーベリックは大笑いして機嫌が良い。
「叔母上が王都の屋敷の領主夫人の部屋にお前を通した時に気がつくべきだった。意味なくあの部屋へ通すはずがないのにな。
本当に叔母上には未だに敵わないな。」
*****
マーベリックとケイコが王都へ出発する時にマリアンヌとメリッサが見送りにやって来た。
ケイコは駆け寄りマリアンヌに感謝の言葉を述べた。
「私達の結婚を認めていただきありがとうございます。私はてっきり否定されているとばかり思ってました。」
マリアンヌは、初めてケイコへ笑いかけた。
「其方にアルフレッド家当主夫人として生きる覚悟があるか知りたかったのじゃ。領主夫人の仕事は疎かに出来る事など1つもない。投げ出さない強い気持ちが無ければ務まらないからな。
私くしには、地位を継ぐものが苦労・責任の重さに耐えられる人間か見極める義務がある。それを実行したまでじゃ。」
ケイコは思い返えしている。
「アルフレッド家の当主の妻になるには足らなすぎる。」
「貴族社会は身分のない者は蔑まれる。今のままが幸せだ。」
「結婚せずに気楽な愛人になればいい。」
「今ならまだ間に合う結婚を辞めては」
などと言われたが、見方を変えれば、全てケイコの為になる事を言ってくれていたのだ。
結婚すれば相当な努力と苦労ばかりが待ち構えている。
今のままなら貴族社会から差別を受けないし、愛人なら気楽で当主夫人としての苦労も無い。結婚前の今なら後戻りができる。
そんな言葉が隠れていたのだ。
「私はてっきり嫌れて追い出されるのでは?とばかり思っていました。」
「ホッホッホ。他の親戚は嫌がっているだろう。それは変わらない事。今更、何を言う?」
「えっ!では、私はどうしたら?」
マリアンヌは呆れた顔でケイコに言い聞かせる。
「だからなんじゃ?」
「えっーと、努力します。離れません。ですか?」
これは、ケイコがマリアンヌに初めて会った時に問われてぶつけた言葉だ。
「クックック。答えは最初に出ておったなぁ。其方は楽しませてくれたよ。また遊びに来ると良い。この女主人の指輪は其方が成長するまで代理人として預かっておくとしよう。」
*****
王都への帰り道、馬車の中でケイコがマーベリックにボヤいた。
「結局、マリアンヌ様に振り回された気がするわ。」
「そうムスッとするな。我が本家の人間は皆んな自由で一筋縄でいかないんだ。叔母上程ではないがな。」
「じゃあ、私もいずれそうなるの?」
「お前はもう十分だ。大人しく側にいてくれ。」
「うーん、何故かいつも巻き込まれてしまうのよね、、」
と難しい顔をしている。
「そうすねるな。王都に帰ると忙しくなるぞ。宜しく頼むぞ、アルフレッド夫人。」
そう言うと優しくケイコの髪をなぜた。
2人は愛しく見つめ会い、優しく甘い口づけを交わした。
これから2人の新しい長い長い道が始まる。
貴方の隣にいる為に努力をしましょう。
お前を側に置く為に守り続けよう。
いつまでも、いつまでも。
「ねぇ、待って。マリアンヌ様に退席の挨拶もしていないわ。」
「かまわん。」
馬に相乗りをして向かったのは、アルフレッド家本邸だった。
「ご主人様!お帰りなさいませ。」
突然のマーベリックの帰宅に執事やメイドがバタバタと集まってくるが、マーベリックはシッシッと手を振り、やめさせた。
「明日、ケイコと王都に立つ。夕食の用意とケイコの荷物を俺の部屋へ移せ。」
そして片手一つで人払いをした。
ケイコはグイグイと引っ張られ家の奥へ連れられた。
「さぁ、俺の部屋だ。入れ。」
マーベリックの顔を見るとさっきまでの怒った顔と大違い。甘くとろける様な笑顔で熱く見つめている。
「ここに座れ。」
何処からか飲み物を持って来て隣に座ると不意にマーベリックが笑った。
「フッフッ、、嬉しいものだな。お前が俺の部屋に居る事は。」
「私だって。なんだかくすぐったいわ。」
「ここなら人払いがしてある。さぁ、どうしてお前が神殿で「宣誓の儀」を執り行ったのか教えてくれるか?」
「宣誓の儀?!じゃーあればそうだったの?最後に「宣誓」と言ったやつね。」
ケイコは神殿へ行く経緯とそこでおこなった事を話した。話が終わるとマーベリックは大きく息を吐いた。
「ふぅー、参ったな。
叔母上は、昔から周りの状況を面白がるクセがあって油断がならないんだ。
今回、叔母上は芝居をして、お前を新しい女主人として宣誓の儀をさせたんだ。
ちょっと目を離した隙にお前をアルフレッド家の女主人にしてしまったんだ。」
「何ですって!女主人?!私が?」
驚いて動揺するケイコの肩に手を回して落ちつかせる。
「そうだ。叔母上がお前を認めたんだ。」
さらに耳元に顔を近づけてささやいた。
「もう逃げれなくなったな。」
チュッと首に口づけをしてニヤリとした。
ケイコはさらに驚いてバッと首に手を当てた。年甲斐もなく赤くなっている。
そんな様子を見てマーベリックは大笑いして機嫌が良い。
「叔母上が王都の屋敷の領主夫人の部屋にお前を通した時に気がつくべきだった。意味なくあの部屋へ通すはずがないのにな。
本当に叔母上には未だに敵わないな。」
*****
マーベリックとケイコが王都へ出発する時にマリアンヌとメリッサが見送りにやって来た。
ケイコは駆け寄りマリアンヌに感謝の言葉を述べた。
「私達の結婚を認めていただきありがとうございます。私はてっきり否定されているとばかり思ってました。」
マリアンヌは、初めてケイコへ笑いかけた。
「其方にアルフレッド家当主夫人として生きる覚悟があるか知りたかったのじゃ。領主夫人の仕事は疎かに出来る事など1つもない。投げ出さない強い気持ちが無ければ務まらないからな。
私くしには、地位を継ぐものが苦労・責任の重さに耐えられる人間か見極める義務がある。それを実行したまでじゃ。」
ケイコは思い返えしている。
「アルフレッド家の当主の妻になるには足らなすぎる。」
「貴族社会は身分のない者は蔑まれる。今のままが幸せだ。」
「結婚せずに気楽な愛人になればいい。」
「今ならまだ間に合う結婚を辞めては」
などと言われたが、見方を変えれば、全てケイコの為になる事を言ってくれていたのだ。
結婚すれば相当な努力と苦労ばかりが待ち構えている。
今のままなら貴族社会から差別を受けないし、愛人なら気楽で当主夫人としての苦労も無い。結婚前の今なら後戻りができる。
そんな言葉が隠れていたのだ。
「私はてっきり嫌れて追い出されるのでは?とばかり思っていました。」
「ホッホッホ。他の親戚は嫌がっているだろう。それは変わらない事。今更、何を言う?」
「えっ!では、私はどうしたら?」
マリアンヌは呆れた顔でケイコに言い聞かせる。
「だからなんじゃ?」
「えっーと、努力します。離れません。ですか?」
これは、ケイコがマリアンヌに初めて会った時に問われてぶつけた言葉だ。
「クックック。答えは最初に出ておったなぁ。其方は楽しませてくれたよ。また遊びに来ると良い。この女主人の指輪は其方が成長するまで代理人として預かっておくとしよう。」
*****
王都への帰り道、馬車の中でケイコがマーベリックにボヤいた。
「結局、マリアンヌ様に振り回された気がするわ。」
「そうムスッとするな。我が本家の人間は皆んな自由で一筋縄でいかないんだ。叔母上程ではないがな。」
「じゃあ、私もいずれそうなるの?」
「お前はもう十分だ。大人しく側にいてくれ。」
「うーん、何故かいつも巻き込まれてしまうのよね、、」
と難しい顔をしている。
「そうすねるな。王都に帰ると忙しくなるぞ。宜しく頼むぞ、アルフレッド夫人。」
そう言うと優しくケイコの髪をなぜた。
2人は愛しく見つめ会い、優しく甘い口づけを交わした。
これから2人の新しい長い長い道が始まる。
貴方の隣にいる為に努力をしましょう。
お前を側に置く為に守り続けよう。
いつまでも、いつまでも。
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