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霧のいたずら

12.マーベリックの告白。私は、、

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この世界に迷い込み、元の世界へ帰れないまま3年になる頃、仕事終わりにマーベリックの執務室に寄ってほしいと言われた。こんな事は初めての事だった。

「わざわざ来てもらいすまない。元気か?」

そう言えば今週はマーベリックの姿を見ていない。

「元気よ。貴方がご飯を食べに来ないなんて珍しいと思っていたんです。」

「今、立て込んでいてな。この部屋に軟禁中だ。抜け出る事もかなわない。早く収束してお前のご飯を食べに行かないとな。」

マーベリックは家庭料理やお菓子に目がないので食べに来れないのは余程の事があるからだ。

「お疲れでないですか?」

「ああ。大丈夫だ。
ところでだ。この世界に来てそろそろ3年だな。今後の事を何か考えているか?」

「もちろん。絶対に帰ります。帰るヒントを見つけるわ。それまで間借りの生活よ。」

メグミは即答した。
マーベリックは少し間を置いてそっと言う。

「また渡り廊下で泣いていたな。
今月は3回目か?」

メグミは、ビックリした!
誰にもわからないように声を押し殺していたのに。。
マーベリックは知っていたのだ。
動揺する私に更に言葉が続けられる

「そんなに寂しいなら俺の隣に来い。
番犬にもなるぞ。」

「えつ!、、、」

驚きでメグミは目を見開き、言葉が出てこない。それって、、、

「一緒に暮らさないか?」

なんて?!何て事を言うの!爆弾発言だよ。
無理に決まってるじゃない!

「ごめんなさい。」

床に視線を落として小さな声で答える。

「俺はそんなに嫌な奴か?」

「そ、そうじゃないわ。
私は夫がいるの。元の世界に戻るのよ。お忘れじゃないと思うけれど。」

マーベリックは、私の手を取り

「帰るまででいい。俺をそばに置け。」

どうして、、どうして?
いつもと違い真剣な彼の顔を見る事が出来ない。

「わ、私はこの瞬間、消えてしまうかもしれないのよ。そんな私が、、私じゃ無理なのよ。私は、、結婚しているのよ。」

「わかっているさ。ここにいる間だ。メグミ、俺の手を取れ。俺を頼れ。」

「どうかわかって。」

これ以上、返事なんて出来る訳無いのよ!
手を離そうとするが、びくとも動かない。堪らず手を繋いだまま背中を向けてしまった。

「メグミ」

「---  ---」

メグミの長い、長い沈黙。
突然、手を引かれ転げそうになる。
不意を突かれ、メグミはつい顔を見てしまった。

「やっと目が合ったな」

マーベリックはニヤリと笑い熱く優しい視線で見下ろす。

あっーダメダメ。そんなに優しく甘く見つめるのはダメ。絶対にダメ。
じゃないと私は、、、
振り切らないと!

「マーベリック。伯爵家のご令嬢との大事な縁談が来ていると聞いたわ。私を気にかけてはダメでしょ。わかっているでしょ?」

マーベリックは、片方の眉を上げ黙ってジッーと見つめてくる。

「お前は、わかっていない。」

「わかっているわ。誰だってわかる。だから離して。」

手を引っ張って頼むが、マーベリックは首を振り空いた方の手で私の黒髪を撫ぜる。胸がザワザワとする。
でも私は気持ちを抑え込むように固く眼をつむった。

「縁談を受けたら俺は、もうお前に会う事は無い。それで平気なのか?」

だって仕方がないじゃない!
どうしようもないじゃない!
愛する夫がいるわ!
私は帰るの!

心の中で叫んだ。そして、そっと口に出した。

「、、、わかっているわ。」

下を向きながら答えると、マーベリックは大きなため息を吐いた。

「仕方がないな。」

そう言って手を離した。
私は逃げるように部屋を出て行った。

一人になり涙が溢れでてきた。

わかっている!
わかっているわ!

誰も知る人がいない異世界で孤独に潰されないのは2人のおかげ。充分過ぎるほどわかっている。
けれど、私は帰るの!私は夫を愛してる!
けれど、、文化も習慣も違う孤独なこの世界でマーベリックの存在が大きくなっている。
でも、応じる事は出来ないの。

メグミはある計画を早める事にした。

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