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霧のいたずら
9.マーベリックの以外な一面
しおりを挟むメリッサとマーベリック姉弟のやり取りを見ていたら、気がつけば涙が流れていた。
「メグミ!悲しい事でもあった?」
慌ててメリッサが抱きしめてくれる。
首をふり笑顔を作るけど涙が流れくる。
「涙、、勝手に。。止まらない。ごめんなさい。」
メリッサが抱きしめてくれる。
「寂しいよね。」
さらにキツく抱きしめくれ一緒に涙してくれた。
「今日はもう終わりよ。こんな状態で一人で部屋に帰すのは心配だわ。マーベリックあなた部屋まで送りなさい。」
マーベリックは、うなずくと私と一緒に部屋を出た。
「マーベリックごめんなさいね。恥ずかしいわ。」
「気にするな。」と手荷物も取り上げ持ってくれた。
2人で歩くなんて初めて。緊張してしまう。だってこの人、私の首を切ったんだから。
許したけど。
無言で歩いてるとマーベリックが聞いてきた。
「帰りたいか?」
「うん」
また涙が流れた。
ポンポンと頭を撫ぜてくれ、そっと私の背中に手を添えた。
ドキッ!
私に切りつけた手が今は慰めてくれている。
不思議さに驚いたら涙も止まってしまった。
「寄りたい所があれば付き合うぞ。」
彼の申し出に甘えてお願いする。
「では渡り廊下に。執務室の中庭が見たいの。」
マーベリックはここに来るまで私の背中に手を添え、無言で寄り添ってくれた。
いつもの場所に腰を下ろして中庭を眺める。
「懐かしな。ここでお前を初めて見たんだったな。」
「うん。ここからこの世界に入ってしまって、まだ帰り道がわからないでいるわ。」
そう。ここだ。
私はただボッーと中庭を見つめる。
マーベリックは私が気が済むまで隣で黙って見守ってくれている。
「冷えてきたな」
フワリとマントを私にかけてくれた。
えっ!ちょっと!こんな事できる人だったの??
意外な行動に焦ってしまった。
「ごめんなさいね。もう行きましょう。」
「送ろう。手を。」
「は、はい。」
こんな事初めてでドキリとした。
彼の手の平に手を重ね置く。
この国の上流階級の女性へのエスコート方法だ。
長い廊下は人とすれ違う事もほとんど無く閑散としている。
何を話す訳では無く並んで歩く二人の足音が響く。
ああ、何故か落ち着かない。
きっと日本人の私はこんなエスコートに慣れてないからよ。
「ここに住む選択はないのか?」
私は首を振る。
マーベリックは少し考え呟いた。
「そうだろうな。」
部屋の前に着いた時、私の立場じゃ無理と知りながらダメ元で執務室の中庭に行く事は出来ないか?と聞いてみた。
「難しいだろうな。期待はするな。」
そして私の頭をまたポンポンと軽く叩いた。
また心臓がドキッと跳ねた。
「おやすみ。」
「お、おやすみなさい。」
部屋に入るとドアを背に固まってしまった。何をドキリとしてるんだろうとため息を吐く。
灯りを付けるといつもより温かく感じる。メリッサとマーベリックの気遣いが私を温ためてくれたんだ。
その日は久しぶりにグッスリと眠る事が出来た。
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